メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.48>を発行しました。

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」

関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。

メルマガVol.48です。メルマガも、ついに今号が最終回となりました!

長きにわたるご愛読、まことにありがとうございました!

では、今号の目次です。

特集として、各計画班代表より

「5年間を振り返っての総括」のテーマで原稿を執筆いただきました。

今号は、C02班の美馬達哉先生と、C03班の宇川義一先生に

原稿をご執筆いただきました。

美馬先生、宇川先生、お忙しいなか原稿ご執筆まことにありがとうございました。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.48目次◆==

【1】 美馬達哉先生(C02班)&宇川義一先生(C03班):

「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

【2】2019年度事業実施報告 2019年度に実施された事業について。

【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

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【1】 美馬達哉先生(C02班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

C02班は、「発振操作による動的ネットワークの再組織化」を研究テーマとし、

研究分担者としては、牛場潤一先生(慶應義塾大学)、

神作憲司先生(獨協医科大学)にBMI を中心としてご協力いただいている。

 研究開始直後に、計画研究代表である私が京都大学から立命館大学に異動したが、

京都大学の池田昭夫教授、松橋眞生准教授らのご協力のおかげで

スムーズに研究を継続することができた。

また、神作先生は研究期間中に国立障害者リハビリセンター研究所から、

獨協医科大学医学部生理学講座の教授に栄転されている。

ポスドクとして研究推進および事務局としての領域運営に関わっていただいた

研究員の方々も、さまざまな場所で研究を継続されている

(石橋遼先生:東北大・助教、小野健太郎先生:広島大・特任助教、

髙松泰行先生:北海道大・助教、渡邊龍憲先生:広島大・助教)。

 この5年間での研究進展の一部として、

オシロロジー研究の臨床応用の一つであるクローズド・ループ型の

脳刺激の開発と静磁場刺激法の動物モデルでの検討の2つを取り上げて紹介したい。

 クローズド・ループ型のシステムで脳オシレーションを制御する試みは

さまざまな分野と方法で行われているが、ヒトでの臨床応用は困難だった。

私たちはA04飛松班との共同研究によって、二足歩行リズムと同期させた

脳刺激法を行うシステムを開発した。

脳情報を記録しつつ脳刺激法を行うことは技術的に困難であるが、

脳情報の出力である歩行を利用してフットスイッチによる脳刺激出力制御を実現することで、

運動出力がもっとも大きくなるタイミング(遊脚期の前半)で

促通性のアノード刺激を行うことが可能となった。

慢性期脳卒中患者のリハビリテーションに適用することで、

歩行速度やバランスの改善が得られた。

小金丸聡子准教授(獨協医科大学)がまとめた研究成果は、

2019年にStroke 誌に掲載され、マスメディアでも取り上げられた。

二足歩行リズムというオシレーションを外部から制御することで

臨床応用に繋げるアイデアは、オシロロジー領域なしには不可能だったと思う。

 静磁場刺激法は、小型強力なネオジム磁石をヒト頭部にあてることで

脳活動を変調させる非侵襲的脳刺激法の一種である。

この新しい非侵襲的脳刺激法によってヒト脳オシレーションを制御する研究の基盤として、

A01福田班との共同研究でパッチクランプ法を用いて、

静磁場刺激法の神経細胞への影響の生理機構を検討した。

従来は、細胞膜のリン脂質が磁場異方性をもつため

膜貫通性のチャネル(とくにNa、K チャネル)の一時的な機能変化が

関与していると考えられていた。

しかし、ヒト脳での可塑的変化(抑制)を引き起こすのと同様の条件で検討した結果、

静磁場の生体作用ならびに可塑性の生理機構として新しい知見が得られた。

現在、追加実験をしつつ、論文にまとめる予定である。

また、脳波オシレーションに与える影響についても、

B02北野班の北城圭一教授に記録・解析を相談しつつ

実験を遂行中である(芝田純也研究員)。

 オシロロジー領域そのものは2020年3月で終わるが、

今後もこうした既存の領域を超えた共同研究を継続して行きたいと思う。

宇川義一先生(C03班):「5年間を振り返っての総括」(★注目★)

