平成29年1月31日発行
「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」関連の皆様
大変お世話になっております。
オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。
厳寒の候、皆様におかれましては変わらずご壮健のことと存じます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
メルマガVol.10です。
さっそくですが、今号の目次です。
==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.10目次◆==
【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★)
各班間のさらなる連携を目指して。
【2】2016年度事業実施報告
2016年度に実施された事業について。
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【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★)
各班間のさらなる交流・連携を目指して、連載中です。
引き続き毎号、計画班研究代表の先生1名と公募班の先生方2名の
紹介を予定しております。
今回は、
1. 北野勝則 先生(立命館大学情報理工学部知能情報学科 、B02班代表)
2. 阿部十也 先生(東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野、A05班)
3. 高田則雄 先生(慶應義塾大学医学部精神・神経科ECT寄附講座、A05班)
の3名の先生方をご紹介させて頂きます(原文通り)。
<< 1. 北野勝則 先生(立命館大学情報理工学部知能情報学科 、B02班代表)>>
計画班B02代表の北野勝則(立命館大学情報理工学部)です。
オシロロジーではお世話になっております。
学生時代は、B02班の分担として参加頂いている青柳富誌生先生の指導で
ニューラルネットワークを研究していましたが、当時、在籍していた京大内の
有志で学部横断的に行っていた神経科学の勉強会がきっかけで、
この分野で研究を進めるようになりました。
学位取得後は、研究員として深井朋樹先生(当時は玉川大)のCRESTの
プロジェクトに参加しておりました。
この時に、南部篤先生と高田昌彦先生と共同研究させて頂きました。
その後、現在の所属である立命館大学に着任し、現在に至ります。
これまで神経細胞や神経回路の数理モデル構築や解析を研究してきました。
具体的には、正常時と病変時それぞれにおける神経活動と機能・機能不全の間に
強い相関が見られることから、大脳基底核回路に興味を持ち研究をしています。
また、学内プロジェクトでは、こちらも疾患に関連するテーマとして、網膜を研究しています。
そして今回のオシロロジーでは、主にA班とのてんかんをテーマとした共同研究が始まっています。
具体的な対象は異なりますが(ただし、いずれも振動現象が鍵です)、正常と異常の違いを手掛かりに
脳機能本来の仕組みについての理解を目指すというアプローチは共通しています。
これは本領域の目指すものとも一致しますので、参加させて頂けることを楽しみにしておりました。
どうぞ宜しくお願い致します。
<< 2. 阿部十也 先生(東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野、A05班)>>
東北大学の阿部です。 宜しくお願いします。
私は、防衛医大を卒業し4年間の臨床(神経内科)を経た後、ヒトの学習・記憶形成と
その基盤となる神経可塑性に興味を持ち、研究の道に進みました。
京都大学院を卒業後、報酬や電磁気脳刺激法などを用いて学習効果を高める手法を開発し、
そのメカニズムをfMRI、脳波などの非侵襲的な方法を用いて、
関わる領域間ネットワークを解明してきました。
最近は、学習によってミクロ神経組織の形態変化(例えば樹状突起スパインの変化など)が
学習の痕跡として起こることから、この痕跡、つまり脳可塑性が起こった部位を
全脳レベルで可視化するMRI技術の開発を行っています。
何らかの痕跡を捉えていることは示せており、動物の電気生理、組織、行動実験の研究者と
共同研究体制を敷いて解明中です。
これが解明されれば、ヒトの学習や損傷脳の回復過程を全脳で調べることができる
ツールを提供できると考えています。
今回採択して頂いた課題もこの研究から端を発しています。
MRIで捉えた形態変化がゆっくりと周期性の振動を示していることが示唆されました。
この生物学的な意義を解明したいと思います。
幸いなことにオシロロジーの班会議で興味を持って頂いた研究者がおり、
異分野研究者との共同研究ができて大変嬉しい限りです。
私の得意分野であるMRIと共同研究者の動物電気生理、光遺伝学を組み合わせ、
大きく研究が展開できるよう頑張りたいと思います。
このようなエキサイティングな機会を与えて頂いた新学術オシロロジー計画班の諸先生方、
関係者各位に感謝を申し上げます。
<<3.高田則雄 先生(慶應義塾大学医学部精神・神経科ECT寄附講座、A05班)>>
慶應義塾大学医学部精神・神経科ECT寄附講座の高田則雄と申します。
私は脳の活動を全体として観察した時に、どのような特徴を備えているのかに興味があります。
たとえばヒトfMRI撮像ではdefault mode networkのような脳活動の大域的構造が発見されました。
しかしfMRI信号は血流動態を反映するため、神経活動を直接知ることはできません。
また空間解像度にも限界があります。このような不明部分を探索するため、
私は覚醒マウスのfMRI撮像と、シリコンプローブを用いた多点電気生理計測、
それから単一光ファイバーを用いた蛍光観察を計測技術として用いています。
これに、研究室で作出し維持されている遺伝子改変マウス
(ChR2やCa2+センサータンパク質が発現)を組み合わせています。
私は学部では東工大物理学科・西森秀稔先生のもとでニューラルネットワークの
シミュレーションに取り組みました。
実際の脳活動に興味を持ち、大学院時代は東大駒場キャンパスの川戸佳先生のもとで
ラット海馬脳切片の生理学に取り組みました。
その後、生きている動物の脳活動を知りたいと考えて理研BSI平瀬肇先生のもとで
大脳皮質グリア細胞活動をin vivo2光子顕微鏡観察しました。
そして大域的な脳活動の特徴を捉えたいと考えて2012年から慶應義塾大学で
マウスfMRIに取り組む貴重な機会を頂いています。
マウスfMRIではvoxel数が数万以上の経時変化データが得られます。
