免疫応答の重要因子を介した薬物依存の新しいメカニズムの発見に関する研究論文がScience Advancesに掲載されました(A01班)

【免疫応答の重要因子を介した薬物依存の新しいメカニズムの発見に関する研究論文がScience Advancesに掲載されました(A01班)】

薬物依存は、一度形成されると断薬後も長期間持続する精神疾患であり、患者の人生を狂わせるだけではなく、重要な社会問題であることが知られています。しかし、その治療は認知行動療法によるものが主で薬物依存を治す特効薬はいまだ見つかっていません。薬物依存のメカニズムとして、報酬系と呼ばれる神経回路で中心的な役割を担うドーパミン神経細胞に対し、他の神経細胞が過剰に結合していることが知られています。しかし、何故そのような過剰な神経結合が形成されるかは明らかにされていません。

今回、浜松医科大学・中原大一郎名誉教授、埼玉医科大学教養教育学科・村上元講師、浜松医科大学神経生理学講座・福田敦夫(A01班)らの共同研究グループは、依存物質を繰り返し摂取することで、免疫応答に重要な因子である主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCI)の発現がドーパミン神経細胞で持続的に減少し、薬物依存を引き起こすことを発見しました。この発見により、全く新しい薬物依存のメカニズムが明らかになり、ドーパミン神経細胞が関与するパーキンソン病や発達障害等の神経発振現象や神経ネットワーク異常に起因する神経・精神疾患の解明にも繋がることが期待されます。

Murakami G, Edamura M, Furukawa T, Kawasaki H, Kosugi I, Fukuda A, Iwashita T and Nakahara D. MHC class I in dopaminergic neurons suppresses relapse to reward seeking. Sci Adv 4: eaap7388, 2018. doi: 10.1126/sciadv.aap7388

所属機関のプレスリリース
https://www.hama-med.ac.jp/08b4c12fc801847439b1f4f693461197.pdf