メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.12>を発行しました。

平成29年3月30日 発行


「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」
 関連の皆様


大変お世話になっております。
オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。
春分の候、皆様お健やかにお過ごしでしょうか。
メルマガVol.12です。
さっそくですが、今号の目次です。


==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.12目次◆==
【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★)
各班間のさらなる連携を目指して。
【2】2016年度事業実施報告
2016年度に実施された事業について。
【3】その他の行事予定
今後予定されている行事について。

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【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★)
各班間のさらなる交流・連携を目指して、連載中です。
今年度の企画として、自己紹介を継続してまいりました。
今回は、
1. 池田昭夫 先生(京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学、A03班代表)
2. 林 拓也 先生(理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター、C04班)
3. 日高昇平 先生(北陸先端科学技術大学院大学、B04班)
4. 田中康裕 先生(東京大学医学系研究科、A05班)
5. 野村泰伸 先生(大阪大学大学院基礎工学研究科生体工学領域、B04班)
の5名の先生方をご紹介させて頂きます(原文通り)。


<< 1. 池田昭夫 先生(京都大学大学院医学研究科てんかん・運動異常生理学、A03班代表)>>
オシロロジーA3班(ヒト脳発振現象の直接記録)の代表の、
京都大学医学研究科てんかん運動異常生理学の池田昭夫です。
http://epilepsy.med.kyoto-u.ac.jp/members
私は神経内科医で、卒後3年目から臨床神経生理学、脳波学に興味を持ち、
卒後5年目に留学した米国オハイオ州クリーブランドクリニック財団病院で
臨床てんかん学、難治部分てんかんの外科手術目的のビデオ脳波検査、
脳内電極からの脳波記録、大脳皮質の電気刺激による脳機能マッピング、
脳波電位からの機能マッピングの研修と研究を行いました。
その後、京都大学医学部臨床脳生理学、臨床神経学、てんかん運動異常生理学で、

臨床の立場から、best care, best researchをモットーに
臨床と研究は車の両輪との考えで今日に至りました。
今回オシロロジーで、臨床データの解釈と意義付けを、基礎研究の先生方、
数理科学の先生方と共同研究ができ、病態と正常原理を解明できるこの上ない
貴重な機会に恵まれ大変ありがたく大変鼓舞されています。
1)wide band EEGを脳内電極から記録し、てんかん発作時のグリア由来のDC電位と、
神経細胞由来の高周波活動を詳細に解析し両者の作動原理を明確にし、
てんかん原性の病態解明と治癒への方策を目指します。
2)難治てんかん外科手術前の発作焦点を同定するために2週間連続して
脳内から記録される脳波には、日常生活での動作などの様々な正常脳機能データを含みます。
脳機能解明の研究協力の貴重なご同意をいただき倫理委員会の承認のもと、
様々な脳機能解明、新しい機能同定方法を進めています。
公募班の皆様とも是非積極的に共同研究を進めていけることを楽しみにしています。
ご興味がある先生はどうぞいつでもご連絡頂けましたら大変幸いです。
どうぞよろしくお願いします。


<< 2. 林 拓也 先生(理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター、C04班)>>
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・機能構築イメージングチームを
率いています林 拓也と申します。
新学術領域オシロロジー公募班に採択いただき光栄に思います。
私のラボは2013年から3人のユニットで始まり2016年からチームに変更、
現在13-15人のメンバーに増員いただく機会を得て毎日ハードな実験と
膨大な量の画像解析と議論を積み重ねています。
正直毎日楽しいです。
何か発見があります。

