11.ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析

東島 眞一 (統合バイオ・神経分化部門)

発生分野で重要なモデル生物であるゼブラフィッシュは、神経機能解析の分野でも重要なモデル生物となりつつある。胚期、幼期を通して体がほとんど透明であることであるため、蛍光性の色素を用いて神経細胞を生きたまま高精度に可視化できることが最大の利点となっている。本トレーニングコースでは、この長所を実際に受講者にふれてもらうことを第一義の目的として以下の実験を行う。

(1)DNAコンストラクトの胚への注入と、GFP発現細胞の観察

当方で用意したDNAコンストラクトを一細胞期の胚に注入することによってGFPを発現させる。いくつかの異なるコンストラクト(それぞれ異なった遺伝子のプロモーターを持つ)を用いることにより、それぞれ異なったタイプの神経細胞をラベルすることができる。1日後、ないし2日後に、ラベルされた神経細胞の形態を通常の落斜蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡で観察する。受講者には、ゼブラフィッシュ胚へのDNA注入の基礎技術(針づくり、トレイづくりを含む)と、GFPでラベルされたゼブラフィッシュ神経細胞の、共焦点顕微鏡による観察の基礎技術(胚、幼魚のアガロースへのマウント操作を含む)を身につけてもらう。

(2)蛍光色素のバックフィリングによる神経細胞のラベリング、およびカルシウムイメージング

化学性の蛍光色素を筋肉あるいは脊髄に注入することによりレトログレードなラベリングを行い、神経細胞の形態観察を行う。共焦点顕微鏡による観察は(1)と同様である。GFPによるラベリングと違って、遠くまで軸索をのばす(しかも軸索が太い)神経細胞が効率的にラベルされる。さらに、カルシウム濃度依存性の蛍光色素、例えばカルシウムグリーンでこのラベリングを行い、ラベルされた運動神経細胞、あるいはマウスナー細胞(巨大な延髄網様体神経細胞で、逃避行動に非常に重要な役割を果たす)、逃避行動に際してのカルシウムイメージングを行う。受講者には、バックフィリングの基礎技術を取得してもらい、また、生きたままの幼魚を用いたカルシウムイメージングにふれてもらう。

(3)ゼブラフィッシュ幼魚の神経細胞からの、仮想遊泳行動中の電気生理学的記録

最後に、GFPラベルされた脊髄神経細胞からの、仮想遊泳行動中の電気生理学的な記録を紹介する。これに関しては、時間の都合により、実験は講師によって行う。受講者は実際の実験の見学を通して、実験の雰囲気、プレパレーションの実際(麻痺後、筋肉を2−3節ほど取り除いた魚)にふれてもらう。


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