13 トレーニングコース
第18回生理科学実験技術トレーニングコース“生体機能の解明に向けて”-分子・細胞レベルからシステムまで-
2007(平成19)年度で第18回を迎える生理科学トレーニングコースは、7月23日(月)より7月27(金)まで生理学研究所の明大寺、山手両キャンパスにて開催された(担当:伊佐正教授)。下記のコースを設定し、受講者の公募を行ったところ、217名の応募を受けた。本来全員を採択して受講していただきたいところであるが、キャパシティに限りがあることからそのうち148名を採択して受講していただいた。
プログラム
- 7月23日(月)
13:00 所長挨拶 13:05 講演 久保義弘 生理学研究所・神経機能素子研究部門・教授 「イオンチャネル・受容体の機能制御機構と動的構造変化」 15:00 各部門の研究紹介 - 7月24日(火)-- 27日(金)
- 各コースに分かれて実習
- うち7月25日(水)18:00より交流会
実習内容
- 生物試料の位相差低温電子顕微鏡観察 (3名) %
- in situ hybridization法を用いた二重染色法 (6名)
- 遺伝子改変動物作製(マウス) (4名)
- in vitro 発現系を用いたイオンチャネル受容体の機能解析 (6名)
- 2光子顕微鏡によるバイオイメージングの基礎と応用 (3名)
- パッチクランプ法 (21名)
- スライスパッチクランプ法(基礎・応用) (13名)
- 大脳皮質ニューロンの解析(大脳皮質スライスでのホールセル記録・大脳皮質の免疫電顕観察法) (3名)
- 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング (3名)
- 摂食・飲水行動発現機構入門 (3名)
- 麻酔下動物での電気生理実験 (6名)
- 慢性動物実験法入門 (11名)
- 視知覚の脳内メカニズムの実験的解析 (4名)
- 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎 (6名)
- 脳機能画像解析入門(56名)
また、例年通りコースの終了後、受講者にアンケートをとってその意見を次回以降に活かすようにしている。主な意見は以下の通り。尚、アンケートの全内容は生理学研究所のホームページで公開されているので、そちらを参照されたい。 (http://www.nips.ac.jp/training/2007/TC2007Q.pdf) アンケート結果: 受講者 148名、うち回答者116名(回収率78%)
- 参加者の身分(%)
学部学生 11, 大学院生(修士)26, 大学院生(博士)33, 大学等の研究員(ポスドク)8, 企業の研究者7, 国立研究所などの研究者 4, 助手・講師 7, その他 3
(昨年より、助手・講師が若干減り(15→7%)、学生が増加した) - このトレーニングコースは何で知りましたか?(複数回答可)(%)
インターネット 30, 雑誌などの広告 1, 友人・知人・先生の紹介 66, ポスター 16, 以前参加したことがある 13, その他 2 (昨年とほぼ同様な傾向) - 参加動機は?(複数回答可)(%)
自分の研究レベルの向上 80, 新たな分野を研究したい 57, ほかの研究者との交流 40, 生理研や総研大に興味があったため 24, その他 3
(生理研や総研大への興味が若干増加(18→24%)) - インターネットを使った応募方法や電子メールによる連絡について(複数回答可)(%)
便利でよかった 95, 不便だった 3, やり方がわかりにくい 0, 連絡が来なくて心配だった 11, 連絡が多すぎた 0, 特になし 2
(昨年とほぼ同様な傾向) - 受講料(10,200円)は?(%)
高い 5, ちょうどよい 65, 安い 30, 無回答 0
(昨年とほぼ同様な傾向) - トレーニングコースを利用するためにかかった交通費・宿泊費は?(%)
負担が大きい 8, これぐらいはやむをえない 81, たいした負担ではない 11, 無回答 0
(「負担が大きい」が減少(15→8%)、「やむをえない」が増加(71→81%)) - 受講料・交通費・旅費の補助を研究費・研究室・会社などから受けましたか?(%) すべて自己負担 46, 部分的に(おおよそ2/3まで)補助を受けた
11, ほとんど(おおよそ2/3以上)補助を受けた 43, 無回答 0
(昨年とほぼ同様な傾向) - 講演はいかがでしたか?(複数回答可)(%)
ためになった 66, 面白かった 65, 難しかった9, 興味の無い分野で退屈だった 4, 内容が簡単でつまらなかった 0, その他 3, 無回答 1 (「難しかった」が減少(29→9%)) - 実習期間は?(%)
長い 6, ちょうどよい 70, 短い 23, 無回答 0
(「長い」(2→6%)、「短い」(15→23%)がともに増加) - 実習内容(%)
大変満足 55, 満足 40, まあまあ 5, 少し不満 0, かなり不満 0, 無回答 0
(「大変満足」が減(69→55%)、かわりに「満足」が増加(28→40%) - 交流会に関して(複数回答可)(%)
研究スタッフと交流できた 49, 他の参加者と交流できた 72, 有意義だった 41, 面白かった 31, 時間の無駄だった 1, 不参加 5, 無回答 1
アンケートの結果は驚くほど昨年と酷似しており、国内での研究者コミュニティでの評価が定着しているように思われる。このように、既に生理学研究所のトレーニングコースは国内の若手生理学研究者、神経科学者の間で広く浸透している。アメリカではMarine Biology LabやCold Spring Harborなど、実験手技を実際に学ぶコースが開催されている。しかしながらわが国ではそのようなコースは比較的まれである。生理学研究所のトレーニングコースでは、ほとんどのコースで実際に第一線の研究に用いられている実験設備を実習に提供し、実験のエクスパートが直接教えている。このようにして、新しい実験手法を紹介するだけでなく、他ではなかなか得ることができない実験のコツや実験データの解釈といったことも重要な要素となっている。若手研究者育成の重要性が指摘されている今、生理学研究所としては、今後とも研究者コミュニティの核となる研究所として、若手研究者の育成のためにこのコースをより継続、発展させていきたいと考えている。
今回の反省点としては、参加申し込みをオンラインで行えるようにしているためか、残念なことに一旦採択した後のキャンセルが目立った。代わりに不採択になった人たちのことを考えると、来年以降は安易なキャンセルが出来ないような方策を講じる必要があると感じている。