現在、サル・マーモセット・ヒトで構造MRI画像、安静時機能MRI画像や
拡散強調MRI画像を撮像し、高度な解析技術の開発と応用を併せることで
可塑性や社会性行動・遺伝子と関わる脳機能解明を目指しています。
最近、霊長類動物用に独自開発したマルチアレイRF受信コイルを組みあわせた
コネクトームMRI装置により米国Human Connectome Project(HCP)の
コネクトームMRI装置により得たヒト脳画像よりも高い質の画像を得ることに成功しました。
これから更にヒト・マカクサル・マーモセットにわたる種間共通解析技術を開発し、
種間比較を可能にし、ヒトから霊長類動物まで種間を超えた生体脳コネクトームMRI技術を構築し、
脳機能解明に貢献できればと願っています。
MRIはようやく生きた脳を観察できる強力な神経科学的ツールになりつつあると思います。
当該新学術領域において、動物種を超えた安静時機能MRI画像を用いた
デフォルトモードネットワークの観察によりその成因や機構解明に関し
解明を進めさせていただきたいと思っております。
私は大学を卒業後しばらくの間神経内科医として仕事をしてました。
医者は仕事として充実してました。
患者さんと毎日いろいろお話して、病を診て、治療し、
少しでも元気になって帰っていただけることが喜びでした。
そのときは研究することになるとは思ったことはありませんでした。
研究がどんなことか知らなかったからというのもあると思います。
研究するきっかけは大学院に帰ってから。
でも大学院で行う研究はたいしたことはできず、当時教官の京都大学・福山秀直先生、
山内浩先生、長峯隆先生にしょうもないことを沢山質問し今にして思えば恥ずかしい思いです。
脳糖代謝のモデリングの数式の解き方を福山先生に教えてもらったときは目が覚めました。
そのあと自分で数式を解くこと、解析プログラムを作ること、工学技術を応用すること、
統計解析すること等が楽しくなりました。
実験も楽しいです。

東京都立神経病院で神経内科医をしてた頃、1か月以上続いたてんかん重積で転院されてこられた
若い女性の患者さんに一週間付きっ切りで病院に寝泊りし何とか重積を止めることができたこと、
当時麻酔科医長だった中山英人先生に色々な技術を教えていただいたこと、
それらの経験は今の動物実験での麻酔技術に生かされています。
患者さんと色々お話できたことは、人と対象としたMRI研究にも生かされています。
人生どう進むか(どう転ぶか・・笑)わかりませんが、命ある限り色々な経験と知識を
つないでいくことで楽しく仕事できるのかなと思っております。
共通の興味に共鳴いただける方、ぜひ一緒に共同で研究をできればと思います。
お声かけいただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。


<<3. 日高昇平 先生(北陸先端科学技術大学院大学、B04班)>>
研究を含むあらゆる創造的な活動には、人の認知が関わっています。
私はこれまでに、人がどのように意味を理解しているのか、
その基礎的な認知過程を解明することを目的として理論的な研究を行ってきました。
オシロロジー領域では、共同研究者と共に、個々の神経細胞の関係を、
ネットワークとみなした中間(メゾ)レベルの構造を解明するための研究を進めています。
具体的には、2光子顕微鏡を用いたカルシウム(Ca)イメージング法を用いて、
マウスの運動野の数十~数百程度の神経細胞の活動を同時に記録したデータを解析し、
その活動に反映されている情報論的なネットワーク(コネクトーム)の性質を調べています。
メゾスケール(数十~数千細胞)のデータであっても、情報理論を用いたモデル・フリー分析の計算では
指数的な組み合わせ爆発がおこり、これが技術的な問題となっています。
これに対し、我々は優モジュラ関数の最大化(数理計画法)に帰着させることで、
実用可能な解析法を提案しています。
いくつかのデータの分析においてこの提案手法の成果が出てきているという段階です。
研究を離れた私の個人的な趣味の一つは囲碁です。

アマチュアとして囲碁を楽しむだけでなく、いずれ強い囲碁コンピュータプログラムを
作りたいなぁと思っていたところ、昨年Google (DeepMind)の開発したAlphaGoという
システムが登場し、囲碁界、コンピュータ碁界がひっくり返りました。
こうした人工知能研究の発展が近年目覚ましく、囲碁だけでなく、
様々な分野で応用範囲を広げているのはすでにご存知かと思います。
こうした発展の一翼を担いながら、オシロロジー領域の発展の一助になれればと思っています。


