室傍核-傍室傍核のウルトラディアンカルシウムリズムに関する論文がPNAS誌に掲載されました(A05榎木班)

北海道大学電子科学研究所の榎木亮介准教授らの研究グループは,これまでに長期間の光イメージング計測法を確立し,概日リズム中枢である視交叉上核の神経細胞ネットワークの働きを観察してきました。今回の研究では,視交叉上核とその周辺領域を含む組織を長期間培養し,遺伝子コード型カルシウムイオンセンサーを多数の神経細胞に発現させ,概日リズム中枢を含む複数の脳領域の神経細胞から,細胞内カルシウム濃度変化を指標に神経細胞の活動を数日間測定することを試みました。その結果,視交叉上核の主な神経投射先である室傍核と傍室傍核領域の多数の神経細胞において,30分〜4時間周期で同期する細胞内カルシウムのウルトラディアンリズムを見いだしました。このリズムは室傍核と傍室傍核領域のみを単離した組織でも観察されることから,この部位がウルトラディアンリズムの発生源であることがわかりました。さらに,神経細胞ネットワークのミリ秒スケールの早い神経細胞の同期活動がウルトラディアンリズムを生み出すことや,興奮性と抑制性の神経伝達物質のバランスによりウルトラディアンリズムが制御されていることがわかりました。

室傍核と傍室傍核領域には,様々なホルモンを産生する神経細胞が存在していることが知られています。さらにこの脳部位は他の脳領域へと投射して,体温や睡眠サイクルを調節する中枢領域へと情報を伝えていると推察されています。このことから,本研究で見いだしたウルトラディアンリズムは,生体の様々な生理機能のリズムを制御していると考えられます。

Ultradian Calcium Rhythms in the Paraventricular Nucleus and Subparaventricular Zone in the ypothalamus.
Wu Yu-Er, Ryosuke Enoki#, Yoshiaki Oda, Zhi-Li Huang, Ken-ichi Honma, Sato Honma.
(# R.Enoki is equally contributed first author and the corresponding author)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
2018年9月18日電子版

所属機関のプレスリリース:
https://www.es.hokudai.ac.jp/result/2018-09-18-mcb/