KCC2のリン酸化による制御に関する論文がScience Signalingに掲載されました(A01福田班)

KCC2のリン酸化による制御に関する論文がScience Signalingに掲載されました(A01福田班)

脳内の主要な抑制性伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)は発達期には興奮性伝達物質として働いており、発達に伴いカリウム-クロライド共役担体(KCC2)の機能が高まることにより、GABAの作用は興奮性から抑制性に変化しますが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。今回、浜松医科大学神経生理学講座の渡部美穂助教、福田敦夫教授、イェール大学医学部のKristopher T. Kahle博士らのグループは、この変化にはKCC2のリン酸化による機能制御が関わっており、幼若期にはKCC2の906番目(Thr906)と1007番目(Thr1007)のスレオニン残基がリン酸化されているため機能が抑制されており、発達に伴い脱リン酸化されることでKCC2が機能し始め、GABAによる抑制性伝達が形成されることを明らかにしました。よって、発達期にKCC2のThr906とThr1007のリン酸化が適切に制御されることが、抑制性GABA伝達の形成に必須であり、神経発達および生存に重要であることが明らかになりました。この研究成果は、10月16日(日本時間)に米国科学振興協会の科学雑誌「Science Signaling」に掲載され、その表紙を飾りました。また、Editorial Boardにより注目論文に選定され、「FOCUS」に論文の紹介およびコメントが掲載されました。この論文は2016年3月に本領域としてはじめて国際共同研究加速基金(国際活動支援班)の支援を受け、Kristopher T. Kahle博士を浜松医科大学に招聘し、本研究に関する議論を深め、共同研究を行ってきた成果です。

Miho Watanabe#, Jinwei Zhang#, M. Shahid Mansuri#, Jingjing Duan, Jason K. Karimy, Eric Delpire, Seth L. Alper, Richard P. Lifton, Atsuo Fukuda*, and Kristopher T. Kahle*. Developmentally regulated KCC2 phosphorylation is essential for dynamic GABA-mediated inhibition and survival. Science Signaling. 12(603): eaaw9315, 2019. doi:10.1126/scisignal.aaw9315.

# These authors contributed equally. *corresponding author

2019年10月15日電子版

所属機関のプレスリリース:
https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/0bb9d21db2d25169d010dc980da339b0.pdf