8A.パッチクランプバイオセンサー法によるATP放出解析

清水貴浩 (機能協関研究部門)

実習内容:

 バイオセンサーとは、生体内分子の高度な分子認識機能を利用した化学センサーの総称である。イオンチャネル型受容体は、リガントが結合することにより内在するイオンチャネルが開口するという特殊な分子である。このイオンチャネル型受容体は優れた特異性、高い感受性、早い応答性を持っていることから、バイオセンサーとして用いることができる。

 そこで本コースでは、イオンチャネル型受容体をバイオセンサーとして利用することで、細胞からの生理活性物質放出をリアルタイムに検出するパッチクランプ応用法を実際に体験していただく。

 本コースの初めの2日間は、パッチクランプ基本法の原理・技術を習得することを目的として、実習7、8Bおよび8Cと合同で行われる。実際には、あらかじめ分化誘導をかけた神経系NG108-15培養細胞にパッチクランプホールセル記録を適用し、電流固定法による活動電位の観測および電圧固定法により生じるイオンチャネル電流の計測を行う。この際生じたイオンチャネル電流をどのように同定するのかといった解析法のノウハウも紹介する。

 後半のパッチクランプバイオセンサー法では、バイオセンサーとしてイオンチャネル型ATP受容体(P2X)を利用することで、標的細胞からのATP放出を観測することができる。実際には、イオンチャネル型ATP受容体を一過性に発現させたHEK293細胞にホールセル電圧固定法を適用後に標的細胞に近接させることにより、標的細胞からのATP放出をHEK293細胞上のP2Xチャネル電流活性としてリアルタイムにモニターする。これにより細胞外に放出されたATPを定量することができる。

 時間があれば、HEK293細胞へのトランスフェクションも行っていただく。また別の細胞外ATPの定量法であるルシフェリン・ルシフェラーゼを用いた定量法も紹介する。本実習で行うパッチクランプバイオセンサー法は、発現させるリガンド作動性イオンチャネルの種類を変えることで、刺激に応じた様々な生理活性物質の放出を測定できることから、放出過程を研究するのに非常に有用な方法である。


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