生理学研究所年報 第30巻
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技術課

大庭明生,大河原浩

【概要】

 今年度,研究所組織は多次元共同脳科学推進センターの新設,脳機能計測・支援センターと情報処理・発信センターの設置による既存施設の大がかりな再編が行われた。脳機能計測センター生体情報解析室の2光子顕微鏡イメージング研究とコンピューター・ネットワーク管理はそれぞれ,脳機能計測・支援センター多光子顕微鏡室と情報処理・発信センターネットワーク管理室に改編改称された。また,生理研・基生研共通施設の電子顕微鏡室および機器研究試作室は脳機能計測・支援センター,さらに広報展開推進室および点検連携資料室は情報処理・発信センターに再編された。これを機会に課も,従来の研究部門の研究状況や本人の専門を越えて,研究所の今後の研究方針や重点課題に対応した,また課員に業務の新たな自己適正の発掘と資質向上を図らせ,新しい技術課題に挑戦させる観点から,課員13名の所内異動を行い,研究支援体制の活性化を進めた。異動部署は次のとおりである。市川修班長 行動様式解析室,加藤勝己係長 形態情報解析室,小原正裕係長 生体システム部門,前橋寛係長 多光子顕微鏡室,伊藤昭光係長 動物実験センター,伊藤嘉邦係長 心理生理学部門,山口登係長 大脳神経回路論部門,戸川森雄主任 認知行動発達部門,佐治俊幸主任 機器研究試作室,森将浩係員 神経分化部門,髙木正浩係員 感覚認知情報部門,小池崇子係員 分子神経生理研究部門,山田元係員 電子顕微鏡室。また,課長の選考方法と課長補佐制の導入について検討され,「技術課長および課長補佐に関する申合わせ」が作成された。申合わせに従い,技術課長候補者推薦委員会が立ち上げられた。

 課の研究活動への寄与と貢献を一層進めるため下記の事業を実施した。

(1) 生理科学実験技術トレーニングコースでの技術指導

 生理学研究所が毎年主催し,実施している生理科学実験技術トレーニングコースで,『生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング』をテーマに,『PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製』と『C言語によるPICプログラミング』の2コースを担当し,7名の若手研究者の技術指導を行った。

(2) 生理学技術研究会の開催

 全国の大学等技術職員の技術連携と交流を目的に第31回を,基礎生物学研究所・技術課と合同で開催した(平成21年2月19日-20日)。会では,口演発表が23題,ポスター発表が45題あり,研修講演として『細胞内の情報伝達メカニズムの解明へ向けて生細胞イメージングとプロテオミクスを用いた解析』(深田正紀,生理学研究所生体膜研究部門教授),特別講演として『大学共同利用機関・技術課はどこへ行くのか』(大庭明生,生理学研究所技術課)を行った。これらの報告は『生理学技術研究会報告(第31号)』にまとめた。

(3) 奨励研究採択課題技術シンポジウムの開催

 時代要請に対応した技術認識と向上に立った技術職員の業務の社会的開示を推進するために奨励研究採択者による第5回の報告会(平成21年2月20日)を12演題で行った。この報告は『生理学技術研究会報告(第31号)』にまとめた。

(4) 自然科学研究機構技術研究会の参加

 自然科学研究機構技術職員の業務の紹介と技術連携を目的に,第3回を核融合科学研究所で開催した(平成20年7月24-25日)。会では22演題の発表があり,詳細は『第3回自然科学研究機構技術研究会集録』としてまとめた。

(5) 東海北陸地区技術職員研修の開催

 東海北陸地区における大学等の技術職員の技術交流と向上を目的に毎年当番校により行われている技術研修で,平成20年度は自然科学研究機構岡崎3機関が担当し,物理・化学コースを開催した(平成20年9月2日(火)-4日(木))。全体で15名の参加者があり,講義「大学共同利用機関と技術課」と実習「炭素薄膜の製作,加工,観察」を担当した。課の実習コースに1名を受け入れ,生物系の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる炭素薄膜を製作し,薄膜のFIB装置加工,透過電子顕微鏡を使った簡易的な炭素薄膜の厚み計測,膜面の観察などの実習を行った。

