2 国立大学法人・大学共同利用機関法人の中期目標期間の業務の実績に関する評価について

平成21年3月26日
国立大学法人評価委員会
委員長 野依 良治

1.国立大学法人評価委員会は、この度、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の中期目標期間の業務の実績に関する評価を行いました。
 今回の中期目標期間の業務の実績に係る評価については、評価結果を各法人における次期中期目標・中期計画の検討に資するものとするとともに、次期中期目標期間における運営費交付金の算定に反映させることができるようにするため、中期目標期間の終了(平成21年度)に先立ち、平成16年度から平成19年度までの4年間の業務の実績について評価を実施しました。なお、平成21年度までの6年間の業務の実績については、 中期目標期間終了後にあらためて評価結果を確定させることとしております。
 今回の評価に当たっては、各法人が行う教育研究の特性や運営の自主性 ・自律性に配慮しつつ、各法人から提出された業務実績報告書を基に、中期目標の達成状況について、法人側の自己点検・評価に基づき評価を実施 しました。このうち、教育研究の評価については、専門的な観点からきめ 細かく評価を行う必要があることに配慮して、独立行政法人大学評価・学位授与機構に評価の実施を要請し、その結果を尊重してとりまとめており ます。なお、本評価制度は、各法人間の相対比較をするものではないことに留意する必要があります。

2.平成16年度から平成19年度の教育研究の状況については、法人化を 契機として、各法人の自主性・自律性がより尊重され、運営上の裁量が高まる中で、各法人において、それぞれの特色や個性を活かして教育研究活 動が展開されてきており、全般的に中期目標の達成に向けて、中期計画を順調に実施してきていることを高く評価いたします。特に、それぞれの法人においてそのミッションに応じた工夫を図りつつ、我が国の学術研究と 研究者養成の中核を担うとともに、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、 学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、国費が投じられ 国民に支えられる機関としての役割を果たしていることが認められます。
  一方、大学院博士課程や専門職学位課程において、学生収容定員が継続 的に未充足となっている法人や、学部・研究科等における教育研究が期待 される水準にあるとはいえないとの評価結果を出された法人も見られ、今後、その改善に向けた検討が求められます。

3.業務運営については、それぞれの法人において、学長・機構長のリーダ ーシップを発揮する運営体制の整備、法人としての経営戦略の策定、戦略 的な資源配分の実施、事務の合理化、教職員の人事評価の導入、柔軟な人事制度の構築等、全般的には、法人化によるメリットを活かした改革に積極的に取り組んでおり、中期目標の達成に向けて、中期計画を順調に実施 してきていることを高く評価いたします。
  また、多くの法人において、法人化により導入された国立大学法人評価 委員会による年度評価の結果を踏まえて、課題を把握し、運営の改善に結 びつけるサイクルが有効に機能しつつあると認められます。一方で、これまでの評価結果において課題として指摘された事項に対して十分な対応が なされていない事例も見られ、今後、すべての法人において評価結果を踏 まえた改善のサイクルが確立されることが期待されます。

4.これまで当委員会では、年度評価及び中期目標期間評価により、各法人の中期目標の達成状況について評価を行ってきましたが、各法人において は、法人化前にはなかった新たな評価業務に対応するために作業負担が増加しているとの声も聞かれており、当委員会としては、第2期中期目標期間に向けてこれまでの評価の在り方を検証し、評価の効率化及び改善を図 ってまいりたいと考えております。各法人においても、自己点検・評価の作業の効率化を図っていくことが期待されます。
  また、中期計画の記載について、抽象的で具体性を欠いたものなど達成 状況の判断に苦慮するものも見られることから、次期中期計画の策定にあたっては、適宜数値目標や目標達成時期等を盛り込んで記載の具体化を図ったり、計画の進捗状況の管理を適切に行う工夫をするなど、達成状況をより明確に把握できるようにすることが求められます。

5.第1期中期目標期間も残すところあとわずかとなりました。各法人においては、それぞれのミッションを意識しつつ教育、研究、社会貢献等に努めてきているところでありますが、個々の法人の規模、特性、状況はそれ ぞれ異なっているほか、国立大学法人等を取り巻く環境も変化してきてお ります。今後は、第2期中期目標期間に向けて大学の機能別分化も視野に入れつつ、各法人において、それぞれのミッションに照らした役割を踏まえ、必要に応じ、組織や業務全般の見直しもしっかりと行っていく必要があります。

6.現在、法人の基盤的経費である運営費交付金の削減等により、各法人を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。そのような中で、各法人において経費の削減を図り経営の効率を高め、外部資金の獲得に努めながら教育研究等に取り組んでいることは評価できますが、さらなる運営費 交付金の削減による基礎的な教育研究への影響が憂慮されます。今後の教育研究の質の維持向上のためには、各法人における継続的な努力に加えて、 公的資金の充実は喫緊の課題であり、この機会にあらためて関係各位に強 く求めたいと思います。