4 学部・研究科等の研究に関する現況分析結果(生理学研究所部分の抜粋)

I 研究水準(分析項目ごとの水準及び判断理由)

1. 研究活動の状況

期待される水準を大きく上回る

[判断理由]

「研究活動の実施状況」のうち、研究の実施状況については、生理学・脳神経科学領域 のレベルの高い基礎研究を行い、平成 16 年度から平成 19 年度の4年間に英文原著論文 492 件、その他の論文 278 件を発表した。教員一名当たりの英文原著論文発表数は年平均 1.78 件になる。発表論文のうち、インパクト・ファクター(IF)10 以上の学会誌に発表した数 は 31 件で、神経科学領域の代表的な学術雑誌5誌に掲載の論文数、IF の平均は全国で5番 で、発表論文の質は非常に高いといえる。研究資金の獲得状況については、4年間で 561 件、総額 34 億 1,200 万円(うち科学研究費補助金 354 件、18 億 1,100 万円、受託研究費 74 件、12 億 100 万円等)であった。平成 16 年度から平成 19 年度までの科学研究費補助金の 新規採択件数は、それぞれ 33 件、45 件、41 件、33 件で、新規採択率は 53.2%、40.5%、 34.7%、50.8%で、全国順位は1位、2位、8位、2位と常に高位置を保っている。広報・ 宣伝活動については、平成 16 年度から平成 19 年度の4年間で 102 件だが、平成 19 年度に 広報展開推進室を設け、専任准教授を配した結果、平成 19 年度の新聞報道は 66 件と急増 したことなどは優れた成果であることから、期待される水準を上回ると判断される。

「共同利用・共同研究の実施状況」のうち、全国共同利用研究所として、全国から募集 した共同研究課題を審査し、平成 16 年度から平成 19 年度の4年間に一般共同研究 129 件、 計画共同研究 93 件を行った。各種大型設備の共同利用に基づく共同実験として 135 件(電 子顕微鏡 49 件、生体磁気計測 25 件、磁気共鳴 61 件)を行った。共同研究のきっかけを作 る生理研研究会を4年間で 99 回開催し、特定領域研究等の発足の基盤を作った。国際的研 究拠点として、生理研国際シンポジウム(法人化後4年間に7回)、日米科学技術協力に基 づく毎年研究者の派遣(4年間で9名)、グループ共同研究(同 28 回)、情報交換セミナー (同5回)を行い、多様な国際共同研究や情報交換を行った。また、生理科学技術トレー ニングコースを毎年1回開催(参加者総数 680 名)し、若手研究者の育成に努めた。この トレーニングコース参加者の満足度は、アンケート調査で平均 95%と高く、有益であった ことなどは優れた成果であることから、期待される水準を上回ると判断される。

特に、発表論文の総数、 論文引用数、競合的資金の獲得状況はいずれも高いレベルを維 持している。神経科学領域での発表論文(平成 16 年から平成 19 年)で、IF の高い雑誌に 掲載された論文数は平成 19 年に大きく増加している。共同研究、日米学術交流、若手研究 者の育成等も高いレベルを維持しており、生理学・脳研究科学の研究拠点、国際的研究拠 点として極めてレベルの高い研究活動をしているという点で「期待される水準を大きく上回る」と判断される。

以上の点について、生理学研究所の目的・特徴を踏まえつつ総合的に勘案した結果、研究活動の状況は、生理学研究所が想定している関係者の「期待される水準を大きく上回る」 と判断される。

2. 研究成果の状況

期待される水準を上回る

[判断理由]

「研究成果の状況」について、ゲノム情報解析から電位センサーをもつ新しいタンパク 質を発見したことは、情報伝達の研究分野に新しい方向性を示したものである。さらに、 分子生物学的手法とイメージング技術を合わせ、分子内構造の変化を捉えることに成功す るなど、分子・超分子から細胞への統合を目指した研究が優れた成果を上げている。細胞 から組織・器官・個体への統合を目指した研究では、2光子励起レーザー顕微鏡の技術等 を用いて、神経情報処理機構や生体恒常性機能維持機構に関して優れた成果を上げている。 また、脳と他器官との相互作用から個体への統合を目指した研究では、視野の盲点におけ る知覚的補完や皮質脊髄路の切断後の回復に関して優れた成果を上げている。さらに、新 しい技術開発(位相差電子顕微鏡や質量顕微鏡等)の研究が積極的に取り組まれており、 脳機能イメージングを人文系領域(心理学や言語学)に応用した文理融合の共同研究が推 進されている。全般的に論文の質も高く、社会的に関心が高い研究成果を上げていること などは、優れた成果である。

以上の点について、生理学研究所の目的・特徴を踏まえつつ総合的に勘案した結果、研究成果の状況は、生理学研究所が想定している関係者の「期待される水準を上回る」と判断される。

II 質の向上度

1.質の向上度

大きく改善、向上している、または、高い質(水準)を維持している

当該組織から示された事例は5件であり、そのすべてが、「大きく改善、向上している、 または、高い質(水準)を維持している」と判断された。