自然科学研究機構
Last Update 2005年 7月 25日

2005年 生理学研究所
生理科学実験技術トレーニングコース

(計画は変更される可能性があります)
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日程

7月 31日(日)午後 〜 8月 1日(月)午前 (関連行事)

8月 1日(月):午後

8月 2日(火)〜 8月 5日(金)

8月 3日(水)

8月 5日(金)

実習コース一覧

各コースの概略は下にありますが、タイトルをクリックすると(もう少し)詳しい説明が現れます。

No. タイトル 最大受入数 連絡担当者 担当部門
1 位相差断層電子顕微鏡の原理と実践 5 永山國昭 ナノ形態生理(統合バイオ)
2 凍結割断レプリカ免疫標識法 2 重本隆一 脳形態解析
3 in situ hybridization法を用いた二重染色法 6 小野勝彦 分子神経生理
4 超高圧電子顕微鏡による生物試料の立体観察 3 有井達夫 形態情報解析室(脳機能計測センター)
5A 局所神経回路構築の形態学的解析 A:光顕2重染色法 4 窪田芳之 大脳神経回路論
5B 局所神経回路構築の形態学的解析 B:超薄連続切片シナプス観察法 3 窪田芳之 大脳神経回路論
6 2光子励起顕微鏡法によるシナプス・開口放出の研究 7 河西春郎 生体膜
7 パッチクランプ基礎実験技術法 12 久木田文夫 神経分化(統合バイオ)、機能協関、生体恒常機能発達機構、細胞生理(統合バイオ)
8A パッチクランプバイオセンサー法 A:パッチクランプバイオセンサー法によるATP 放出解析 6 清水貴浩 機能協関、神経分化(統合バイオ)
8B パッチクランプバイオセンサー法 B:穿孔パッチクランプバイオセンサー法による細胞内シグナル伝達解析 6 鍋倉淳一 生体恒常機能発達機構
8C パッチクランプバイオセンサー法 C:パッチクランプバイオセンサー法による温度受容解析 6 富永真琴 細胞生理(統合バイオ)
9 in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析 8 久保義弘 神経機能素子、神経分化(統合バイオ)
10A スライスパッチクランプ法 A:初心者体験コース 6 宮田麻理子 神経シグナル
10B スライスパッチクランプ法 B:一般コース 9 籾山俊彦 脳形態解析、神経シグナル
11 ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析 4 東島眞一 神経分化(統合バイオ)
12 摂食・飲水行動発現機構入門 4 箕越靖彦 生殖・内分泌系発達機構
13 電気生理学及び心理物理学的手法による視知覚メカニズムの解析 6 小松英彦 感覚認知情報
14 麻酔下動物での電気生理実験 5 伊佐正 認知行動発達機構
15 慢性動物実験法入門 10 南部篤 生体システム
16 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎 8 金桶吉起 感覚運動調節
17 脳機能画像解析入門 30 田邊宏樹 心理生理学
18 生理学実験のための電気回路・機械工作 − OPアンプによる増幅器とチェンバー作製 − 8 大庭明生 技術課

実習コース8ABC〜9は、自然科学研究機構「バイオ分子センサー連携プロジェクト」の一環として行われます。

各実習コースの概略

1.位相差断層電子顕微鏡の原理と実践

無染色生物試料の立体像を再構成する低温断層法と高コントラストの位相差法を組み合わせた電子顕微鏡の原理を説明し、実践を行っていただきます。

2.凍結割断レプリカ免疫標識法

 凍結割断レプリカ免疫標識法は細胞膜上の受容体、イオンチャネル等の膜蛋白質や脂質分子を抗体等のプローブを介してレプリカ上で金標識し、透過型電子顕微鏡で解析する方法です。preembedding法やpostembedding法などの従来の免疫電子顕微鏡法に比べ以下のような利点と欠点があります。
利点
 1. 2次元的に膜上分子の局在を捉えられる。
 2. 高感度で定量的な解析が可能。
 3. immunoblot法に適用できる抗体は多くの場合使用可能。
欠点
 1. 脳などの複雑な組織の場合、細胞や膜ドメインを同定するためのマーカーが必要。
 2. 加圧凍結装置や凍結割断装置など特殊な設備が必要。

