第35回日本疼痛学会開催の御挨拶

  
   
 第35回日本疼痛学会は、2013年7月12日と13日に、さいたま市の大宮ソニックシティで開催されます。本学会には2つの大きな特徴があります。
 1つ目は日本ペインクリニック学会との関係です。疼痛学会とペインクリニック学会の開催方法については未だ統一した見解がありません。「近年の合同開催はWorld Congress of Painの日本誘致のための特殊な位置づけだった」と考え、以前のように独立した開催を希望する会員の方もおられます。逆に「両者には重複する部分が多く、多忙な日常診療を考慮すれば合同開催がのぞましい」という考えの会員もおられます。前者は基礎研究者、後者は臨床医に多い傾向があるかもしれません。今回は、「開催地は同じだが、開催時期は1日ずらす。会計等は完全に独立させる」という、いわば中庸案とでもいった形式としました。こういう形式は今回が初めてであり、終了後に会員の皆さんの忌憚の無い率直な御意見を御伺いする事は、今後の本学会のあり方に大きな影響を及ぼすと思われます。
 2つ目は、日本口腔顔面痛学会との同時期、同一会場での開催です。これは私がたまたま両学会の会長に推薦された結果ですが、「痛み」という共通のキーワードを有しながらこれまであまり交流の無かった両学会の同時開催は、私自身は画期的な事だと自負しています。実は、「痛み」を訴える患者さんのかなりの多数を口腔顔面痛、特に顎関節痛が占めています。しかも、難治性の慢性痛が多いのです。患者さんたちが歯科、口腔外科を受診することが多いため、本学会の会員の皆さんには馴染みが薄いのですが、当然ながら口腔顔面痛は疼痛学の重要な位置を占めています。今回は独立した開催ではありますが、両学会の合同シンポジウムとして「口腔顔面痛とは何か」を開催し、懇親会も一緒に行います。これを機会に、今後、両学会の会員間の親密な連携が進むことを期待しています。
 シンポジウムとしては「痛みと痒みの神経イメージング研究」を開催します。現在は、「神経イメージング手法を用いた痛覚認知の研究」は重要なトピックスの1つとなりましたし、今後もますます発展していくと思われますが、私が20年近く前に本学会で脳波と脳磁図による研究を発表した時には全く関心を持たれませんでした。2会場で平行して口演が行われるのは本学会の伝統ですが、その頃、私が研究を発表する時には、聴衆の7,8割の方々が席を立ち別の会場に移動されていました(まるで民族大移動でした)。「もう2度とこんな学会で発表なんかするものか」と思った程でした。私はその頃、World Congress on Painではしばしばシンポジストとして招待されていましたので、日本と外国との認識の違いに呆然としたのも事実です。そんな思い出も、やはり「十年一昔」です。今回のシンポジウムが実りあるものになるようなら、腐らずに研究を続けてきた甲斐があるというものでしょう。
 さいたま市(大宮)は交通至便な町です。東京からはすぐの場所ではありますが、折角の機会ですので、是非さいたまの魅力を満喫していただきたいと願っています。
 
第35回日本疼痛学会 会長
自然科学研究機構生理学研究所
柿木隆介
         
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