(6) 研修会等の受講と参加

 高エネルギー加速器研究機構技術職員シンポジウム(高エネルギー加速器研究機構,1名),京都大学・大阪大学・神戸大学連携シンポジウム(大阪大学,4名),天文学に関する技術シンポジウム(国立天文台松本,2名),国際規制物質の使用に関する申請等の講習会(大阪,1名),国立大学法人動物実験施設協議会(沖縄,1名),サル取扱い事前講習会(東京,1名),日本神経科学大会(東京,1名),超高圧連携ステーション国際ワークショップ(東京,1名),日本分光学会(東北大学,1名),電子顕微鏡の使用法に関する講習課(東京,1名),ライフサイエンス分野の特許セミナー(名古屋大学,2名),予防衛生協会シンポジウム(東京,2名),秋田大学総合技術部研修(秋田大学,1名),総合技術研究会(京都大学,1名)に参加し,業務の研究支援力の強化を図った。

(7) 放送大学利用による専門技術研修の受講

 研究の高度化と多様化の進むなかで技術職員の研修は重要な課題である。今回研修科目として (1) 脳科学の進歩(2名),(2) 人体の構造と機能(2名),(3) 初歩からの生物学(2名),(4) 物質・材料工学と社会(1名),(5) 光と電磁場(1名),(6) 社会技術概論(1名),(7) 実験科学とその方法(1名)を選び,10名が受講した。

(8) 科学研究費補助金(奨励研究)の採択

 業務を展開,推進していくための問題意識の養成,その解決のための計画および方法の企画能力の養成,さらにはその表現力と説明力の養成を通じて,業務上の技術力の総合的な向上を図ることを目的に標記の申請を行い,下記の4課題の採択を得た。

 (1) 齊藤久美子:細胞内脂肪代謝産物アシルCoAの測定法の開発
 (2) 吉友美樹:2光子in vivoイメージングへの応用を指向した骨細胞染色法の開発
 (3) 福田直美:温度制御チャンバーの作製 - アフリカツメガエル卵母細胞の膜電流測定用
 (4) 石原博美:神経トレーサを用いたマウスにおける大脳基底核からの出入力経路の解析

(9) 業務のデータベース化事業の促進と表彰制度の整備

 課員の出向先研究部門での業務成果は,課内での業務報告会による共有化,技術課主催の生理学技術研究会,出向先部門での学会発表により所外に発信されているが,より広く活用され,即時的に発信するために,優れた業務成果をデータベース化する事業を技術課が研究部門と進め,その一部をすでに技術課ホームページで試験運用しているが,今年度から,その編集を技術班長による専任とし,その更新を進めた。こうした事業の推進のなかで,優れたデータベースには生理学実験技術データベース賞として表彰授与を所長より行った。こうした事業の推進により,研究者との連携を深め,業務の活性化を進めた。

(10) 安全衛生技能講習等の受講と参加

 研究所の安全衛生を課業務として充実するために,第1種衛生管理者講習(名古屋,1名),エックス線作業主任者技能講習(名古屋,1名),高圧ガス製造保安責任者講習(名古屋,1名),防火管理者講習(岡崎,2名),職場巡視セミナー(名古屋,2名)を受講した。

(11) 岡崎3機関技術課長会と機構技術会議の開催

 岡崎3研究所の動向の意見交換を,事務センターの総務課長,施設課長を交え毎月1 回開催している。また核融合科学研究所,時に国立天文台も交え毎月1回の相互訪問による情報交換も行っている。

(12) 職場体験の受け入れ

 広報展開推進室の活動支援として,岡崎中学校生徒(6中学校,17名)の職場体験を受入れ,電子顕微鏡室,ネットワーク管理室,機器研究試作室,動物実験センター等の技術職員が指導した。

 

施設の運営状況

 〈1〉統合生理研究系

  (1) 生体磁気計測装置室

竹島康行

【概要】

 2008年度における生体磁気計測装置の稼動率を下表に示す。本装置における研究成果については,統合生理研究系感覚運動調節研究部門の研究活動報告に記載されている。

 装置の整備内容については,ワークステイションのハードウエアの故障による障害への対応として,1) データサーバーのハードディスクおよび電源周辺の部品交換,2) 解析装置のハードディスクおよびメモリの交換などをおこなった。この復旧に要した時間は1~2日であり,事項1については計測と解析などの研究作業を中断しておこなった。また,計測装置の障害発生の予防策として電源周辺の部品交換をおこなった。

 視覚刺激装置の液晶プロジェクタの保守部品の供給が無くなるため,これに替わるプロジェクタの選定をおこない,従来の後継機種にあたるCHRISTIE社のMirage 3000を設置した。