 オシロロジーがもうすぐ終了するということで、色々な思いがよみがえる。

南部先生に声をかけてもらい最初の申請から関わらせていただき、多くの経験ができた。

研究会として立ち上げて、それを基盤に班の申請を立ち上げて行くという手法を知った。

そして、" 発振脳" としての2回の非承認と言う壁を乗り越えて、

" オシロロジー" として3回目に申請が受理された。

南部先生、美馬先生をはじめとする首脳陣の方々お疲れ様でした。

そして、私を仲間に入れていただき、ありがとうございました。

それでも、私にとっては発振脳というタームが懐かしくてたまりません。

臨床の講座にいて、自分の講座の維持だけを考えて広く仲間を集めることを

してこなかった私にとっては、とても良い経験でした。

 この5年間は、自分のポストにも変化があり、実に慌ただしい時期であった。

2018年に定年退職となり、その後福島医大で神経再生医学講座という寄附講座で

2年間を過ごし、2020年から別講座に行く予定である。

脳神経内科の主任教授でなくなり、自由な時間が増えたとともに、

患者の解析と直接ふれあう機会が減り、患者さんの解析は、

共同研究をしている東京大学、鳥取大学、杏林大学、

東京都医学総合研究所の先生方と最近は行っている。

現在この原稿をインドネシアからの帰国の飛行機の中で書いているが、

臨床現場に自分がいる意味などは、むしろインドネシアなどでも実感している。

そんな中、オシロロジーの先生方との集まりは、いつも新鮮で、

私に研究を続けるというモチベーションを与えてくれた。皆様ありがとございました。

もう一つ大きな変化は、臨床研究法という法律ができて、

ヒトを対象とした新しい研究がやりにくくなったことである。

以下に述べるが、特定臨床研究というハードルを越えるのに、

多くの時間を要した時期でもあった。

 この班に参加して一番変化したことは、多くの仲間と知り合えたことである。

これまでの仲間と更に密接に協力できたこと、異分野の日本の仲間と知り合えたこと、

海外の研究者とも協力をする機会を増やせたことであろう。

それぞれで少しずつ研究が進展したと思う。それぞれについて簡単に述べる。

これまでの仲間との研究

 鳥取大学の花島先生、清水崇宏先生、福島県立医大の榎本博之先生、小林俊輔先生、

榎本雪先生、村上丈伸先生、杏林大学の寺尾先生、寺田先生、

徳重先生との共同研究が行われた。

さらに、以前から共同研究をしていた東大の濱田先生、代田先生、

東北大学の阿部十也先生との共同研究を施行した。

濱田先生、阿部先生は公募班員として班に参加したことも一つの要因となった。

この仲間で行ったオシロロジーに直接関連する研究は、

以前から花島先生と共同研究していたtriad stimulation method に関するものである。

運動野の隠れたリズムをあぶり出す手法で、この間に3つほどの論文が発表された。

その一つは、後で述べるドイツのグロイス先生との共同研究でもある。

日本の異分野の仲間との研究

 津田先生をはじめとする、臨床の現場では知り合えないであろう先生方と

ご一緒できたことは、とても光栄なことであった。

新鮮な考え方・解析手法に接することができたのが、何よりの宝と考えている。

ただ、具体的な共同研究に至らなかったのが残念な事で、

てんかんなど数学的に解析できる具体的なデータがある方々をうらやましく思っていた。

北城先生、森田先生とも共同研究の話があったのだが、

具体的にならなかったことが心残りである。

そんな中で、異分野とまで言えないが、共同研究ができたのは、

南部先生、美馬先生であった。

共著者の論文が発表され、新しい研究の芽(SMS など)が出てきたと言えるであろう。

そんな中で、確実に研究として進行したのは、西村先生との研究で、

脊髄刺激で歩行を誘導しようとする研究である。

この研究では、特定臨床研究としての倫理委員会の承認を得ることに半年以上を要した。

福島県立医大で、特定臨床研究としてやっと承認されたところである。

多くの書類仕事は良い経験であるとともに、田添先生お疲れ様でした。

今後のヒトを対象とした研究では、この手の仕事が必要となるのであろう。

海外の仲間との研究

 まず特筆すべきは、デュセルドルフのグロイス先生との共同研究である。

彼は、留学生として福島で3年くらい一緒に仕事をした研究者で、

ドイツに帰国後triad stimulation method を用いたALS 患者の研究を発表してくれた。

今回の援助をいただいた一つの研究である。

その他、今回の援助で、ロンドンとトロントに訪問させてもらった。

超音波刺激という新しい刺激法の始まりを実感できたとともに、professor Rothwell,

professor Paulus 先生とともに、以前から考えていた、

軸索のback propagation によるカルシウム電位が、

運動野の500Hz 以上のオシレーションに関与しているという考えを、

Neuroscience Research 誌の特集号に発表できた。

 私の力不足もあり、今回参加させていただいたことで、

論文などの具体的な成果を多く作成できたかはわからないが、

新しい仲間を得たという経験は、自分の宝となったと確信している。

楽しい機会を多く与えてくれた、多くの仲間と執行部の先生に感謝します。

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【2】2019年度事業実施報告

2019年度に新たに実施された事業です。

今回は、新たな報告はありませんでした。

皆様、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、

オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」

にある書類をご提出下さい。

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【3】その他の行事予定 今後予定されている行事について。

今後予定されている行事は特にありません。

最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。

皆様の研究の益々のご発展を祈願いたします。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31)

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」

Mail Magazine Vol.48 2020/3/25 発行(毎月25日発行)

発行・編集人:武山博文(広報・アウトリーチ委員会)

京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内

〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54

*本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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