公開日 2008.04.24

「褒められる」ことは報酬
— 脳の"喜ぶ"様子を画像で捕らえた!—

カテゴリ:プレスリリース
 生理学研究所 広報展開推進室
 

概要

子供がお母さんに褒められたり、他人から良い評判を聞いたりすると、“心”がうれしくなります。そんなとき、脳の中でいったいどうした反応が起きているのかを、生理学研究所の定藤規弘(さだとう・のりひろ)教授と出馬圭世(いずま・けいせ)大学院生のグループが解明しました。

研究グループが注目したのは、脳の中の「線条体」と呼ばれる部分。機能的核磁気共鳴機能法(fMRI)を使って男女(平均年齢21歳)の19人に、褒められる状況と、報酬としてお金がもらえる状況の二つの状況をテストして、脳の反応を調べました。すると、他人に褒められると反応する脳の部位は、お金のような報酬をもらえるときに反応する脳の「線条体」と同じ部位であることが明らかとなりました。褒められることが、実際に脳においては「喜び」となり、「報酬」としてとしてお金などと共通に受け取られていることを明らかにした世界で初めての研究成果です。

これまでの教育心理学によって、子育てなどでは「褒めると育つ」といわれています。今回の研究成果は、この「褒めると育つ」という言葉の裏づけとして、ほめられることが脳の中では「報酬」として喜びと感じられていることを明らかにしました。

本研究成果は、2008年4月24日づけの米国脳神経科学誌「ニューロン」に掲載されました。

※ なお、定藤教授は、平成20年7月26日土曜日の岡崎げんき館での市民講座『“ほめて育てる” を解き明かす! ~子どもから大人まで使える「ほめる」と「脳」の関係~(仮題)』で一般市民むけに講演させていただくことになりました。こうご期待!

【イメージ図】 実験手法

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他人に褒められる」状況と、「お金を得る」状況をテストし、脳の反応を機能的核磁気共鳴機能法(fMRI)で調べました。

【fMRI画像1】 お金を得ると反応する脳の部位

脳の中の「線条体」と言われる部位が反応している。

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【fMR画像2】 他人に褒められると反応する脳の部位

他人に褒められると、お金を得るときに反応する脳の線条体と同じ特定の部位が反応していることがわかる。

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【fMRI画像3】 fMRI画像1と画像2を重ね合わせた図

20080424_4.jpg※画像ダウンロードはこちらから。

論文情報

Neuron, Vol 58, 284-294, 24 April 2008
Processing of Social and Monetary Rewards in the Human Striatum
Keise Izuma,Daisuke N. Saito,and Norihiro Sadato

http://www.neuron.org/content/article/abstract?uid=PIIS0896627308002663