<<4. 田中康裕 先生(東京大学医学系研究科、A05班)>>
東京大学医学系研究科の田中康裕と申します。
公募班員として関わらせていただき大変感謝しています。
15年ほど前、京都大学で医学部生として薬理学教室に出入りし、成宮周先生をはじめ、
綺羅星のごとき諸先生方に可愛がってもらい、システム神経科学を勉強し、
脳内微小還流などの分子薬理学的手法をはじめ、様々な共同研究を通じて
形態学や電気生理学にも触れることができました。
それらの経験を通じて、分子と行動の間にはhidden layer、すなわち複雑な神経回路があり、
しかもそのlayerは非常にリッチで、それを調べるのが自分にとっては面白いと気づかされました。
そういった部分で共感できたのが、大脳皮質の神経回路を調べていた金子武嗣先生でした。
どうせなら太いところをやらなきゃいかんよ、という訓示のもと、大脳皮質から視床へ
どのような情報が行くのか、スライス電気生理と形態解析による神経回路の研究をしました。
そして、ラット体性感覚皮質では、視床からの入力層の細胞から視床投射ニューロンへ
空間的に限局した強い入力があることを示唆する結果を得ました。
金子先生には身に付けた技術を使って研究を発展させることを勧められましたが、
どうも私は欲深く、神経の形を知ると次は動作を知りたいと思い、
当時基礎生物学研究所で研究室を立ち上げたばかりの松崎政紀先生のもと、
2光子カルシウムイメージングを用いた神経回路研究にとりかかりました。
実験をしながら、機械学習・情報科学などを勉強し、同じ研究室の正水芳人先生と共に、
運動皮質の浅層と深層で運動学習中に起きる神経活動の変化を記載しました。

この論文ではサポートベクター回帰を用いてマウスの行動を神経活動からデコードしたり、
経験コピュラ関数を用いて神経活動とマウスの行動の相互情報量を推定したりしました。
松崎先生に伴い東大に異動し、現在は同研究室の田中康代先生と、
運動視床軸索の活動が運動学習でどのように変化するかを調べています。
その過程で動物が激しく手を動かしているときにも安定して
軸索のカルシウムイメージングをする技術を確立しました。
オシロロジーでは、軸索カルシウムイメージング技術をさらに洗練させ高速化することで、
大脳皮質の神経細胞集団の発振現象の一つの原因となっているだろう視床や
他皮質からの入力の発振状態を要素還元的に調べていきたいと思っています。
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。


<<5. 野村泰伸 先生(大阪大学大学院基礎工学研究科生体工学領域、B04班)>>
皆様,新学術領域「オシロロジー」では大変お世話になっております.
私は「間欠制御と強化学習を統合した姿勢・歩行運動制御とその障害の動的モデル構築」
という研究課題で,本領域の公募班に参画させていただいております.
私たちの研究グループは,ヒト直立姿勢を安定化しつつ同時に運動の柔軟性も確保できる
神経制御メカニズムとして「立位姿勢と二足歩行の間欠制御仮説」を提唱しています.
本公募研究の目的は,神経系による過剰な介入や転倒動作に対して負の報酬を与えるような
強化学習により,間欠制御器がロバストに獲得されること示すこと,
および学習と制御のメカニズムが,皮質-基底核-視床-脳幹系の神経回路網の計算論によって
無理なく説明できることを示すことです.
また,健常者の直立姿勢および二足歩行が示す運動揺らぎのフラクタル性
およびパーキンソン病患者におけるその消失(白色雑音化)に注目し,
「運動揺らぎのフラクタル性の発現および消失は,それぞれ橋脚被蓋核・網様体-脊髄神経系による

