メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.30>を発行しました。

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」

関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。

メルマガVol.30です。

さっそくですが、今号の目次です。

今年度から、新企画として、

新たに公募班に加わられた班員の先生方の研究紹介の連載を開始いたします。

今号の原稿ご担当は、大須 理英子(おおす りえこ)先生、

上田 肇一(うえだ けいいち)先生です。

お忙しいなか原稿ご執筆まことにありがとうございました。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.30目次◆==

【1】大須理英子先生、上田肇一先生・研究紹介(★注目★)

【2】2018年度事業実施報告 2018年度に実施された事業について。

【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

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【1】大須理英子先生、上田肇一先生・研究紹介 (★注目★)

大須 理英子(おおす りえこ)先生

領域班:A05班

ご所属:早稲田大学 人間科学学術院

研究課題名:個体間脳波オシレーションのニューロフィードバックコントロール

研究紹介:

インタラクションしている複数の人の脳が同期的に活動することが

明らかになりつつあります。

そこで本研究では、二人の脳を同時に計測し、

二者間の脳波の同期レベルをリアルタイムフィードバックスすることを試みます。

同期レベルを自身でモニターしながら二者が様々なインタラクションを試みることで、

どのような条件で個体間の脳波の同期がおこるのかを探索します。

上田 肇一(うえだ けいいち)先生

領域班:B04班

ご所属:富山大学大学院理工学研究部(理学)

研究課題名:物質流動を考慮した数理モデルの作成による発作発現機構の解明と

治療法の提案

研究紹介:非線形ダイナミクスの数理解析を専門としています。

特に,時空間パターンダイナミクスの発生機構の解明及びその制御方法について

研究してきました。

本研究では,物質の循環を考慮した数理モデルを作成することにより,

てんかん発作の発生機構を解明し,新しい治療法の提案を目指します。

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【2】2018年度事業実施報告

2018年度に新たに実施された事業です。

□A01-C02班共同研究

2018年9月1日に、A01班(福田・秋田・石橋)とC02班(美馬・野嶌・高松)が

浜松医科大学神経生理学講座において、

静磁場刺激(transcranial static magnetic stimulation: tSMS)のメカニズム解明に向けた

共同研究の打ち合わせ、および電気生理学的手法を用いた実験を行いました。

□第41回日本神経科学学会にてシンポジウム

「神経ダイナミクスの多様性と脳機能」を開催

神戸コンベンションセンターにて開催された「第41回日本神経科学学会」において、

Dr. Artur Luczak(Lethbridge大学), Dr. Douglas Garrett(Max Planck Institute),

高木優博士(Oxford大学)を招聘し、北城圭一(B02班)をorganizer、

高橋宏知(前・A05班)をco-organizerとして、5人のスピーカーで

「神経ダイナミクスの多様性と脳機能」シンポジウムを開催しました。

本シンポジウムでは神経発火、局所場電位、脳波、BOLD信号等のさまざまな階層での

自発、誘発神経活動のダイナミクスの多様性や個性の研究を議論し、

これにより自発、誘発神経ダイナミクスの計算論的な理解と

脳情報処理原理の解明をねらいとし、議論をすることができました。

□運動学習中の視床軸索の神経活動に関する研究成果がNeuron誌に掲載

(A05班 田中康裕)

何度も繰り返し訓練することで効率よい運動スキルが身につくということは、

日常的にもよく経験されます。

運動学習中には脳活動にも様々な変化が起きているため、

領域間の情報のやり取りを調べることが重要です。

今回、東京大学 大学院医学系研究科・田中康代特任助教、田中康裕助教(A05班)、

松崎政紀教授らの研究チームは

自然科学研究機構 生理学研究所・川口泰雄教授らとの共同研究により、

2光子顕微鏡によるカルシウムイメージング法を用いて

マウス大脳皮質運動野に投射する視床皮質軸索のシナプス前部(ブトン)の

神経活動を計測しました。

マウスが新しい道具を使って運動課題を学習する際の計測を通して、

視床から運動野へ送られるシグナルが2種類あり、

互いに異なる時間変化(ダイナミクス)を示すことを明らかにしました。

これら2種類のシグナルは「運動課題の成功率」あるいは「運動の安定性」と、

それぞれ関連していました。

シグナルは大脳皮質のどの部位に入力するかによってダイナミクスが異なり、

それぞれが大脳基底核あるいは小脳に強い影響を受けますが、

その一方でどちらのシグナルを作り出すにも

大脳基底核と小脳の両方の活動が必要であることも見いだされました。

本研究は脳全体の理解ひいては運動失調・運動障害疾患の病態理解にも不可欠な、

脳領域間ネットワークの視点から運動学習や運動制御のメカニズムの一端を

明らかにしました。

視床を介して運ばれた、ダイナミクスの異なる2種類の情報が

運動野でどのように統合されるかは今後の大きな課題です。

Thalamocortical Axonal Activity in Motor Cortex Exhibits Layer-specific Dynamics

during Motor Learning

Yasuyo H. Tanaka#, Yasuhiro R. Tanaka#, Masashi Kondo, Shin-Ichiro Terada,

Yasuo Kawaguchi, Masanori Matsuzaki. (#equally contributed)