2008年度 生体磁気計測装置稼働率

年 月 総日数 休日数 点検日数 総利用
日数
稼働率
(%)
共同利用日数 備考(点検の主な作業内容)
所外 所内 合計
2008年 04月 30 9 2 14 74 2 3 5 定期点検,解析装置障害対応
05月 31 11 1 16 84 3 2 5 解析装置障害対応
06月 30 9 0 21 100 1 2 3  
07月 31 9 4 18 100 6 5 44 定期点検,電源障害対応
08月 31 10 2 17 89 2 1 3 サーバー障害対応
09月 30 10 0 16 80 1 2 3  
10月 31 9 2 17 85 0 16 16 定期点検
11月 30 12 0 12 67 1 9 10  
12月 31 12 0 13 68 2 6 8  
2009年 01月 31 12 3 12 75 1 6 7 定期点検,プロジェクタ設置調査
02月 28 9 1 13 72 1 11 12 サーバー (RAID) 障害対応
03月 31 10 1 9 45 5 0 5 視覚刺激プロジェクタ納入調整

* 総利用日数は,計測装置を使用した日数であり,解析装置の使用日数は含んでいない。
 また,保守作業などの計測外使用も含まない。
* 稼働率 = 利用日数/(総日数-(休日数+点検日数))×100

 

 〈2〉脳機能計測センター

  (1) 形態情報解析室

加藤勝己

【超高圧電子顕微鏡利用状況】

 今年度における超高圧電子顕微鏡共同利用実験は,合計13課題が採択され,全ての課題が実施された。これらの共同実験の成果は,超高圧電子顕微鏡共同利用実験報告の章に記述されている。超高圧電子顕微鏡の年間の利用状況を表にまとめたので下記に示す。稼働率は,利用日数と使用可能日数より求めている。本年度の主な超高圧電子顕微鏡の改良・修理としては,フィルム送り用マイクロスイッチの交換,ファラディゲージのよごれが原因と思われるビームふらつき現象修正のための点検,分解,洗浄,調整作業,イオンポンプ交換,コンデンサー絞り交換などが行われた。

2008年度 超高圧電顕月別稼働率

年 月 総日数 休日 調整日 使用可能
日数
所内利用 所外利用 稼働率 備 考
2008年 04月 30 9 5 16 4 0 4 25%  
05月 31 11 5 15 11 0 11 73%  
06月 30 9 5 16 6 0 6 38%  
07月 31 9 4 18 6 5 11 61%  
08月 31 10 5 16 5 8 13 81% 修理1日
09月 30 10 5 15 9 1 10 67%  
10月 31 9 14 8 5 0 5 63% 修理10日
11月 30 12 4 14 10 2 12 86%  
12月 31 12 4 15 2 7 9 60%  
2009年 01月 31 12 4 15 5 10 15 100%  
02月 28 9 0 19 1 18 19 100%  
03月 31 10 5 16 1 15 16 100%  
365 122 60 813 65 66 131 72%  

フィラメント点灯時間  409時間
使用フィルム枚数    7,064枚

 

  (2) 生体機能情報解析室

佐藤茂基

【概要】

 平成20年度の主な装置利用および整備状況は次の通りである。

 fMRI装置の共同利用実験は合計12課題が採択され,これら実験課題が実施された。

 リアルタイム装置本体においてはRFユニットが7月に故障し修理を行った。1月には傾斜磁場用冷却装置が故障し,その修理を行った。リアルタイム装置の所外利用者は3グループあり,装置利用の有効性から日程を重ねて使用している。

 平成20年度のfMRI装置とリアルタイム装置利用実績を別表に記す。

【機器利用率】

平成20年度fMRI装置月別稼働率

年 月 総日数 保守 稼働日 所内利用 所外利用 総計 左のうち
土日実施
稼働率 備考
2008年 04月 21 6 15 1 8 9 0 60% 冷凍機消耗品交換, マグネット中心磁場調整
05月 20 0 20 1 21 22 2 105%  
06月 21 2 19 5 13 18 0 95% H20年度第1回定期保守 液体ヘリウム補給
07月 22 0 22 2 17 19 1 84%  
08月 21 0 21 5 14 19 0 90%  
09月 20 1 19 3 15 18 2 89% 液体ヘリウム補給
10月 22 2 20 6 13 19 0 95% H20年度第2回定期保守
11月 18 2 16 11 4 15 3 84% 液体ヘリウム補給
12月 19 0 19 11 10 21 6 95%  
2009年 01月 19 0 19 8 12 20 4 95%  
02月 19 3 16 2 15 17 1 103% H20年度第3回定期保守 液体ヘリウム補給
03月 21 0 21 2 20 22 1 102%  
年間 243 16 227 57 162 219 20 92%  
  土日祝
利用
所内 10日
所外 10日

