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実習コース紹介

1. 組織からの蛋白質複合体精製と質量分析による蛋白質同定

生体膜研究部門

脳の複雑かつ精緻な活動を支える脳細胞(神経細胞・グリア細胞)の働きは、個々の細胞が保有する多種の蛋白質の機能によって成立します。イオンチャネルや受容体、シグナル分子、酵素などの機能蛋白質は、適材適所で互いに相互作用し蛋白質複合体を形成して、ユニットとして機能します。したがって、これら蛋白質相互作用を生化学的に同定することは、脳機能を理解する上で必須です。本コースでは、脳組織からの免疫沈降法により、特定の蛋白質を含む生理的な蛋白質複合体を精製し、質量分析装置を用いて、複合体構成分子を同定するまでを実習します。生化学実験の経験は必須ではありませんが、精製から同定までほとんどの実験操作を実際に受講者自身に行っていただきます。短期間集中的に行いますので、若干ハードワークなコースとなります。

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2. in situ hybridization法

分子神経生理研究部門

Allen Brain AtlasおよびGENSATの整備により、マウス脳の胎生期から成体期にいたるまで興味のある遺伝子の発現分布を知ることが出来る。大まかに遺伝子発現分布を知るにはこれらのデータベースは強力なツールであるが、何か特殊な操作後の遺伝子発現変化には一切対応していない。そういった目的では研究者自らがin situ hybridization法を行う必要がある。本トレーニングコースでは成体マウス脳切片を用いて、in situ hybridization法を行い、特定のmRNAの脳内分布を描出し観察する。更に、免疫組織化学とin situ hybridization法を組み合わせ、mRNAと抗原(GFAPなどのマーカータンパク)を同一切片で可視化する方法を指導する。

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3. ジーンターゲティングマウス作製の基礎から応用へ

遺伝子改変動物作製室

マウスでは、生殖細胞への分化能を持ったES細胞レベルで、標的遺伝子組み換えを施し、その組み換えES細胞を受精卵へインジェクションすることで、標的遺伝子の配列を自由自在に改変させた個体を作り出すことができる。分子生物学的手法と発生工学的手法を駆使して作製するこの手法は、マウスにおけるジーンターゲティング法と呼ばれており、ヒト疾患の発症メカニズムや脳神経機能の分子メカニズムを解明するのに大いに役立っている。本コースでは、マウスにおける、1) ES細胞培養の基礎、2) 実験動物の取り扱い、3) 受精卵の採取(過剰排卵誘起、卵管・子宮灌流)、4) 受精卵の顕微操作(8-cellインジェクション)、5) 胚移植(胚の子宮内移植)といった発生工学の基本技術について実習する。

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4. 2光子顕微鏡による細胞内分子活性化のFRETイメージング

多光子顕微鏡室

二光子顕微鏡法は生体組織深部のイメージングに適しており、高空間分解能での蛍光観察や局所的な細胞刺激を可能にする最新の手法である。さらにこの顕微鏡を用いたFRETイメージングによって、組織深部の細胞内の分子活性化を観察することができるため、細胞のいつ、どこで、どのような分子が働いているのかといった情報を知ることも可能になっている。本実習では2光子蛍光顕微鏡やFRETについての基本的な知識を習得する。また、実際にラット海馬スライスの神経細胞や培養細胞(HeLa)にFRETセンサーを遺伝子導入(遺伝子銃、リポフェクション)し、細胞への入力刺激時のシグナル伝達分子(CaMKII)の活性化イメージングを行う。さらに得られたデータの解析をMatlabを用いて行う。

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5. TEMトモグラフィーおよび連続ブロック表面SEMによる細胞の三次元形態解析

形態情報解析室

TEMトモグラフィーおよび連続ブロック表面SEMによる細胞や細胞小器官などの三次元構造解析を実習する。TEMトモグラフィーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて試料を連続的に傾斜させて画像を収集し、投影像から三次元構造を再構築する方法である。また連続ブロック表面SEMは、樹脂包埋された試料を連続的に削りながらその表面に現れる構造を走査型電子顕微鏡(SEM)により記録し、試料の三次元構造を再構築する方法である。本コースでは、希望によりいずれかの方法を用いて、その装置の操作方法、データ収集法、三次元再構成法、三次元像のセグメンテーション法を解説と実習により習得する。

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6. 2光子励起顕微鏡による生体内微細構造・細胞活動イメージング

生体恒常機能発達機構研究部門

非線形工学系である2光子励起法は、長波長のレーザー光を用いて組織内深部構造をミクロンレベルの高解像度で観察する技術です。この高い深部到達度・高解像度・低侵襲の特性を有する2光子法を用いて、脳神経細胞、グリア、骨細胞や血管などの微細構造を生きた動物(マウス)において観察するイメージング技術や、カルシウム指示薬を用いて生体内における神経細胞の活動を測定する技術を提供します。加えて、脳内微細構造イメージングのために頭蓋骨をカバーガラスに置換する技術のトレーニングを行います。

