メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.46>を発行しました。

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」

関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。

メルマガVol.46です。

さっそくですが、今号の目次です。

今号より、特集として、各計画班代表より

「5年間を振り返っての総括」のテーマで原稿を執筆いただくこととなりました。

今号は、B03班の津田一郎先生に原稿をご執筆いただきました。

津田先生、お忙しいなか原稿ご執筆まことにありがとうございました。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.46目次◆==

【1】津田一郎先生(B03班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

【2】2019年度事業実施報告 2019年度に実施された事業について。

【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

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【1】 津田一郎先生(B03班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

オシロロジーを振り返って

B03 津田一郎

オシロロジーがもうすぐ終了する。この5年間でそれ以前とは比べ物にならないほど

多くの新しい方たちと知り合い、新しい研究にチャレンジしてきた。

この間、私は北海道大学を定年退職し(国立大学が65歳に定年延長する中、

北大は63歳で定年退職、以後二年間は希望すれば再雇用という制度である)、

中部大学に移るなど個人的にもオシロロジーの期間中に

新たな研究フェーズへの相転移があった。

私は2009年―2013年の間、二つの脳の相互作用によるコミュニケーション理解に関する

新学術領域研究の代表をしていたが、この最後の方で、

相互作用によって個々の脳状態が明確に変化するということを発見した

実験班の結果に刺激され、それを理解する数学的な枠組みを作ることを考えた。

それが拘束条件付き自己組織化理論で、

このアイデアがオシロロジーでのB03班の研究計画の基盤になった。

幸い、分担者の伊藤浩之氏の賛同を得たので、

これを軸にして、具体的なテーマを選択した。

1.機能分化の数理モデルの提案、2.ネットワーク病の数理モデルの提案、

3.ネコを使ったニューロフィードバック実験、4.新たなデータ解析、を課題とした。

1はニューロンやグリアに類似の活動を示す機能部品が

ネットワークにかけられた拘束条件を満たすように生成されるモデルを提案できた。

これはA03池田昭夫先生の

てんかん脳波に現れるDCシフトと高周波振動の関係に関する仮説を

ある意味でサポートする結果にもなっており、期待以上の成果になった。

さらに、モジュールの分化や進化的リザバー計算機の基本アイデアが出てきた。

2はレビー小体型認知症(現在ではパーキンソンシンドロームに属するとされている)

患者が典型的に見る複合型視覚性幻覚の数理モデルを

アテンション機構の機能不全と長距離ファイバーの機能不全の二つの視点から構築した。

前者はアセチルコリンが欠乏することで

ニコチンリセプターが機能不全になる効果を取り入れた。

後者では、いったん自己組織化したネットワークが

部分的に切断あるいは減弱されるなどしてネットワークに故障が生じたときに

自己再組織化を行った結果、過度にネットワークが強化され、

文脈情報と感覚情報のミスマッチが起こることが分かった。

これらが感覚情報の誤った受容という形で幻覚を生じさせる可能性があるという

仮説の提案を行った。

1と2の課題において二つの博士号論文が生まれたことで若手育成に貢献できた。

3に関しては伊藤グループで実験が行われ、

動物でのニューロフィードバックの可能性が追求された。

伊藤グループでは非常に綿密な準備を行い、

基礎的データを確立できる技術を開発してきた。

4は臨床家との共同研究に発展した。

A03池田グループ、A04飛松グループで得られたデータを数理解析したところ、

従来は知られていなかった新しいバイオマーカーの候補を確立することができた。

池田グループから提供していただいたてんかん患者の脳波データの解析によって、

パワースペクトルの揺らぎと力学系の埋め込みに低次元の特徴が現れ、

DCシフト、レッドスロー、高周波振動の関係を数理的に明確にすることができた。

これは行木氏(当初B03の研究協力者、後半は公募班B04として参加)を中心にした

共同研究チームが得た結果である。

飛松グループから提供していただいた回転錯視の認知に関するデータを

隠れマルコフ過程によって解析することで、

回転錯視が得られるときの脳波に特徴が生じることが分かった。

これは、研究協力者の山口明宏、山口裕の両氏が中心になって解析を進めた。

5年間はあっという間に過ぎたが、かなりの成果が得られ、

新たな共同研究者を得ることができた。

これらはまた次のステップの基盤になることは間違いないと思う。

また、総括班会議を通じて南部代表をはじめ世話役をしてくださった先生方の

領域計画に関する深い洞察と献身的な作業に支えられてきたことを痛感した。

改めて素晴らしい機会を与えていただいたことに感謝します。

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【2】2019年度事業実施報告

2019年度に新たに実施された事業です。

今回は、新たな報告はありませんでした。

皆様、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、

オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」

にある書類をご提出下さい。

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【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

今後予定されている行事は特にありません。

最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。

今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。

次号は2020/2/25 発行予定です。

皆様、本年も引き続きよろしくお願い致します。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31)

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」

Mail Magazine Vol.46 2020/1/25 発行(毎月25日発行)

発行・編集人:武山博文(広報・アウトリーチ委員会)

京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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