* 土・日に実施された実験は0.5日分を平日に振り替えて計算。

 

平成20年度リアルタイム装置月別稼働率

年 月 総日数 保守 使用可能
日数
所内利用
日数
所外利用
日数
利用率 備考
2008年 04月 21 1 20 0 3 3 15%  
05月 20 1 19 0 2 2 11%  
06月 21 1 20 0 4 4 20%  
07月 22 6 16 0 3 3 19% RFユニット故障
08月 21 8 13 0 2 2 15% RFユニット交換修理
09月 20 3 17 0 6 6 35% 計画停電
10月 22 3 19 0 3 3 16% 計画停電
11月 18 1 17 0 0 0 0%  
12月 19 1 18 0 0 0 0%  
2009年 01月 19 8 11 0 0 0 0% 定期点検, 冷却器故障・修理
02月 19 2 17 0 0 0 0%  
03月 21 1 20 0 3 3 15%  
年間 243 36 207 0 26 26 13%  

* 土・日に実施された実験は平日に振り替えて計算。
* 同一日に利用者が複数あった場合でも,利用日数は1日とした。

 

  (3) 多光子顕微鏡室

前橋 寛

【概要】

 平成20年度から,生体情報解析室の2光子顕微鏡イメージンググループから,多光子顕微鏡室となり,専任の技術職員1名が電子顕微鏡室から多光子顕微鏡室へ配置換えとなった。共同研究(表1参照)および特定領域研究(生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能),クレスト研究(研究課題:ベクトルビームの光科学とナノイメージング)が予定されるため,超短パルスレーザー(20年度利用時間 約1008時間 利用率51.8%)の保守契約が行われた。その他,ゼブラフィッシュ飼育用水槽棚の作製,多光子顕微鏡室のコンピュータの調査と1000baseT化,ゼブラフィッシュ飼育のための動物実験飼養保管施設設置承認申請,多光子顕微鏡室(511号室)のP1A申請,光学顕微鏡に関する勉強会(週一回),バイオイメージングの勉強会(月1回程度)参加,分子研ピコ秒レーザーによる色素および蛍光タンパクの2光子励起測光実験補助,ソニーとの共同実験の補助(パルス幅の測定,ヒータの加工,特殊レンズ接着)等が行われた。

表1 平成20年度多光子顕微鏡室共同研究

所属 研究者名 課題名
ソニー(株) 岸本拓哉 多光子励起過法を用いたイメージングによる肝臓・代謝機能の研究
関西医大 木梨達雄,片桐晃子, 片貝智哉,戎野幸彦 多光子励起過法を用いたin vivoイメージングによる免疫細胞動態の研究
東京医科歯科大 頼建光,太田英里子 2光子顕微鏡を用いた外分泌腺における開口放出・溶液輸送の分子機構と生理的機能に関する研究
九州大 兼松隆 2光子顕微鏡を用いた内分泌腺におけるホルモン分泌の分子機構と生理的機能に関する研究
北海道大 永井健二,竹本研 魚類胚を用いた細胞死の分子メカニズムの解明

 

  (4) 電子顕微鏡室(生理研・基生研共通施設)

山田 元

【概要】

 明大寺地区に設置されているJEM-1200EXの利用頻度がかなり下がった為,本機の保守契約を今季限りで解約することが決定した。これにより,保守契約により管理を行う電子顕微鏡はJEM-1010のみとなる。

 また,これまで,ナノ形態生理部門に貸与されていたJEM-1200EXが電子顕微鏡室に返還され,山手地区にて電子顕微鏡室が管理する電子顕微鏡はJEM-1010,JEM-1200EXの2台となった。

 さらに,電子顕微鏡室においては電子顕微鏡写真のデジタル化が頻繁になった為,PC,スキャナー,インクジェットプリンターをもう1セットを導入し,デジタル化作業の効率化を図った。