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7. in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析

神経機能素子研究部門

イオンチャネル・チャネル型受容体・代謝型受容体等の膜機能蛋白を、アフリカツメガエル卵母細胞、HEK293細胞等のin vitro発現系を用いて発現させ、その分子機能と細胞応答を、2本刺し膜電位固定法、パッチクランプ法、細胞内Ca2+ イメージング法、FRET法に基づいた分子プローブによるcAMP解析法などにより記録するトレーニングを行う。データの解析法や実験の統合的な進め方についてのトレーニングも行う。少人数制とし、マンツーマンに近い形での指導を行う。電気生理学の初心者、分子生物学の初心者も歓迎し、各自の希望に沿えるよう、可能な範囲で個別対応も行う。

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8. パッチクランプ法

細胞生理研究部門
生体恒常機能発達機構研究部門

パッチクランプ法による実際の電流記録と活動電位の関連を基礎から学ぶことができます。パッチクランプ法に関する講義の後、コンピュータを使ったシミュレーションによって神経細胞の活動電位の発生メカニズムを学びます。その後に全細胞記録法を用いて神経細胞で実際に発生する活動電位を記録し、その背景にある膜電位依存性Na+及びK+イオンチャネルの活動を膜電位固定下で記録します。それらの実際の膜電位依存性を電流・電圧曲線を描いて分析することにより、活動電位の発生機構を理解します。こうした基本法を修得した後、細胞生理部門でのトレーニングコースでは以下のような応用技術を学ぶこともできます。培養感覚神経細胞や非選択性陽イオンチャネルで高いCa2+透過性を有する温度感受性TRPチャネルを強制発現させたHEK293細胞を用いて温度変化による電流活性化をパッチクランプ法によって観察します。温度と電流情報を同時に取り込み、電流の温度依存曲線を作成します。

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9. スライスパッチクランプ法

神経シグナル研究部門
大脳神経回路論研究部門

パッチクランプ実験の初心者を主な対象として、脳スライス標本の作製手順、細胞の選別法、ホールセル記録の基本的手技を指導する。本コースは、パッチクランプ実験の原理を理解するとともに、スライスパッチクランプ法を各自の研究目的に即して実際に適用できるようになることを目標とする。実習では、マウスやラットの脳スライス標本(大脳皮質・小脳・海馬など)を作製し、current clamp法ならびにvoltage clamp法を用いてニューロンの発火活動やシナプス電流を記録する。また、データの解析方法についても概説する。希望者には、記録した細胞を可視化して形態を観察する方法(バイオサイチン染色法)も併せて指導する。染色法の受講希望者は、オンライン申し込みフォームの備考欄に『バイオサイチン染色法受講希望』と必ず明記してください(ただし、染色法受講者はパッチクランプ記録やデータ解析を体験する時間が減ることにご留意ください)。また、受講を希望する部門があれば部門名を明記してください。

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10. In vivo標本およびスライス標本からのブラインドパッチクランプ法

神経シグナル研究部門

病態モデルや遺伝子操作動物における行動異常の成因などを単一ニューロンやシナプスレベルで機能解析する、in vivoパッチクランプ法やスライスパッチクランプ法の実習を行います。感覚伝達、特に痛みなどをテーマとし、スライス標本を用いたカプサイシンなどTRP受容体作動薬のシナプス前性の作用解析、希望者にはin vivoパッチクランプ法による生理的な感覚刺激によって誘起されるシナプス応答の記録・解析の実習を予定しています。本コースで用いるブラインド法は、記録細胞を視認する必要がないために高価な顕微鏡が不要であり設備投資が低く抑えられること、また、組織表面のみならず深部に位置する神経核やミエリンが発達し可視化が困難な成熟した動物、作製に日数を要するモデル動物を対象にできるなどの長所があります。電気生理学の基礎のミニ講義やディスカッションなども予定しています。

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11. 神経性代謝調節研究法入門

生殖・内分泌系発達機構研究部門

近年、分子生物学的手法および遺伝子工学的手法の進展により、迅速で多様な研究成果が得られるようになったが、生体における生理学的意義や全身の代謝調節を検討する為には細胞や臓器レベルだけでなく、各臓器間の相互依存性ならびに脳神経系と他臓器との代謝相関を調べることが必要であり、個体まるごとを使った実験が不可欠である。
我々の研究室では、中枢神経系特に視床下部における摂食行動、糖・脂質代謝への調節機構を明らかにするため、マウス視床下部の各神経核をレプチンや様々な生理活性物質によって刺激あるいは抑制し、摂食行動の変化や各末梢組織における糖および脂質の代謝動態を測定、解析している。そのため、視床下部への神経伝達物質の投与、代謝産物の血中濃度測定のための採血などを、無麻酔・非拘束下の実験動物を用いて実施している。
そこで本コースにおいては、視床下部に神経伝達物質を投与するための微小カニューレの正確な挿入と固定手術の習得を目指し、その後無麻酔・非拘束下において、自身で留置した微小カニューレより生理活性物質を実際に投与し、摂食行動を観察する。さらに実験動物の内分泌代謝機能は実験環境によって非常に鋭敏に変化するため、あらかじめ実験動物を実験時の状態に慣れさせておく必要がある。そこで、実験動物のハンドリングの習得も併せて行う。

