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TPC3チャネルにおけるホスホイノシチド感受性の発見およびその電位依存性制御メカニズムの解明

2019年07月23日 研究報告

 ホスホイノシチドと呼ばれる細胞膜に存在する特殊な脂質分子は、細胞にとって重要なシグナル因子の1つです。ホスホイノシチドはリン酸基の位置にバリエーションがあり(図A)、細胞にとってはこの違いが全く異なる生理的意味を持ちます。例えば、4位と5位にリン酸基を持つホスホイノシチド(PI(4,5)P2)は細胞内Ca2+濃度の制御に重要ですが、3位と4位の場合(PI(3,4)P2)は細胞膜の形態変化に関与することが知られています。このように、ホスホイノシチドのわずかな違いを識別するメカニズムは、細胞が適切に働くことに非常に重要です。Two-pore型Na+チャネル(TPC)は、細胞の膜電位変化とともにホスホイノシチドによっても制御される、2つの重要なシグナルを統合する機能を持つイオンチャネルです。TPCには1から3までのサブタイプが存在しますが、これまでTPC3だけはこのホスホイノシチドへの感受性を持たないとされてきました。

 私たちの研究グループは、TPC1とTPC2と同様に、TPC3にも特定のホスホイノシチドに感受性を示すことを見出しました。興味深いことに、TPC1とTPC2はPI(3,5)P2に選択的に応答しますが、TPC3はPI(3,4)P2にも感受性を示しました。また、PI(3,4)P2のTPC3への結合は、膜電位感受性を調節するというTPCファミリーの中でもユニークなものでした。こうしたユニークなホスホイノシチド感受性と膜電位感受性の調節を実現するメカニズムを、TPC3の立体構造モデルと変異体解析実験の結果から明らかにしました(図B)。本研究は、TPCファミリーも含めた一般的なイオンチャネルにおける、異なるホスホイノシチドを認識するメカニズムの理解に寄与すると考えられます。

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※研究内容を説明したイラストが、掲載された Journal of General Physiology (2019) 151(8) の表紙を飾りました。

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科研費や補助金、助成金などの情報

本研究は日本学術振興会の科学研究費補助金による支援を受けて行われました。

リリース元

Title: Phosphoinositides modulate the voltage dependence of two-pore channel 3
Authors: Takushi Shimomura and Yoshihiro Kubo
Journal: Journal of General Physiology
Date: 2019 Jun 10
URL (abstract): http://jgp.rupress.org/content/early/2019/06/07/jgp.201812285
DOI: 10.1085/jgp.201812285

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