 本年度は生理学研究所で確立された脳における受容体やイオンチャネルのレプリカ免疫標識法について、基本的な実験操作と結果の解釈をご紹介するトレーニングコースを行います。上記のようなこの方法の特徴を生かした、脳神経系での有効な利用をお考えの方に参加を募集したいと思います。将来の共同研究等も考慮したします。初めての試みですので定員は少数に限定させていただきます。

3.in situ hybridization法を用いた二重染色法

 組織細胞の発生分化を調べる上で、in situ hybridization法は組織内での遺伝子発現の時・空間的解析は細胞の同定、動態、転写制御を明らかにすることができることから、必須の技術です。本コースでは、この方法を中心とした組織の二重染色を行ないます。主にマウス胎仔の組織切片を用いて、in situ hybridization(digoxigenin標識プローブを用いる)とそれに続く免疫染色を行ない、観察を行います。あわせて、X-gal染色との二重染色やdouble in situ hybridizationについても解説し、時間があれば見学を行ないます。Dig標識RNAプローブの設計や作製は、解説のみとします。
 学部学生を含む組織化学染色の全くの初心者から、現在この手法を使って研究を行なっている人まで、興味をお持ちの方ならどなたでも応募してください。

4.超高圧電子顕微鏡による生物試料の立体観察

 当研究所の医学生物学用超高圧電子顕微鏡(H-1250M)の操作を実際に行い、動作原理を理解することを目指します。培養細胞全載標本などの超高圧電子顕微鏡用試料を作製します。複数枚の傾斜像を撮影して3次元的な情報を得ます。

5A.局所神経回路構築の形態学的解析A―光顕2重染色法

 大脳皮質の局所神経回路には、およそ10数種類の錐体細胞と20数種類の非錐体細胞があり、視床等の皮質下からの入力や、皮質の他の領野からの入力とともに非常に複雑な配線を形成し、皮質機能を構築しています。当コースでは、その回路構築解明のために当部門が用いている免疫組織化学2重染色法を紹介します。DAB法である種類の神経細胞を茶色に染色し、Nickel-DAB法で異なる神経細胞を黒色に染色し、2種類の神経細胞グループを異なる色でマーキングします。可能な限り良好な状態で試料を作成し、エポン包埋します。この方法は、組織保存状態が良く、マイクロメートルのオーダーでの観察することができます。シナプス接着と考えられる両者間のコンタクト部位を、光学顕微鏡レベルで観察する予定です。現在の専攻や分野は問いませんが、局所神経回路に興味を持っている方の参加を歓迎します。

5B.局所神経回路構築の形態学的解析B―超薄連続切片シナプス観察法

 大脳皮質の局所神経回路には、およそ10数種類の錐体細胞と20数種類の非錐体細胞があり、視床等の皮質下からの入力や、皮質の他の領野からの入力とともに非常に複雑な配線を形成し、皮質機能を構築しています。当コースでは、その回路構築解明のために当部門が用いている超薄切連続切片の観察法を紹介します。本コースでは、エポン包埋済試料を使って、その後のプロセスを紹介します。まず、染色済みの神経細胞を光顕で観察しシナプスを観察したい神経終末を選び出し、その部分を含む光学顕微鏡連続写真をおよそ0.5ミクロン深度毎にCCDカメラで撮影記録します。次に、その部分を切り出し超薄切連続切片を作成し、電子顕微鏡でシナプスを光顕連続写真と同定の上、連続的に観察します。超薄切切片の作成を日常行っている方の為のadvace courseである為、ウルトラミクロトームの操作に充分慣れている方のみ参加可能とします。また、局所神経回路に興味を持っている方の参加を歓迎します。

6.2光子励起顕微鏡法によるシナプス・開口放出の研究

 2光子励起顕微鏡法は細胞や組織深部の定量的蛍光観察や刺激を可能とする新しい生理学的手法で多くの成果を上げていますが、それに触れる機会はまだ少なく、その正しい理解や応用は必ずしも容易ではありません。本コースでは、光学顕微鏡の基本的操作法の講習から始めて、2光子励起顕微鏡を用いた大脳皮質樹状突起スパインの機能計測、分泌細胞の開口放出の定量化、ケイジド試薬の利用、細胞内カルシウム濃度測定など、当研究室で日常的に行われている応用例を体験します。2光子励起顕微鏡法に親しみたい方、また、一般にカルシウム濃度測定、蛍光観察による開口放出、シナプスの機能測定などに興味のある方が対象です。

