11 男女共同参画推進

11.1 背景

現在、社会の至るところで男女共同参画が進められているが、その基礎となっている法律は、男女共同参画社会法(平成11年法律第78号)である。その前文には、日本国憲法の“個人の尊重と法の下の平等”の実現化という原則的な考え方とともに、“少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等”という社会経済情勢の変化に対応するための必要性が述べられている。条文には、“政策等の立案及び決定への共同参画”が明記されており、その対象は国・地方公共団体のみならず民間の団体(これには企業も含まれる)における方針の立案及び決定に際しても共同して参画する機会が確保されることを求めている。

政府内では2001年に内閣府に男女共同参画局が設置されている。また政府は、男女共同参画基本計画を2000年より5年ごとに定めており、第3次の計画が2010年12月17日に閣議決定された。第3次計画では計画内容がより具体的なものとなり、特に、「第2部 施策の基本的方向と具体的施策」では、15の分野における具体的な施策を示している。その中で研究関係の分野が「第12分野 科学技術・学術分野における男女共同参画」として取り上げられている。<基本的な考え方>は次の様に述べられている。

科学技術・学術は、我が国及び人類社会の将来にわたる発展のための基盤であり、「知」の獲得をめぐる国際的な競争が激化している。我が国が国際競争力を維持・強化し、多様な視点や発想を取り入れた研究活動を活性化するためには、女性研究者の能力を最大限に発揮できるような環境を整備し、その活躍を促進していくことが不可欠である。また、科学技術・学術の振興により、多様で独創的な最先端の「知」の資産を創出することは、男女共同参画社会の形成の促進にも資する。
しかしながら、我が国の研究分野への女性の参画状況は、他の先進国と比べて依然として不十分である。女性研究者の登用及び活躍の促進を加速するため、女性研究者の出産・子育て等と研究との両立のための環境づくりや、女子学生・生徒の理工系分野の進路選択の支援を図り、各研究機関における先導的な取組の成果の全国的な普及・定着を進めることによって、研究機関が実態に応じて積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を推進することを支援するなど、科学技術・学術分野における女性の参画拡大を積極的に推進する。

さらに第3次計画では、成果目標として、女性研究者の採用目標値(自然科学系)を現在の23.1%から2015(平成27)年までに30%を目指すことがあげられている。また具体的施策1「科学技術・学術分野における女性参画の拡大」として、女性の政策・方針決定への女性参画の拡大、審査員への女性の登用、日本学術会議の女性会員比率の向上などがあげられている。具体的施策2「女性研究者の参画拡大に向けた環境づくり」では、女性研究者ネットワークの構築、勤務環境の整備等があげられている。ここでは出産・子育て期間中の研究活動を支える研究・実験補助者などの雇用の支援などが述べられている。さらに具体的施策3「女子学生・生徒の理工系分野への進学促進」が含まれている。

11.2 自然科学研究機構での取り組み

本年度、自然科学研究機構における「男女共同参画推進に関する検討会」(座長 岡田泰伸理事、生理研からは吉村教授(副座長)、井本教授が参加)が設置され、男女共同参画の実現に向けての取り組みを行っている。本年度は、自然科学研究機構を構成する各研究所の男女構成比、関連学会および国立大学法人の男女構成、すでに男女共同参画を推進している他大学の取り組み等を調査し、生理学研究所の現状分析を進めた。この分析結果を基に、女性も男性も研究と家庭が両立できる、ワークライフバランスを考えた職場環境の実現に向けて、意識改革、環境整備、就労支援を柱としたアクションプランを作成し、長期的なビジョンでその実現に努力する。

11.3 生理学研究所の現状と取り組み

現状分析

生理学研究所の常勤職員における女性の割合は、教授が6%(16名中1名)、准教授が6%(16名中1名)、助教が13%(30名中4名)、教員全体で10%である。非常勤研究員の女性の割合は34%(70名中24名)、大学院生は40%(52名中21名)である。また、人事公募の際の女性応募者の割合については、2008~2009(平成20~21)年度で、教授人事は女性応募者なし、准教授は6%(全応募者17名、うち女性1名)、助教は6%(全応募者18名、うち女性1名)であった。

将来予測

上述の分析結果から、役職が上がるに従って女性が占める割合が減る傾向が強いと考えられる。国立大学全体における教員においてもほぼ同様な女性比率を示しているため(教授7.2%、准教授12.7%、助教 16.9%、国立大学における男女共同参画推進の実施に関する第6回追跡調査報告書より抜粋)、現時点での日本国内の教育・研究職に共通する、一般的な傾向であると思われる。生理学研究所の主な関連学会は日本生理学会と日本神経科学会である。日本生理学会の女性会員の比率は、一般会員14.6%、学生会員28.5%である。日本神経科学会においては、一般会員13.1%、学生会員19.0%である。日本神経科学会では、近年、一般会員と学生会員における女性比率がかなり接近している。生理学研究所においても、将来、非常勤研究員や大学院生が常勤職員のポジションに応募する年齢に達する頃には、常勤職員における女性比率が上がっていくことが期待される。

取り組み

生理学研究所では、人事選考の際に、業績等の評価が男女を問わず同等の場合には、女性の候補者を採用することを教授連絡会で内部確認した(2010年4月)。また、人事公募要項に「生理学研究所は男女雇用機会均等法を遵守し、男女共同参画推進に取り組んでいます。」と明記することとした(2010年9月)。


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