9 労働安全衛生

9.1 概要

生理学研究所では、安全衛生管理者や産業医による巡視と、安全衛生講習会開催と安全衛生雇入れ教育の実施で安全衛生管理を進めている。今年度は、衛生管理者の資格をさらに2名が取得し、合計9名となった。今年度の巡視担当者は、明大寺地区が市川班長、前橋係長、伊藤(嘉)係長、竹島主任、山手地区は小原課長補佐、山口係長、森係員、福田係員であった。後藤産業医による巡視も行なわれた。

生理学研究所では2004年の法人化以後、岡崎3機関安全衛生委員会の下、生理学研究所安全衛生小委員会が、職場環境や労働状況の改善を通じて、職場における職員の安全と健康を確保するように努めてきた。労働安全の諸規則は、生理学研究所のような、多種類の機器が使われ、個々の作業が多様な職場で実践するには難しい面が多々あった.しかし、安全衛生管理者の努力や職員の協力により、研究現場での安全衛生は着実に向上してきている。現在のところ安全衛生活動は順調に行われている一方、ここ数年で対応すべき問題が多様化してきている。例えば、ホルムアルデヒドの特定化学物質への指定、ケタミンの麻薬指定、レーザーを使用した機器の増加などが上げられる。また、特殊健康診断で出てきた問題点へもすみやかに対応する必要がある。これらの安全衛生管理業務は、主に技術職員によって行われている。技術課に属する技術職員の主要な業務は実験のサポートや機器開発などである。研究支援業務を行う技術課と、それに伴った事故・障害を防止する業務を統括する部署は組織上は分かれていた方が望ましいと考えられる。そこで、多様な安全管理業務に対応でき、技術課と独立した安全衛生管理室を2011年度に設置するために、今年度は、安全衛生管理室準備室を設置し専任の職員を配置した。安全衛生管理室では、以下の業務を行う予定にしている。

  1. 研究所内の安全衛生管理体制、作業環境などの点検、および改善の支援
  2. 安全衛生関係の法令の調査および安全衛生に関する効果的な情報の運用
  3. 各部署の安全管理担当者へのアドバイスや情報の提供
  4. 研究所全構成員を対象とした各種安全衛生教育の企画実施、啓蒙
  5. 機構内の他部局や監督官庁との連絡調整
  6. 安全衛生巡視ほか作業環境測定など法令遵守に必要な技術支援
  7. 法令遵守などでの迅速かつ、効率的な対処
  8. 安全衛生情報の蓄積、整理、公開、周知、長期保管情報の管理
  9. 職場の安全衛生レベルの向上と意識改革、人材育成
  10. 構成員全員で作る安全な職場を積極的にアピール

9.2 活動状況

技術課長と巡視担当者が、技術課安全衛生会議で、年間巡視計画、巡視結果を踏まえた指導や見直しなどの打合せを行った。所長、安全衛生担当主幹、技術課長は、随時打ち合わせを行いながら、安全管理を進めている。今年度の主要な活動を以下にあげる。

  1. 生理研オリエンテーションにおける安全衛生雇入れ教育
    2010年4月12日に岡崎コンファレンスセンターで行い、54名が出席した。「安全衛生の手引き」「危機管理・対応マニュアル」「Guidance of “Health and Safety” Affairs」を配布し、「研究・実験を安全に行うために」、「組換えDNA実験について」、「アイソトープ実験センター・廃棄物処理室概要」、「動物実験センターの利用について」などの講演を行った。
  2. 安全衛生講習会の開催
    2010年7月16日に岡崎コンファレンスセンターで行い、122名が出席した。高圧ガスの安全な取り扱いの詳細について、岩谷産業(株)環境保安部の高橋氏と、ヤマト産業(株)技術部の田中氏に解説していただいた。引き続いて、安全衛生概論と平成21年度安全衛生巡視に基づく注意事項についての講演を行った。
  3. 安全衛生に関するホームページの作成
    労働安全、作業環境管理、巡視などの情報、規則、マニュアル、申請書などを掲載した。来年度からは、安全衛生管理室のホームページとして運用する予定である。
  4. AED(自動体外式除細動器)の増設
    山手地区2号館玄関と、明大寺ロッジのエントランスにAEDを設置した。
  5. 事故報告
    漏水:空調機排水ドレーン詰まりにより、あふれ出た水が配管を伝い、階下へ流れ出て居室・廊下が水浸した。漏電、スリップなどの被害は無かった。サル飼育ケージに接続された給水ノズルをサルが外したため漏水が発した。他の機器などへの影響はなかった。
    けが:液体窒素保管容器から取り出した細胞保存チューブが破裂し、そのチューブ片が左手首にあたり内出血したが、大事には至らなかった。
    器具焼損:クリーンベンチ内での作業中にピペット電源コードの一部とクリーンベンチ作業台内の電気系統のコードの一部が焼損した。人への被害、他の機器への影響は無かった。同機種および同様の事例について調査した結果、他に所有者はなく、同様の事例がないことを確認した。
  6. 防災関係
    2010年10月29日に、明大寺地区、三島地区、山手地区の各地区に於いて防災訓練を実施し、放送、避難・誘導、救護、初期消火、消火器取扱等の訓練を行なった。その他、救急救命講習、自衛消防講習などに積極的に参加している。
    2010年5月に高圧ガスボンベ、保管庫やロッカー等の転倒防止対策の調査を行なった結果、明大寺地区及び山手地区に於いて多数の未固定物が見つかり、対策を進めている。

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