すべて

検索

非鎮静性抗ヒスタミン薬によるGIRKチャネルの活性阻害機構の解明

2019年07月16日 研究報告

 G 蛋白質結合型内向き整流性 K+ (GIRK) チャネルは神経興奮性・心拍・膵島ホルモン分泌の調節において重要な分子です。我々はこれまでに、GIRK チャネルの活性に影響する複数の小分子を見出してきました。その中のひとつは、非鎮静性抗ヒスタミン薬 terfenadine です。Terfenadine は human ether-a-go-go related gene チャネルの活性を阻害し、不整脈を誘発する可能性があることが報告されていますが、terfenadine による GIRK チャネルの影響に関する報告はまだありません。
 本研究では、電気生理実験及び分子ドッキング法を用いて、非鎮静性抗ヒスタミン薬によるGIRKチャネル活性の変化とその制御作用の鍵を握る部域の解析を行いました。その結果、terfenadine を含む複数の非鎮静性抗ヒスタミン薬は GIRK チャネル(特にGIRK1/Kir3.1)の電流を阻害することが明らかとなりました。ドッキングシミュレーション及び変異体を用いた電気生理学的解析により terfenadine 作用部位の同定を試みた結果、Kir3.1 のポア領域の pore helix の中央部、イオン選択性フィルターの背後に位置する Phe137 がこの薬による活性阻害作用に重要であることが明らかとなりました(図AとB)。さらに、Kir3.1 の Phe137 に対応する GIRK2/Kir3.2 の Ser148の変異体を用いた解析を行った結果、この位置のアミノ酸残基の側鎖の大きさが阻害作用の効果を決めることを突き止めました(図C)。
 これらの結果から、terfenadine による GIRK チャネル活性阻害作用の鍵を握る部域は、pore helix 上に位置する Phe137 であることが明らかとなりました。本研究の成果は pore helix による新規制御機構の理解と新薬開発への応用につながると考えられます。

20190716chen.jpg

共同研究者情報

Department of Biomolecular Sciences, Weizmann Institute of Science:Izhar Karbat, Eitan Reuveny
京都大学・WPI-iCeMS:上杉志成
 

リリース元

Title: Non-sedating antihistamines block G-protein-gated inwardly rectifying K+ channels
Authors: I-Shan Chen, Chang Liu, Michihiro Tateyama, Izhar Karbat, Motonari Uesugi, Eitan Reuveny and Yoshihiro Kubo
Journal: British Journal of Pharmacology
Date: May 22, 2019 Epub ahead of print
URL: https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/bph.14717
DOI: 10.1111/bph.14717

関連部門

関連研究者