平成27年度~31年度 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型) 温度を基軸とした生命現象の統合的理解(温度生物学)

「温度感覚」の体験コーナー

温感物質を皮膚に塗って、普段は意識しないからだの温度計のはたらきを感じてみましょう!

体験の手順

①休憩時間中に、温感物質(メントール又はカプサイシン)を手の甲に塗る。
②しばらく待つ。
メントールを塗ったところに冷却剤をあててみる。
④次に、カプサイシンを塗ったところにホッカイロをあててみる。

②では、塗ったところがどんな感じがするでしょう?
③④では、感じ方はどう変わるでしょう?

解説

TRPチャネル - 体の中の温度計
私たちのからだの中には温度を感じるセンサーがあります。このセンサーがいろいろな温度で活性化することで、私たちは気温や水・物の温度を感じることができるのです。例えばセンサーのひとつであるTRPV1チャネルは熱で活性化されます。 それによって私たちは“熱い”と感じることができます。一方冷やすと、ひんやりセンサーであるTRPM8チャネルが活性化されるので、私たちは“冷たい”と感じます。


熱感剤カプサイシンは、熱い温度を感じるTRPV1チャネルを活性化するので、温度が変わっていないのに熱くなったように感じてしまうのです。 カプサイシンと熱で同時に刺激するとTRPV1チャネルがより強く活性化され、さらに“熱く”、場合によっては“痛み”を感じます。


同じように、冷感剤メントールは、涼しい温度を感じるTRPM8チャネルを活性化します。 そのため、この薬剤を皮膚に塗ると温度が変わっていなくても涼しくなったように錯覚するのです。 メントールと冷たい温度で同時に刺激するとTRPM8チャネルがより強く活性化され、さらに“冷たく”感じるのです。


メントールは、ミントの主成分で歯磨き粉や湿布などによく含まれています。 カプサイシンは、唐辛子の主成分でキムチなどの韓国料理やタバスコなどにたくさん含まれています。

これ以外にも、私たちが普段使っている様々な香辛料やハーブ(ショウガ・玉ねぎ・ニンニク・胡椒・山椒・ワサビ・マスタード・オリーブオイル・オレガノ・タイム・ローズマリー・シナモン・クローブなど)に含まれている成分は様々なTRPチャネルを活性化することがわかっています。 今度食べる機会があったら、ここで学んだことを思い出しながら味わってみてはいかがでしょうか。
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