9 労働安全衛生

9.1 概要

岡崎3機関安全衛生委員会および生理学研究所安全衛生小委員会の開催、安全衛生管理者による巡視により着実な安全衛生管理が進められている。

昨年度(2007年度)、衛生管理者の資格取得が3名あり、2008年度から6名による安全衛生巡視を行い、引き続き今年度も、 (1) 毎週月曜日の、6名の衛生管理者(明大寺地区:市川班長、小原係長、伊藤(嘉)係長、山手地区:大河原班長、山口係長、前橋係長)のミーティングによる巡視の打ち合わせ、(2) 毎月第3火曜日の、安全衛生担当主幹を交えての安全衛生に関する意見交換、(3)産業医による定期的な巡視、を行い、安全衛生の改善に努めた。

昨年度末、これまでの安全衛生講習会の配布資料をまとめた「安全衛生の手引」、地震・火災を含む各種の緊急時における対応をまとめた「危機管理・対応マニュアル」、両者の英語ダイジェスト版「Guidance of “Health and Safety” Affairs」を作成したが、今年度の安全衛生講習会及び新任者オリエテーションでこれらを配布し、安全衛生教育に努めた。

職員の精神面でのケアーについては、インターネットを用いたカウンセリングの場と、月一回の対面カウンセリングの場を設けており、セクシャルハラスメントの防止については、防止委員会の下、相談員・防止活動協力員を配置し、面談と、教育ビデオを配布する等の啓蒙活動にあたった。

9.2 活動状況

今年度も、具体的な巡視目標の年間計画を策定し、山手、明大寺両地区の毎週の巡視により、安全衛生上の問題点の指摘と改善の指導を行った。その指摘、改善事項は、毎月、岡崎3機関安全衛生委員会および生理学研究所教授会において、報告した。昨年度の巡視報告の中の特記事項等を踏まえて、今年度、以下のような活動を行った。

1. 一昨年度、エチレンオキシドガス滅菌器を使用している部署に見られた肝機能検査値の異常値については、今年も、後藤産業医により、健康診断時の検査データの推移を継続して観察したが、この件と関連する問題は見られなかった。またエチレンチレンオキシドガス使用についてのガイドラインのもと、取扱いの注意を引き続き、行った。今回、小型エチレンオキシドガス滅菌器を使用している実験部門の作業環境測定も行い、安全を確認した。
2. 今年度も実験用サル委員会によるサル業務従事者を対象とした安全衛生教育講習会が、8月27日に開催され、サルを用いる研究室の新しいメンバーも含め、56名が参加し、事故防止の啓蒙に努めた。
3. 新任者に対する生理学研究所オリエンテーションを、4 月14 日に、岡崎コンファレンスセンターにて開催し、研究・実験を安全に行うための方法、試薬・設備等の使用上の注意点等の、安全衛生教育を行った。外国人には、上述の「Guidance of“Health and Safety”Affairs」を配布した。 参加者数は、54名であった。
4. 全職員を対象とした安全衛生講習会を、7月4 日に、岡崎コンファレンスセンターで行った。主たる内容は、(1)後藤産業医による、安全衛生と健康管理に関する講演、(2)安全衛生概論、(3)平成19年度巡視に基づく注意事項であった。この会で、上記の「安全衛生の手引」および「危機管理・対応マニュアル」を配布し、欠席者に対しては、後日、配布した。一部の外国人には、「Guidance of “Health and Safety” Affairs」も配布した。参加者数は、155名であった。
5. ミクロトームの刃による指の切傷事故、ガラス加工中にガラスの微少片による目への飛散事故、台車で運搬中に積み重ねた荷物の落下による軽傷事故、マウスによる咬傷事故、自動車及び自転車事故の、計6件の事故があったが、後遺症等の大事には至らなかった。これらを岡崎3機関安全衛生委員会に報告すると共に、再発を繰り返さないために、事故状況分析と防止策について、安全衛生メールを全所員に送付し、注意を喚起した。
6. 8月29日未明に岡崎市に集中豪雨があり、研究所の被害状況を調査した。その結果、漏水・停電による研究所内の被害8件と、職員自宅の被害6件が判明した。人的被害は無く、所内の機器設備についても、大きな被害はなかった。
7. 2008年9月27日の休日、明大寺研究実験棟 6 階天井から激しい漏水があり、6 階、5 階の実験室に、浸水・被水の被害が出た。空調用冷却温水配管の破損によるもので、原因は、配管の老朽化と判明した。今後の対策として、棟内のすべての老朽化した配管の取り替えが抜本的には必要であるが、予算との兼ね合いから、漏水時に直ちに止めることができるように、老朽化した各階の元バルブをまず交換する工事を行うことを決定した。また、被水を避けたい機器等については、室に漏水警報機の設置や天幕を張る等の対策を行うことを促した。
8. 耐震対策の強化として、保管庫等の耐震具による固定作業を引き続き進めた。 防災対策として、全職員への防災ヘルメットの配布、また特にエマージェンシ-キットの配布方針、帰宅困難者対策について検討した。
9. 騒音作業現場である動物実験センターの洗浄室に『耳栓着用』の指示標識を掲示し、作業安全に努めた。
10. 岡崎3機関の後藤敏之産業医による定期巡視を5月20日、9月16日に行い、(1) 液体窒素使用現場の換気の注意、(2)工作機器の使用注意標識の掲示、(3) 床配線の整理整頓の改善指導があった。
11. ホルムアルデヒドは、特定化学物質障害予防規則が改正され、健康障害の発生のリスクの高い化学物質として、第2類物質に指定された。これを受け、(1) ドラフト等の換気設備のもとでの作業、(2)防毒マスクの常備と着用、(3)作業現場の作業環境測定の検討、(4)作業記録書式の作成、(5)特殊健康診断の受診、等の指示と検討を進めた。
12. 2-メルカプトエタノールおよびこれを含有する製剤が、毒物に指定されたことを受けて、新規購入分および既に所有しているものについて、劇毒物等受入届書の提出と毒劇物等使用簿による払い出し管理を指示した。
13. 中部安全衛生サービスセンター主催の『職場巡視セミナー』に安全衛生管理者(2名)が参加し、効果的な巡視法について、理解を深めた。

9.3 課題

1. 地震対策の今後として、帰宅困難者の具体的対応策を検討しておくことが必要である。

2. ホルムアルデヒドの取り扱いが、ドラフト内で行うことができない実験においては、現状での実験室の作業環境測定を行い、その実状を把握し、効率的な対処法を検討する必要がある。

3. エチレンオキシドガス使用者の健康診断結果は、この2年間の経過観察で沈静化しているとはいえ、今後も特殊健康診断の受診、およびその度の要再検者の再検査受診を徹底させ、その結果を注意深く見守っていく必要がある。