 他の機器に関しては,明大寺地区の走査型電子顕微鏡S-800に真空漏れ等の問題が発生したが,修理により現在は正常に稼働している。共焦点顕微鏡LSM-510,並びに臨界点乾燥器,イオンスパッター等の機器は快調に稼働している。

【研究内容一覧表】

 本年度,電子顕微鏡室を利用した研究者は生理学研究所23人,基礎生物学研究所8人,機構外は3人の計34人であった。

 下記に利用者の所属研究所,研究部門,研究内容の一覧を示す。

研究所,大学 研究部門 研究内容
生理学研究所 脳形態解析 カルシウムチャンネルの分布の解明
シナプス可塑性のメカニズムの解明
視機性眼球運動学習に伴う神経回路網再構築の解析
痛み記憶に関するamygdala神経回路網の解析
海馬シナプス可塑性の分子基盤の解析
電位依存性カルシウムチャンネルの脳局在の解析
外側膝状体神経回路網の解析
小脳神経回路網のシナプス可塑性に伴う形態変化の解析
脳の左右差についての電子顕微鏡レベルでの形態学的解析
シナプス前イオンチャンネル型神経伝達物質受容体の局在解析
ナノ形態生理 薄膜位相板の膜厚測定及び表面解析
電子顕微鏡による膜蛋白質の立体構造解析
蛋白質の電子顕微鏡観察
蛋白質,高分子の電子顕微鏡観察
細胞切片の電子顕微鏡観察
ナノカーボン上に担持したラベル化DNAの観察
生体膜 てんかん関連分子の局在解析
基礎生物学研究所 生物進化 シロイナズナの組織の観察
Observation of plant nuclei
植物発生遺伝学 葉の発生進化に関する研究
分子細胞生物学 酵母細胞におけるオートファーゴの形態観察及び関連蛋白質の局在解析のため
生殖生物学 性ホルモンによる卵巣分化誘導の分子機構
Molecule sex-differentiation of the gonads in medaka
琉球大学   魚類の生殖腺の性的可塑性の形態学的研究
大阪府立大学   DNAが形成する特殊構造の観察
藤田保健衛生大学   培養細胞の電子顕微鏡観察と位相差電子顕微鏡像との比較検討

 

  (5) 機器研究試作室(生理研・基生研共通施設)

佐治俊幸

【概要】

 機器研究試作室は多種多様な医学・生物学用実験機器の開発と改良,それに関わる技術指導,技術相談を室の役割とし,生理研・基生研の共通施設として運営されている。

 新しい研究には新しい研究機器を作るという『ものづくり』が希薄になっている状況下,一方では,研究の多様化は室に新たな役割の模索が迫られている。そうした認識のもと,『ものづくり』能力の重要性の理解と機械工作ニーズの新たな発掘と展開を目指すために,2000年度から,医学・生物学の実験研究に使用される実験装置や器具を題材にして,機械工作の基礎的知識を実習主体で行う機械工作基礎講座を開講してきた。本年も汎用工作機械の使用方法を主体に実習する初級コース(リキャップ台)と応用コース(簡易型一軸式マニュプレータ)の2コースを開講した。参加希望者は,2コース合わせ生理研6名,基生研18名で,初級コースは半日を1回,応用コースはガイダンスの後,マンツーマンで3回の講習を行った。

 また,生理学研究所では,山手地区に移転した研究室のために,2005年4月に工作室を開設し,利用者のための安全及び利用講習会を,毎年機器研究試作室が依頼を受けて実施している。

 なお,機器研究試作室の平成20年度の利用状況は,以下の通りである。

平成20年度 機器研究試作室 利用報告

機器研究試作室 部門別のべ利用状況

感覚認知情報 130名   神経シグナル 7名   NBR事業推進室 2名
認知行動発達機構 84名   機能協関 6名   神経機能素子 2名
形態情報解析室 30名   多光子顕微鏡 6名   多次元共同脳科学推進センター 2名
生体膜 28名   動物実験センター 6名   分子神経生理 2名
大脳神経回路論 26名   神経分化 5名   機能協関(樫原) 1名
ナノ形態生理 25名   技術課 4名   機能情報解析室 1名
心理生理学 9名   細胞生理 3名   生体恒常機能発達機構 1名
生体システム 8名   細胞内代謝 3名   生体情報解析室 1名
行動様式解析室 7名   脳形態解析 3名      

