体液量・血圧の調節を行う腎傍糸球体装置のNaClセンサーとそのシグナル分子の解明

生理学研究所・細胞器官研究系 岡田泰伸

 腎臓の傍糸球体装置は数種類の細胞で構成されていて、体液量や血圧の調節を行っています。本装置では、まず密集斑(マクラデンサ)細胞が尿細管腔液のNaCl濃度を検知して、その情報を隣接するメザンギウム細胞から輸入細動脈平滑筋細胞や顆粒細胞に伝達して、糸球体に流入する動脈血流量や顆粒細胞からのレニン分泌量の調節をしています。しかし、密集斑細胞におけるNaClセンサーや、その下流のシグナルの実体については永らく不明でした。今回、私達のグループはアラバマ大学及びモントリオール大学との国際的共同研究を行った結果、このNaClセンサーはATP透過性マキシアニオンチャネル(ATPチャネル)であり、下流シグナル分子はそこから放出されるATPであることを明らかにしました。本研究結果は、米国科学アカデミー紀要の2003年4月1日号に発表されました(Bell, Lapointe, Sabirov, Hayashi, Peti-Peterdi, Manabe, Kovacs & Okada 2003 PNAS 100, 4322-4327)。

傍糸球体装置(A)とNaClセンサー及びシグナル伝達メカニズム(B)



[ 機能協関トップへ ]
[ 生理研ホームへ ]