これに合わせて実験者(著者)の解析技術を向上できればより深い現象を
把握できるだろうと希望を持っています。
オシロロジーという素晴らしい機会に、全脳の振動活動について知見を提供できればと思います。
よろしくお願いいたします。
北野勝則先生、阿部十也先生、高田則雄先生、誠にありがとうございました。
自己紹介は原稿を頂いた順番に、紹介させて頂いております。
既に原稿をお送り頂いておりますが、今回ご紹介させて頂けなかった先生方、
ご理解賜れましたら幸いです。
まだ原稿をお送り頂いていない計画班研究代表・公募班の先生方(本当にあと数名の先生のみです!)、
お待ちしておりますのでどうかよろしくお願いします。
(小林勝哉 31258a[at]kuhp.kyoto-u.ac.jp まで、お送り下さい。)
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【2】2016年度事業実施報告
2016年度に新たに実施された事業です。
□ A03-B02班共同研究打ち合わせ
ECoGデータのトランスファーエントロピーを用いた解析の共同研究に関して、
以下の打ち合わせが行われました。
2016年6月15日京都大学青柳先生研究室にて
A03班(井内)、B02班(青柳・中嶋)、A04班(松橋)他5名が
ECoGデータについてのシミュレーションや解析方法の検討と、これまでA03班で
行なってきた研究の結果を供覧して、今後の共同研究の方針について検討しました。
2016年9月21日京都大学青柳先生研究室にて
A03班(松本・井内)、B02班(青柳)、A04班(松橋)他3名が
ECoGデータに関するシミュレーション結果を検討し、
今後の研究の方針に関して相談をしました。
2016年10月4日京都大学北部総合教育研究棟にて
A03班(井内)、B02班(中嶋)、A04班(松橋)他2名が
研究の進め方について、主に解析方法や統計手法について、
また実際的なデータの受け渡し方法などについて検討しました。
2016年11月21日京都大学北部総合教育研究棟にて
A03班(松本・井内)、B02班(中嶋)、A04班(松橋)他2名が
ECoG解析の結果の一部を供覧し、これまでの解析結果との関連はどうかを検討しました。
また今後パラメータをどうするかなどについて検討をしました。
2016年12月20日京都大学北部総合教育研究棟にて
A03班(井内)、B02班(中嶋)、A04班(松橋)他2名が
ECoGデータ解析の結果を供覧し、今後の方針について検討しました。
□ A03-B04班共同研究打ち合わせ
Motion captureにおける手指モデルと、ビデオ脳波同時記録における
行為エポック抽出の共同研究のために、以下打ち合わせを行いました。
2016年8月10日京都大学医学部附属病院にて
A03班(松本・下竹)、B04班(我妻)、A04班(松橋)他数名が
データやプログラムの検討、モデル作成や実際のデータ取得に関する打ち合わせを行いました。
2016年10月27日九州工業大学我妻研究室にて
B04班(我妻研究室)で作成したプログラムを用いて、データ取得に関して検討を行いました。
□ A02-A05-C04班共同研究
2016年12月27日に、新潟大学脳研究所において共同研究会議が開催されました。
A02班(南部・知見)、A05班(木津川・他1名)、C04班(笹岡・他2名)が
共同で実施している、ドーパミン受容体の遺伝子改変マウスの遺伝子を用いた
運動調節と学習記憶の行動解析および電気生理学的解析の研究に関する討論を行いました。
また、同日開催された新潟大学脳研究所共同利用共同研究課題実施者の合同セミナーにおいて
研究内容の発表、参加者との討論、並びに研究者間の交流を行いました。
□ A01-A05班共同研究打ち合わせ
2016年7月11日に、A01班(福田・渡部)とA05班(三枝)の共同研究を開始しました。
両班とも細胞内クロライドホメオスタシスに着目して研究を進めており、
ホメオスタシスを破綻させた際の影響を検討するために、A01班より細胞内のクロライド濃度を
低く維持するトランスポーターであるKCC2(wild, inactive form, active form)を発現する
ベクターをA05班に供与し、A05班がアデノ随伴ウイルス(AAV)を作成することになりました。
作成後、A01班はAAVの譲渡を受け、研究を進めて行く予定です。
□ 第3回領域会議
(2017年1月6日(金)-7日(土)、(大阪・立命館大学茨木キャンパス))
1月6日(金)-7日(土)に、新学術領域「オシロロジー」第3回領域会議が開催されました。
1日目には、総括班会議、ポスター発表、公募班員の方々による口演、
情報交換会、が行われました。
2日目には、今回新たな試みとして、技術ワークショップ2件と、
計画班と公募班の共同研究を後押しするためのマッチングセッション、が開催されました。
多数の皆様にご参加頂き、誠に有難うございました。
皆様、新たに関連事業がございましたら、
事務局までご連絡頂けますようよろしくお願いします。
また、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、
オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」
にある書類をご提出下さい。
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最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。
今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。
次号は2017/2/25 発行予定です。
次号も、計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介を
連載させて頂きたいと考えております。
皆様、本年も引き続きよろしくお願い致します。
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文部科学省新学術領域研究(H27-31)
「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」
Mail Magazine Vol.10 2016/1/29 発行(毎月25日発行)
発行・編集人:小林勝哉(広報・アウトリーチ委員会)・小野健太郎(総括班事務局)
京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。
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