時空間制御 11名   形態形成 3名   脳生物学 2名
所長室付 9名   高次細胞機構 3名   RI実験センター 1名
ERATO分化全能性進化 6名   戦略室 3名   分子細胞生物学 1名
植物器官形成 5名   人工気象室 2名      
バイオリソース 4名   統合神経生物学 2名      

 

機器研究試作室利用人数表

生理研 基生研 その他 合計 延べ時間
4 22 1 0 23 23
5 41 4 0 45 70
6 39 10 0 49 67
7 38 12 0 50 114
8 43 3 0 46 84
9 34 4 0 38 47
10 58 1 0 59 96
11 23 4 0 27 52
12 33 2 0 35 33
1 22 0 0 22 25
2 26 9 0 35 43
3 26 4 0 30 47
合計 405 54 0 459 706

 

機器研究試作室利用機器表(件数)

フライス盤 ボール盤 横切盤 コンタ-マシン NCフライス盤 旋盤 ベルトグラインダ 切断機 その他
4 8 3 5 7 1 4 0 1 5 34
5 17 8 13 11 1 11 0 5 10 76
6 15 11 15 15 0 10 3 6 13 88
7 28 16 17 15 2 19 10 13 13 133
8 21 11 4 12 0 22 2 1 5 78
9 12 7 9 12 1 5 1 4 11 62
10 14 9 17 10 1 7 3 2 8 71
11 9 7 6 8 5 5 2 2 9 53
12 14 4 8 4 1 7 0 2 7 47
1 7 4 9 6 0 1 0 4 6 37
2 11 5 6 7 0 3 1 2 5 40
3 13 11 8 5 0 8 1 4 5 55
合計 169 96 117 112 12 102 23 46 97 774

 

 〈3〉情報処理・発信センター

  (1) ネットワーク管理室

吉村伸明,村田安永

【概要】

 年度初頭に生体情報解析室は二分され,2光子顕微鏡イメージンググループは多光子顕微鏡室となり,コンピューター・ネットワークグループはネットワーク管理室として情報処理・発信センターに移った。ここでは後者の報告を行う。

 生理学研究所における当施設の利用形態は,生体情報解析システム(後述),情報サービス(e-mail, WWW等),プログラム開発及びメディア変換などに分類することができる。また,これらを円滑に運用していくためには,所内LANの管理,整備や情報セキュリティの維持も重要である。このような現状をふまえたうえで,岡崎情報ネットワーク管理室とも連携しながら,施設整備を進めている。

 生体情報解析システムは,データ解析・可視化,信号処理,画像処理,数式演算,統計処理,電子回路設計などの多くのネットワークライセンス用アプリケーションを備えている。ネットワーク認証により各部門施設のPC上でこれらアプリケーションが供用できる。登録者は106名で,研究推進のための積極的な利用がある。

 生理学研究所のネットワーク利用状況は,メール登録者が481名。WWW登録者が69名。LANの端末数が2,003台。VPNサービスは53回/週,147時間/週の利用があった。

 所外からのメール受信数は15,000通/週。所外へのメール発信数は13,000通/週。WWWは4,500台/週の端末から86,000ページ/週の閲覧があった。

 

 〈4〉岡崎共通研究施設

  (1) 動物実験センター

伊藤昭光,廣江 猛,窪田美津子

【概要】

 本年度は,明大寺地区陸生動物室の地下SPF飼育室の本運用に向けての準備を進めるとともに,一般飼育室及び実験研究棟飼育室・実験室等の病原微生物対策とクリーン化を推し進めた。また,霊長類遺伝子導入実験施設の立ち上げに伴い,明大寺地区の小動物検疫室が使用できなくなったため,マウス検疫室の移設,一般飼育室の改修,イヌ運動場の改修等を行った。次年度には更に,小動物受理室,緊急時用一時飼育室の設置も計画している。

 明大寺地区・一般飼育室のクリーン化をはかるために,昨年行われた一斉微生物モニタリングで,病原微生物(MHV,Mycoplasma pulmonis,Bordetella bronchiseptica)が検出された。感染症対策委員会の決定により一般飼育室はMinimum requirementカテゴリーA, Bの病原性微生物がいない環境を目指すことになり,汚染のあった6飼育室について,飼育室および動物のクリーンアップを行った。クリーンアップ後は,一般飼育室でも3ヶ月に1度の微生物モニタリングを義務づけた。

