16.脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
金桶 吉起 (感覚運動調節部門)
実習の内容
- 初日午前は、脳磁図の原理や測定方法などの基本的事項を講義、実習にあたっての注意事項を確認する。
- 初日午後から三日目にかけて、体性感覚、聴覚、事象関連周波数解析、視覚のそれぞれの分野について、実際に脳磁図の実験を行う。参加者は、脳磁図データの測定や被験者を体験する。実際に測定したデータを用いて、種々の解析を指導のもとに行う。
- 最終日の金曜日は、参加者それぞれが実際に脳磁図を使用してどのような実験をしたいか、発表する。これについて、実際に脳磁図で可能な実験であるかを教室員とともに参加者全員で議論する。これにより、参加者はどのような実験が脳磁図に向いているのか、どのようなパラダイムであれば有益なデータが引き出せるかを理解することができる。以下にそれぞれの分野の概略を述べる。
- 体性感覚
実習では:手(正中神経)および足(後頸骨神経)の刺激による最初の大脳活動(中心後回の3b野、図1)を記録する。体部位再現に矛盾のない部位に活動がみられるか、手と足の刺激で反応潜時に差があるかなどを検討する(足は手より大脳から遠い)。
- 聴覚
ヒトが音を聴取した際に記録される脳磁場反応の発生源や刺激音の周波数情報に依存する聴覚野の局在を確認することを目的する。
- 視覚
視覚実験では、特に研究対象となる機能的部位により刺激の選択が大変重要となる。今回の実習では、比較的簡単な刺激から高次視覚情報処理を観察するための特殊な刺激まで、いくつかの刺激を紹介しながら、実際に記録される波形を分析しその結果について検討していきたい。
- 事象関連周波数解析
自発活動もまた、さまざまな刺激やeventにより変化することが知られている。一般に、あるeventに関連して、自発脳活動の特定の周波数帯域においてそのパワーが増加することを事象関連同期 (event-related synchronization: ERS)、逆に減少することを事象関連脱同期 (event-related desynchronization: ERD) と呼ぶ。今回は、随意運動におけるERD・ERSをMEGによりとらえることを目的として実習を行う。
コース概要に戻る
Copyright(C) 2005 NIPS. All rights reserved.