7.パッチクランプ基礎実験技術法

近年、イオンチャネルが様々な疾病と関わっていることが明らかとなってきており、パッチクランプ法の重要性が増してきています。 本講習は、パッチクランプ法の原理を理解し、実験技術を習得することを目的としています。 実習では培養神経細胞に様々なパッチクランプ法を適応することにより観測されるイオンチャネル特性の解析を行います。

8A.パッチクランプバイオセンサー法 A:パッチクランプバイオセンサー法によるATP 放出解析

パッチクランプバイオセンサー法の開発により、細胞からの物質放出をリアルタイムで検出できるようになった。本コースではこの方法を実際に体験していただく。最初の2日間は、パッチクランプの基本法の原理・技術を習得し、培養神経細胞に様々なパッチクランプ法を適用することにより観察されるイオンチャネル特性の解析を行う。後半のバイオセンサー法では、イオンチャネル型ATP受容体(P2X)を発現させたHEK293細胞にパッチクランプ全細胞記録を行い、バイオセンサーとして用いる。このP2Xチャネル活性をモニターすることで、標的細胞からのATP放出をリアルタイムに観測できる。また細胞外に放出されたATPのルミネッセンスを用いた定量法も紹介する。本コースへはイオンチャネルだけでなく、伝達物質および生理活性物質の放出過程に興味がある方の参加もOKです。

8B.パッチクランプバイオセンサー法 B:穿孔パッチクランプバイオセンサー法による細胞内シグナル伝達解析

 イオンチャネル応答は細胞内外イオンや種々の細胞内酵素活性によって変化します。そのため、細胞本来のチャネル応答を記録するためには細胞内環境を保った状態で記録することが必要です。本講習は、細胞内Ca2+や蛋白質などを保ったまま電流記録が可能なニスタチン穿孔パッチクランプ法、細胞内Cl-濃度を保ったまま記録可能なグラミシジン法の技術を習得することを目的としています。また、標本として、培養細胞を用いるほか、任意の部位から神経細胞を急性単離する技術も修得します。

8C.パッチクランプバイオセンサー法 C:パッチクランプバイオセンサー法による温度受容解析

 現在までに明らかになっている6つの温度感受性TRPチャネルは非選択性陽イオンチャネルで高いCa2+透過性を有しています。そこで、これら温度受容体チャネルの機能解析を学びますが、最初の2日間はパッチクランプの基本法の原理・技術を習得し、培養神経細胞に様々なパッチクランプ法を適用することにより観察されるイオンチャネル特性の解析を行います。次に、感覚神経細胞の初代培養法とHEK293細胞への温度感受性TRPチャネル遺伝子の導入法を学びます。そして、それらの細胞を用いて温度変化による電流活性化と細胞内Ca2+濃度の増加をそれぞれパッチクランプ法とCa2+-imaging法によって観察します。温度感受性チャネルの多くはリガンド作動性チャネルとしても機能することからリガンド投与による膜電流変化、細胞内Ca2+濃度の変化も観察します。パッチクランプ法はもとより、温度受容やリガンド作動性チャネルに興味のある方の参加も歓迎します。

9.in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析

 このコースでは、イオンチャネル・チャネル型受容体・代謝型受容体等の膜機能蛋白を、アフリカツメガエル卵母細胞、HEK293 細胞等の in vitro 発現系を用いて発現させ、その分子機能と細胞応答を、2本刺し膜電位固定法、パッチクランプ法、細胞内 Ca2+ イメージング法により解析するという、一連の実験の流れを実地体験していただきます。受講後に同種の実験系を立ち上げることができるように、卵母細胞注入用のcRNA の合成や、リポフェクション法による HEK 細胞への遺伝子導入といった分子生物学的操作と、電気生理、光学生理の測定実験の両方を含んでいる点がこのコースの特徴です。また、チャネル分子の構造変化を FRET 法により光学的に解析する実験(久保G)や、ゲート電流の測定(岡村G)も供覧する予定です。現在、分子生物学、生理学のどちらの分野に所属していらっしゃる方も歓迎いたします。これまでの経験と興味に応じて、重点をおく実験と到達目標レベルについて、できるだけ個別的な対応ができるよう、少人数で行います。