筋緊張抑制系と筋緊張促進系の動的バランスおよびその病的変容に起因する」とする仮説を立て,
健常者およびパーキンソン病患者の運動計測データの比較解析と数理モデルによる再現に基づき,
これらの仮説の妥当性の検証を目指しています.
これらの課題を通じて,一見静的に見える姿勢維持機能が振動的な神経動態によって
支えられていることを示すことで,オシロロジーの創成に貢献したいと考えています.
また,パーキンソン病を動的ネットワーク疾患として捉え直すことで,
障害の診断と治療効果評価に新機軸を提供し,臨床医学の発展に貢献したいとも考えています.
課題の達成には,オシロロジー新学術領域に参画される研究者の方々の
協力・ご指導が不可欠だと考えております.
領域会議等でお目にかかる折には,是非とも色々なアドバイスを頂戴したく,
どうぞよろしくお願いいたします.
池田昭夫先生、林拓也先生、日高昇平先生、田中康裕先生、野村泰伸先生、
誠にありがとうございました。


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【2】2016年度事業実施報告
2016年度に新たに実施された事業です。
□ A02-A05班共同研究
(2017年2月3日、生理学研究所(岡崎))
2017年2月3日に、A02班(南部・知見・佐野)とA05班(木津川)が
生理学研究所南部研究室において共同研究の打合せを行いました。
A05班が遂行しているマウス走行におけるリズム協調についての研究結果について討論を行い、
またA02班が行っている神経活動記録実験の手法を、A05班の研究に適用するための

討論と実験を行いました。
□ A02-C01班共同研究
A02班とC01班による共同研究に関して、以下の実験を東北大学にて行いました。
2016年12月6-7日(第6回) A02班(南部・知見・佐野)とC01班(虫明・渡辺)が、
光活性化タンパク質をウイルスベクタを用いて霊長類の皮質運動野神経細胞に
導入する方法を確立するために、東北大学所有のサル (2頭目)皮質運動野を光刺激し、
その神経及び運動応答からベクタの十分な発現を確認できました。
2017年1月13-15日(第7回) A02班(南部・知見・佐野)とC01班(虫明・渡辺)が、
第6回実験のサル(2頭目)の追加実験として新たにサル(3頭目)を準備し、
同ベクタの注入実験を行いました。
2017年2月17-19日(第8回) A02班(南部・知見・佐野)とC01班(虫明・渡辺)が、
第6回実験の追証のために3頭目のサルを使って実験を行い、
光刺激応答に関して実験の再現性が得られました。
2017年3月13-15日(第9回) A02班(知見・佐野)とC01班(虫明・渡辺)は、
第6回実験と第8回実験で刺激パラメータの変化について異なる結果を得ていたため、
個体間の不一致を再確認するために、第6回実験で使用した同一個体での実験を再度行いました。
皆様、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、
オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」
にある書類をご提出下さい。


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【3】その他の行事予定
来年度(2017年度)に予定されている行事です。
□ 2017年度第1回領域会議
(2017年8月10日(木)、ルスツリゾートニューウェルシティ湯河原(熱海))
2017年度第1回領域会議を下記日程で開催することになりました。
終日、公募班成果発表を行う予定ではございますが、
詳細が決定次第、改めてご連絡させて頂きます。
ご予定の程、宜しくお願い申し上げます。
日程:2017年8月10日(木)
場所:ニューウェルシティ湯河原(静岡県熱海市)


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最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。
1年間誠にありがとうございました。
今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。
2017年度は私小林から交代して、武山が担当させて頂きます。
次号は2017/4/25 発行予定です。
皆様、本年も引き続きよろしくお願い致します。


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文部科学省新学術領域研究(H27-31)
「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」
Mail Magazine Vol.12 2017/3/30 発行(毎月25日発行)
発行・編集人:小林勝哉(広報・アウトリーチ委員会)
京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。
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