Neuron誌

DOI: https://doi.org/10.1016/j.neuron.2018.08.016

2018年8月30日電子版

所属機関のプレスリリース:

http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20180831.pdf

□室傍核-傍室傍核のウルトラディアンカルシウムリズムに関する論文が

PNAS誌に掲載(A05榎木班)

北海道大学電子科学研究所の榎木亮介准教授らの研究グループは,

これまでに長期間の光イメージング計測法を確立し,

概日リズム中枢である視交叉上核の神経細胞ネットワークの働きを観察してきました。

今回の研究では,視交叉上核とその周辺領域を含む組織を長期間培養し,

遺伝子コード型カルシウムイオンセンサーを多数の神経細胞に発現させ,

概日リズム中枢を含む複数の脳領域の神経細胞から,

細胞内カルシウム濃度変化を指標に神経細胞の活動を数日間測定することを試みました。

その結果,視交叉上核の主な神経投射先である室傍核と傍室傍核領域の多数の神経細胞において,

30分~4時間周期で同期する細胞内カルシウムのウルトラディアンリズムを見いだしました。

このリズムは室傍核と傍室傍核領域のみを単離した組織でも観察されることから,

この部位がウルトラディアンリズムの発生源であることがわかりました。

さらに,神経細胞ネットワークのミリ秒スケールの早い神経細胞の同期活動が

ウルトラディアンリズムを生み出すことや,

興奮性と抑制性の神経伝達物質のバランスにより

ウルトラディアンリズムが制御されていることがわかりました。

室傍核と傍室傍核領域には,様々なホルモンを産生する神経細胞が

存在していることが知られています。

さらにこの脳部位は他の脳領域へと投射して,

体温や睡眠サイクルを調節する中枢領域へと情報を伝えていると推察されています。

このことから,本研究で見いだしたウルトラディアンリズムは,

生体の様々な生理機能のリズムを制御していると考えられます。

Ultradian Calcium Rhythms in the Paraventricular Nucleus and Subparaventricular Zone

in the hypothalamus.

Wu Yu-Er, Ryosuke Enoki#, Yoshiaki Oda, Zhi-Li Huang, Ken-ichi Honma, Sato Honma.

(# R.Enoki is equally contributed first author and the corresponding author)

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

2018年9月18日電子版

所属機関のプレスリリース:

https://www.es.hokudai.ac.jp/result/2018-09-18-mcb/

皆様、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、

オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」

にある書類をご提出下さい。

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【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

□オシロロジー共催「第52回日本てんかん学会学術集会 プレコングレスシンポジウム」

10月25日(木)~27日(土)に開催される「第52回日本てんかん学会学術集会」にて、

オシロロジー共催のプレコングレスシンポジウムを10月24日(水)に開催します。

この学際的企画を通じて、基礎・理論系の研究者がてんかん研究に、

そして臨床家が最新の信号解析法や数学理論などに対する興味を持つことで、

てんかん病態・脳機能の解明と解析法の臨床応用へ向けて、

双方の協力関係がさらに発展することを目標としています。

どなたでも参加いただけますので、奮ってご参加ください。(参加無料)

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開催テーマ: 第1回Advanced ECoG/EEG Analysis in Epilepsy(AEEE)研究会

開催日時:2018年10月24日(水)17:00~19:00

開催場所:パシフィコ横浜 第3会場 303

プログラム: 

座長:加藤 天美(近畿大学脳神経外科) 津田 一郎(中部大学創発学術院)

17:00-17:05 代表世話人 挨拶 

池田 昭夫(京都大学大学院医学研究科 てんかん・運動異常生理学講座)

17:05-17:30 High frequency stimulation of the anterior nucleus of thalamus

desynchronizes epileptic networks in human 

Liankun Ren (Department of Neurology, Xuanwu Hospital, Beijing, China)

17:30-17:50 てんかん性高周波振動の意義と臨床応用

小林 勝弘 (岡山大学小児神経科)

17:50-18:10 数理モデルからのてんかん原性のアプローチ

行木 孝夫(北海道大学大学院理学研究院数学部門)

18:10-18:35 Intraoperative Investigation of Gamma and Ultra-Gamma Modulations

of ECoG for the Mapping of Hand Function

Nuri Firat Ince(Department of Biomedical Engineering, University of Houston)

18:35-18:55 ECoGによる脳機能マッピング:この1年の動向

宇佐美 清英(大津赤十字病院神経内科)

18:55-19:00 座長まとめ

http://www.nips.ac.jp/oscillology/blog/2018/09/102452.html

□ 2018年度第二回領域会議

2018年度第二回領域会議を、

次世代脳プロジェクト冬のシンポジウム2018 (2018年12月12日(火)-15日(土)、一橋大学一橋講堂)

に合わせて開催予定です。

12月14日午後、あるいは15日午前;総括班・国際活動支援班会議

12月15日終日、あるいは午後: 領域会議

詳細が決まりましたら、またアナウンスさせていただきます。

皆様、ご予定のご確認をお願いします。

最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。

今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。

次号は2018/10/25 発行予定です。

皆様、本年も引き続きよろしくお願い致します。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31)

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」

Mail Magazine Vol.30 2018/9/25 発行(毎月25日発行)

発行・編集人:武山博文(広報・アウトリーチ委員会)

京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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