18.生理学実験のための電気回路・機械工作 − OPアンプによる増幅器とチェンバー作製−

大庭 明生 (技術課)

 本実習コースは、電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに、電気生理実験に有用な「サウンドモニター回路」とサウンドモニター回路動作用「直流定電圧電源」、「アクリル製バスチェンバー」の作製を行います。実習は「サウンドモニター回路」作製グループと「アクリル製バスチェンバー」作製グループに分けて行い、1日半で作製グループを交代します。

 電気回路実習の「直流定電圧電源」は、100 Vの交流電源からOPアンプICなどを駆動する±15 V直流電圧を取り出すための回路です。プリント基板を使用し、回路設計の基本、回路図の読み方、はんだ付けの基本、工具の使用法について学びます。

 「サウンドモニター回路」は、ギガオームシールを形成する際の補助的な動作をさせる装置です。パッチクランプ実験では、顕微鏡下で細胞に対するガラス電極との相対的な位置関係を確認しながら、アンプの電流波形をモニターしてギガオームシールの進行を確認します。このとき、電極が細胞に接近するにつれて電極とバス間に流れる電流が減少することに着目し、この電流変化を音の高低(ピッチ)の変化に置き換えるのが「サウンドモニター回路」です。この装置の使用で、実験者はオシロスコープの波形に目を向けることなく顕微鏡操作に専念できます。実習では、ユニバーサル基板に部品の実装、配線とはんだ付けを行って回路を完成させます。電気回路実習では、OPアンプIC等による各種増幅回路、フィルタ回路、電圧−周波数変換回路、オーディオ回路等の製作と動作測定の基礎が習得できます。

 機械工作実習では、当研究所の研究室で使用されている「アクリル製バスチェンバー」の作製を行います。作製するバスチェンバーは、中央に細胞を撒くバスがあり、3種類の灌流液がアリ溝加工によるスライド機構で瞬時に交換できるようになっています。廃液は外周に設けた溝からの自然落下と、吸引により強制的に回収できるようになっています。実習では機械工作の設計ポイント、材料の選択、加工手順、縦型フライス盤、旋盤、ボール盤等の工作機械の基本的な使用法と作業時の注意点などを習得し、工作機械を実際に動かし、溝加工、穴あけ、材料の端面加工などの実習を行いバスチェンバーを完成させます。

サウンドモニター回路(左)とアクリル製バスチェンバー(右)

 以上のように、この実習コースでは初心者から中級者を対象に各自が最初から完成まですべて行う、実践型の実習を特長としており、完成した製作物は持ち帰り今後の研究活動に役立てていただけます。また、担当スタッフが疑問点はいつでも気軽に相談に応じます。

 なお、本実習コースは、電気回路・機械工作作業が行いやすい服装でご参加ください。


コース概要に戻る
Copyright(C) 2005 NIPS. All rights reserved.