メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.47>を発行しました。

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」

関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。

メルマガVol.47です。メルマガも、ついに今号と次号を残すのみとなりました!

さっそくですが、今号の目次です。

今号より、特集として、各計画班代表より

「5年間を振り返っての総括」のテーマで原稿を執筆いただくこととなりました。

今号は、C01班の虫明元先生に原稿をご執筆いただきました。

虫明先生、お忙しいなか原稿ご執筆まことにありがとうございました。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.47目次◆==

【1】虫明元先生(C01班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

【2】2019年度事業実施報告 2019年度に実施された事業について。

【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

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【1】 虫明元先生(C01班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

オシロロジー領域の研究は、自分にとってもやりがいのある、

そしてチャレンジングなものでした。

特に脳の電場電位の振動現象とネットワークの特性の非線形性に着目した領域のテーマは、

自分の研究を発展させるきっかけになったと思います。

サルを用いた霊長類の研究に加え、

遺伝子改変が比較的しやすいげっ歯類での研究を本格化させ、

様々な共同研究に結びついた点で大変実りあるものでした。

 高い周波数のガンマ波やベータ波は、行動条件でどちらかが増強すると、

どちらかが低下するというようなシーソーのような関係があり、

それがサルの行動とどのように関係するかを解明できました。

すなわち行動プログラムの更新に関わるガンマ波と維持に関わるベータ波の関係です。

しかもベータ波は、多点電極で調べるとベータ波の電極間の同期性が時空間的に変化しており、

ベータ波の同期性の変化事態も脳のネットワークの動的な変化を示していると示唆されました。

国際加速基金でのシカゴ大学の高橋先生との多点計測技術に関する共同研究が

この点で非常に役立っています。

また光遺伝学の応用でサルの運動野を操作するという試みは、

A02南部班の南部先生、知見先生、佐野先生との共同研究で、数年に渡る試行錯誤の結果、

ついに光刺激のみで指の動きをはっきりと誘発できることを示すことができました。

アカゲザルの実験としては画期的な成果であり、これに関する論文を現在投稿中です。

そして、これらの振動を作り出すのに重要な抑制細胞に関して、

A01班の群馬大学の柳川先生との共同研究は、

抑制細胞のサブタイプやGABA合成系の多様性が

振動現象やてんかん発作との関連性に目を向けるきっかけになりました。

細胞の分子マーカーや、合成酵素のアイソフォームに着目した

選択的な遺伝子ノックアウトによる振動現象系の修飾、

また逆にてんかん発作等により脳内の抑制細胞系がどのように適応、または代償するか、

電気生理だけではわからない知見を今後もたらしてくれると感じました。

GABAを合成する2つのアイソフォームの酵素GAD65とGAD67は

抑制細胞の働きに異なった役割を持っており、

前者は活動依存性、後者は基本的なGABAの量の維持に関るため、

そのノックアウトは結果として異なった表現系のてんかん発作が誘発されました。

抑制細胞のサブタイプは多数あり、

合成酵素の量に着目すると細胞のサブタイプに応じて異なる変化をしていました。

このオシロロジーの期間を通じて、抑制系の多様性の理解は、深められましたが、

今後も共同研究を継続したいという思いも強くなりました。

オシロロジーの一つの目標にヒューマンネイチャーの理解がありました。

これは、とても大きい課題ですが、この期間にカナダのオタワ大学のノーソフ先生を

招聘して行った国際カンファレンスは、大変有意義でした。

脳の正中部分を自己に関わるネットワークとの視点で気分障害、

統合失調症などと脳の振動の関係を精神科的な面で研究しているのみならず、

自己とは何かとか、というような半ば哲学的な問いを

神経科学的にアプローチしようとするノーソフ先生の研究に非常に感銘を受けました。

この後に共著させていただいた総説論文にまとめる際の

様々な議論ややり取りは自分にとってはとても有意義な体験となりました。

多様な振動現象と、これまでの前頭葉の研究を、

一般のひとにも理解できるような形でまとめたいと思い、

2018年に岩波科学ライブラリーから『学ぶ脳』を出版しました。

また2019年には、少し専門的な観点から『前頭葉のしくみ』を共立出版より出版しました。

これらの著書には、

これまであまり縁がなかった分野の方々にも関心を持っていただくことができました。

例えばソーシャルワーカーの方々が集まる学会で招待講演をしたこと、

また認知症ケアのケアマネージャーの研修会で講演したことは、質疑も含めとても新鮮でした。

様々な分野の方が、脳科学の可能性に関心を持っておられ、

その応用の可能性に期待していると感じました。

この5年間で得た共同研究や人々とのネットワークを

今後の研究の発展に更に生かして行きたいと思います。

これまで5年間、皆様にはほんとうに様々な機会を与えていただき

大変感謝しております。ありがとうございました。

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【2】2019年度事業実施報告

2019年度に新たに実施された事業です。

今回は、新たな報告はありませんでした。

皆様、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、

オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」

にある書類をご提出下さい。

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【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

今後予定されている行事は特にありません。

最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。

今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。

次号(遂に最終号!)は2020/3/25 発行予定です。

皆様、本年も引き続きよろしくお願い致します。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31)

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」

Mail Magazine Vol.46 2020/2/25 発行(毎月25日発行)

発行・編集人:武山博文(広報・アウトリーチ委員会)

京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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