11 動物実験関連

11.1 「大学共同利用 機関法人自然科学研究機構動物実験規程」の制定について

2006(平成18)年度に、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が改訂され、それに従って「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(基準)、「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(基本指針)および「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(詳細ガイドライン) が発表された(詳細は、2006年度点検評価書 第14号参照)。自然科学研究機構においても機関内規定を全面的に改め、「大学共同利用 機関法人自然科学研究機構動物実験規程」を制定した。大きな変更点としては、

  1. 機構長の責任の明確化
  2. 動物実験室、飼養保管施設の許可制
  3. 動物実験計画書等は、機構長に提出する。審査は機構長の付託を受けて岡崎3機関動物実験委員会が行う。
  4. 実験動物の福祉の向上および動物実験の適正化の基本理念を明文化:3R(代替法の検討、実験動物数の削減、苦痛の軽減)への努力
  5. 講習会等の開催
  6. 動物実験に関しての情報公開
  7. 実験動物の定義の明確化(ほ乳類、鳥類、は虫類。両生類、魚類は実験動物に準じて扱う)。
などである。

講習会等の開催、動物実験に関しての情報公開など細部が決まっていないこともあるが、2007(平成19)年度の動物実験より、全てこの規定に従って行われている。

今後の問題点について

上記のような機関内規定の制定により、新たな岡崎3機関動物実験委員会が発足し、ほぼ1年、活動を続けてきたが、以下のような新たな問題や対応が遅れている点も目立ってきた。

  1. 新たな機関内規定の制定に伴い、専門知識を伴う事務量の増大。例えば講習会の開催・受講者の管理、動物実験に関する情報公開など
  2. 研究室に直接搬入する実験動物のクリーン度のチェック体制
  3. 動物実験室、飼養保管施設の審査後のチェック体制
などである。

また、岡崎3機関の動物実験施設が、動物実験センターと形質転換生物研究施設に分かれていることも事態を複雑にしている。これらの点を解決するため、岡崎3機関に動物実験担当責任所長を設置するとともに、動物実験委員会の下に動物実験コーディネータ室を設置することで検討が進んでいる。

11.2 動物実験センターの業務

1. 「大学共同利用機関法人自然科学研究機構動物実験規程」に基づく動物実験の実施

平成19年2月23日に機関内規程「大学共同利用機関法人自然科学研究機構動物実験規程」を定めた。本規程は、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(基準)、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(基本指針)および動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(詳細ガイドライン)に基づく規程である。

平成19年度から行われる動物実験は、すべて本規程に則った内容となり、事前に3回に分けて説明会を実施した。4月からは、新しい動物実験計画書が審査され、動物実験室および動物飼養保管施設も改めて申請許可を受けた。本年度からしばらくは動物実験委員会の整備等に注力しなければならない。

2. 明大寺地区地下SPF化

本年度は、明大寺地区地下SPF化計画の第三期工事にあたり、完了する予定である。個別換気ケージシステムによるSPF施設と実験室を併せ持つ新しいタイプの動物実験設備である。当初、2007年9月オープンを目指していたが、ソフトウェアの面で整備が大幅に遅れてしまった。そのため、山手地区SPF管理の人員を振り当てて、2008年春期稼働開始に計画を変更した。それまでの間に、利用者への説明会を開き、その上で実際に利用を希望する人たちの募集をする。

3. 新館3階クリーン化

明大寺地区の普通環境施設における病原微生物・寄生虫の清浄化を目的として、新館3階クリーン化を目指している。平成19年6月から、半年間一名胚操作技術をトレーニングし、クリーンアップ業務に備えた。本年度からクリーン化を進める予定で、第一に施設の汚染状況を調査し、その結果を踏まえて今後の清浄化方法を見極めることにする。

4. 日本実験動物学会からの基本検査項目(Minimum requirement)案

2007年11月に、日本実験動物学会が、微生物検査について基本検査項目(Minimum requirement)案を提示した。この趣旨は、実験動物の健康管理、飼育者の安全確保、施設の衛生管理のために最小限実施すべき基本検査項目を改めて周知させることである。 実験動物の特性、施設の衛生管理を考慮して、検査項目の提示に当たっては、対象とする動物を次の二種類に分けている:1.感染防御能が正常な動物と、2.免疫不全等感染防御能に欠陥があることが明らかな易感染性動物(ヌードマウスやscidマウス、TLRやサイトカインの機能欠損動物など)。

以下に、2種類の基本検査項目(Minimum requirement)案を記す。動物実験センターとしては、この案を参考にして独自のSPF施設モニタリング検査項目を定める予定である。