 実験動物の授受に関し,年間でのべ73件の導入と71件の供与があった。平均すると毎週3件の授受が行われており,それに伴う条件や書類の確認,ユーザーへのアドバイスに費やされる時間が増大している。

 尚,本年度には大きな人事異動があり,2名の技術職員が移動し,1名が補充されることとなった。SPF飼育室の本運用や微生物モニタリングなど,センター業務が広がりを見せる中,技術職員の負担が増す傾向にあるため,人の配置や業務の見直しなどの必要性を感じている。

【受精卵凍結・クリーンアップ事業】

 実施件数としては,明大寺および山手とも合わせて受精卵凍結保存がのべ41件,クリーンアップ兼受精卵凍結保存18件,過去に当センターで受精卵凍結した系統の融解・移植の依頼5件を行った。

 また病原微生物汚染のクリーンアップを行い,クリーンアップ兼受精卵凍結保存6件,融解・移植6件,受精卵凍結保存1件を行った。

【明大寺地区陸生動物室】

 平成20年度の飼育室利用部門数は,19部門(生理研12部門,基生研5部門,統合バイオサイエンスセンター1部門,共通研究施設1部門)であった。動物飼育数は,一般飼育室のクリーンアップに伴い,マウス,ラットで減少した。

 一般飼育室にカテゴリーA, Bの病原微生物がいない飼育環境を目指し,入退室方法の変更,動線の明確化,着衣の徹底などを行った。また病原微生物に汚染された飼育室の清掃消毒は外部業者に委託し,マウスのクリーンアップは当センターで行い,ラットは,NBR事業に寄託することにより,飼育室および動物のクリーンアップを完了した。平成20年7月以降,一般飼育室において,3ヶ月に1度の微生物モニタリングを行っているが,カテゴリーA, Bに該当する異常は検出されなかった。

【山手地区動物実験センター分室】

 平成20年度の飼育室利用部門数は,13部門(生理研5部門,基生研1部門,統合バイオサイエンスセンター6部門,共通研究施設1部門)であった。

 利用者講習会を毎月開催するとともに,陸生動物利用者には実務講習会を実施している。各受講者はそれぞれ40名,31名であった。

 統合バイオサイエンスセンター教授転出のため,SPF飼育室1部屋の使用が終了したので,ホルマリン燻蒸を行い部屋のクリーニングを行った。

 全SPF飼育室およびマウス一時保管室1,マウス・ラット一時保管室2の病原微生物モニタリングが,3ヶ月に1回のペースで実施され,異常は検出されなかった。

【明大寺及び山手地区水生動物室】

 平成20年度の明大寺地区は,基礎生物学研究所の耐震補強工事に伴う水生動物室の改修工事が行われたため,特に利用の集計は行っていない。耐震補強工事の終了後,飼育水槽等の設置や部門の利用が進んでいるが,センターとしての施設運用は,平成21年4月からを予定している。

 平成20年度の山手地区の利用状況は,統合バイオサイエンスセンター4部門で,基礎生物学研究所の耐震補強工事に伴う水生動物室の改修工事のため,基生研の1部門が水槽を利用している。

 8月に,塩素除去装置の配管が破損し,一時淡水を供給できなくなった。

陸生動物 部門別・動物種別搬入数(平成20年度)

          動物種
部門
明大寺地区 山手地区
マウス ラット サル マウス ラット
神経機能素子 21        
生体膜   2   791 112
機能協関 188 45      
機能協関(樫原)   5      
分子神経生理 158     1,131 2
神経シグナル       2,560 25
感覚認知情報     5    
生体システム 63   5    
認知行動発達機構 124 43 6    
脳形態解析       1,101 536
大脳神経回路論         163
形態情報解析室   17      
多光子顕微鏡室 73 4      
生殖内分泌系 932 6      
生体恒常機能 585 162      
行動様式解析室 16        
動物実験センター 219     275  
機器研究試作室 1        
形態形成 10        
統合神経生物学 80     133  
脳生物学 226 36      
細胞社会学 177        
時空間制御 63 75      
分子発生 100     533  
神経分化       217  
ナノ形態生理   59     44
分子環境生物学       161  
細胞生理       3,041 2
遺伝子改変動物作製室       549 514
生体分子情報 2        
合   計 3,038 454 16 10,492 1,398

 



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