10A.スライスパッチクランプ法 A: 初心者体験コース

 1976年Neher とSakmannによって開発されたパッチクランプ法はいくつかの改良を経て、細胞の活動性を検出する方法として様々な分野に活用されており、電気生理学的手法を馴染んだ事の無い人がいきなり始めることも多いと思います。本コースでは正立顕微鏡やマニュピュレーターを扱ったことのないパッチクランプ実験の初心者を対象に、脳スライス標本の作製における留意点、細胞の選び方、パッチクランプのし方など、スライスパッチクランプ法の基本的技術を習得し、ホールセルパッチクランプが各自でできるようになることを目的とします。また、スライスパッチクランプ法の基本的理論を理解します。実習は囓歯類の大脳皮質、海馬、小脳などのスライス標本を用い、voltage-clamp法、current-clamp 法で記録し神経細胞とシナプスの基本的性質を観察します。

10B.スライスパッチクランプ法 B: 一般コース

 パッチクランプ法が様々な分野に取り入れられている現在において、周りに電気生理学の専門家のいない環境で、パッチクランプ実験に苦心されている方も多いと思います。本コースは、脳スライスや培養細胞などでパッチクランプ実験の経験がある人を対象に、スライスパッチクランプ法の電気生理的理論の理解を深め、正しい技術を習得し、中枢神経系のニューロンとシナプスの基本的性質を電気生理学的に正確に記録・解析できるようになることを目的とします。また、バイオサイチン注入による細胞形態染色法やブラインド・パッチ等の応用技術を紹介する他、現在直面している問題について、実際的なトラブルシューティングを試みたく思います。

11.ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析

 ゼブラフィッシュの幼魚を用いて神経回路の研究を行うことの最大の利点は、体がほとんど透明であることであるために、蛍光性の色素を用いて神経細胞を高精度に可視化できることにあります。本コースでは、第一に、DNAを胚に注入することによってGFPを発現させます。いくつかの異なるコンストラクトを用いることによりそれぞれ異なったタイプの神経細胞をラベルすることができ、ラベルあれた神経細胞の形態を通常の落斜蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡で観察します。第二に、化学性の蛍光色素を筋肉あるいは脊髄に注入することによりレトログレードなラベリングを行い、神経細胞の形態観察を行います。さらに、カルシウム濃度依存性の蛍光色素でこのラベリングを行い、ラベルされた運動神経細胞、あるいは延髄網様体神経細胞で、逃避行動に際してのカルシウムイメージングを行います。最後に、GFPでラベルされた神経細胞からの電気生理学的な記録を紹介します(これに関しては、時間の都合により、実験は講師によって行われる)。

12.摂食・飲水行動発現機構入門

 摂食・飲水行動は生命維持に関わる最も基本的な本能行動であり、生体内外の環境変化を中枢神経系がモニターすることによって惹起されます。本コースでは、これら本能行動の神経回路網を明らかにする研究法の一つとして、マウス視床下部・脳室内に微量の神経伝達物質、ホルモンを投与し、摂食・飲水行動の発現、自発運動量の変化を解析します。本コースでは特に、マウス視床下部・脳室内への微小カニューレの埋め込み、神経伝達物質の投与、並びにそれに伴う行動変化を解析するための基礎技術を学習します。

13.電気生理学及び心理物理学的手法による視知覚メカニズムの解析

 視知覚の神経機構を明らかにするためには、ある視知覚が生じている時に大脳皮質視覚野においてどのようなニューロン活動が生じ、視知覚の変化に伴ってニューロン活動がどのように変化するかを調べる必要があります。本コースではこのような研究の考え方を学び、研究を行う基礎となる電気生理実験および心理物理実験の実習を行います。電気生理実験については、微小電極を用いてサルの視覚皮質からニューロン活動を記録する実験を体験します。心理物理実験については、パーソナルコンピュータ上で作成し呈示される視覚刺激に対する知覚を測定します。またニューロン活動の統計解析についてMatlabを用いた実習を行い、心理物理実験で測定される知覚の性質とニューロン活動の関係を明らかにする手法について学びます。