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12. 色と質感知覚の脳内メカニズムの実験的解析

感覚認知情報研究部門

知覚のメカニズムを理解するためには、知覚のもとになる外界に生じた物理的な現象と、心理的な現象として生じる知覚の内容と、それらを媒介する脳内神経活動の3者の関係を明らかにしていくことが必要です。このコースでは当研究室が行っている色と質感知覚の研究を具体的にとりあげて、このような研究の考え方を学び、研究を行う基礎となる脳活動計測(電気生理およびfMRI計測)実験および心理物理実験の実習を行います。脳活動計測実験では、微小電極法およびfMRIを用いてサルの視覚皮質から脳活動を記録する実験を体験し、実験目的の設定、課題や刺激のデザイン、記録に必要なシステムについて理解を深めます。また色や質感の知覚に関わる物理的な要因の理解をはかるとともに、色や質感知覚をどのように客観的に測定するかについての心理物理学的実験法の考え方や方法について学びます。本コースは色と質感知覚の研究に焦点を絞ったコースであり、このような分野でこれから研究を行いたいと考えている大学院生、若手研究者を歓迎します。

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13. 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎

感覚運動調節研究部門

脳磁図(MEG)は、脳の神経活動に伴って発生する磁場(磁界)を頭皮上から非侵襲的に計測する技術です。初日の講義で脳磁図の原理や測定方法などの基本的事項や実習にあたっての注意事項を確認した後、体性感覚・聴覚・視覚それぞれの感覚系について、脳磁図計測の実習を行います。参加者は被験者を体験し、脳磁図データの測定や測定したデータの解析を行います。例えば体性感覚系では、正中神経刺激による最初の大脳活動(およそ20ミリ秒)を記録し、信号源推定を試みます。脳磁図の時間・空間分解能がある程度体感できると思います。後半の1〜2日は、参加者が希望する実験を行う予定です。これにより、脳磁図に適する実験やパラダイムについての理解が深まると期待されます。予め担当者から希望する実験について連絡があります。

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14. ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門

心理生理学研究部門

本コースでは脳機能画像解析の初級者を対象に、機能的MRIデータの前処理および統計解析について、講義と実習を行う。これらを通して脳機能画像法のもつ可能性とピットホールについてバランスのとれた理解を深められるようにする。MRIを使った撮像実習は行わない。実習ではStatistical Parametric Mapping 8 (SPM8)を使用するが、このプログラムを作動させるにはMATLAB(Mathworks社)が必須である。受講に当たってはSPM8が作動するMATLAB7.1 (R14SP3) か、それより新しいバージョンをインストールしたノートパソコンを持参することが必須である(ネットワークライセンスは不可)。本コースでは統計の基礎知識を持っていることを前提としており、T検定・分散分析・相関の原理と実際についての理解しておく必要がある(参考文献:心理学のためのデータ解析テクニカルブック・一般線形モデルによる生物科学のための現代統計学等)。またエクセルによるデータの基本的な操作ができることが強く望まれる。

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15-1. 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1)
   (生体アンプとバスチェンバーの作製)

技術課

本実習コースは、電気回路工作・機械工作実習を通して研究を進める上での「もの作り」の大切さを知ることを目的としています。電気回路工作では、生体アンプ(EMG)の作製を通して回路設計の基本、回路図の読み方、はんだ付け技術の習得を目指します。機械工作では、アクリル製バスチェンバーの作製を通して機械設計のポイント、材料の選択、加工手順、縦フライス、旋盤、ボール盤等の工作機械の使用法を習得します。本実習コースは、一人の方が最初から完成まですべて行う、より実践型の実習であることを特長としています。

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15-2. 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2)
   (C言語によるPICプログラミング)

技術課

種々の実験の制御や計測に応用可能なPIC(Peripheral Interface Controller)を取り上げ、PICを応用するためのハードウェアとソフトウェアの基礎を学びます。ハードウェア実習ではPIC本体の構成と機能ならびに周辺部品の概要を学び、「PICマイコン学習キット」の作製を行います。ソフトウェア実習では、C言語のプログラミングの基礎を学習し、PICを制御するためのプログラムを作成します。作成したプログラムは、PICライタにて書き込みを行い、先に作製した「PICマイコン学習キット」を使って動作確認を行います。このような実践型の実習を通し、生理学実験に必要となる実験機器の製作技術の基本と応用力の養成を目的とします。

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