14.麻酔下動物での電気生理実験

 麻酔下ラット、マウスにおいて錐体路などの主要な脊髄伝導路の神経伝導(伝導速度、不応期など)の計測、感覚刺激や中枢神経系の局所的電気刺激に対する大脳皮質や上丘におけるフィールド電位や単一ニューロンの応答を記録する手法を実習します。

15.慢性動物実験法入門

 覚醒下の実験動物とくに霊長類に様々な課題を遂行させ、その際の神経活動を記録・解析するという「慢性実験」は、神経回路が実際に生体内でどのように働いているかを解明する上で強力な手段です。また、様々な脳領域に刺激電極を留置しておくことにより、従来の急性実験と同様に電気生理学的に神経回路を解析することも可能です。さらに、神経解剖学的研究において標識物質の注入部位を生理学的に同定する際にも、慢性実験のセットアップは有用です。しかし、このような実験技術は手から手へと受け継がれることが多く、なかなか体系だって習得する機会が少ない。本コースでは、このような慢性実験を始めたばかり、あるいはこれから始めようとする研究者や大学院生を対象に、課題の訓練方法、手術法、金属電極作製、記録・解析方法などについて講義・実習を行います。

16.脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎

 脳磁図は、完全に非侵襲的にヒトの脳機能を測定、研究することができる優れた方法です。しかしその原理や特徴を知らずに使用すると、間違った結果を導く危険性もあります。本コースでは、これから脳磁図を用いて研究を始める学生または若手研究者を対象に、脳磁図測定の原理を分かりやすく講義し、また基礎的な測定方法を習得、自ら具体的な実験計画を作成できるようになることを目指します。また、脳波やfMRIなどとの方法論的相違点も明らかになるので、これらを用いて現在研究をしている若手研究者にも有意義なコースです。

17.脳機能画像解析入門

 磁気共鳴画像法(MRI)や陽電子断層撮影法(PET)などの脳機能画像法は、人体を傷つけることなく脳活動を観察することを可能にし、神経科学の強力な「武器」となりつつあります。得られるデータはほぼ全脳から記録される超多次元時系列構造を持ち、その解析には統計学的手法の応用が不可欠ですが、誤った取り扱い(安直なデータ収集や不適切な解析、誤った解釈など)は、思わぬ誤解を招くだけでなく真実からかけ離れた結論を導き出す危険性すらはらんでいます。本コースでは、 (1) 心理生理学上の疑問の実験パラダイムへの翻訳、(2) 画像データの処理および統計解析、(3)結果の解釈とまとめ方、(4)予想外の結果に直面した時の対処法、といった立体的かつ実戦的観点から、実際の機能的MRIデータを教材とした講義と実習を行います(MRIによる撮像の実習は行わない)。 これらを通して脳機能画像法のもつ可能性とピットホールについてバランスのとれた理解を深め、システム神経科学の武器として自在にかつ安全に使いこなせるようになることを目的とします。受講対象者は、脳機能画像解析を始めたばかりあるいはこれから始めようとする初心者の学生です。

18.生理学実験のための電気回路・機械工作  − OPアンプによる増幅器とチェンバー作製−

 本実習コースは、電気回路・機械工作実習を通して、研究を進める上での「もの作り」の大切さを体験することを目的としています。実習内容は、電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに、OPアンプによる電流−電圧変換回路、各種増幅回路、フィルタ回路、定電圧電源回路などの製作により回路設計の基本、回路図の読み方、はんだ付け技術および測定技術の習得を目指します。また、パッチクランプ実験で実際に使用されているバスチェンバーの作製実習により、設計のポイント、材料の選択、加工手順、縦型フライス盤、旋盤、ボール盤等の工作機械の基本的な使用法と作業時の注意点なども合わせて習得します。 この実習コースでは、初心者から中級者の方を対象に一人で最初から完成まですべて行う、より実践型の実習であることを特長としています。


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