生理学研究所年報(第31巻)

 生理学研究所年報 第31巻
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技術課

大庭明生,大河原浩

【概要】
 今年度,大庭明生技術課長の定年退職に伴い,大河原浩研究系技術班長が技術課長へ昇任した。技術課組織の強化と研究支援体制の充実発展のため,4月1日付けで次の昇任および異動があった。小原正裕統合生理研究系技術係長は技術課長補佐(研究系技術班長)へ,戸川森雄発達生理学研究系技術主任は同技術係長へ,竹島康行統合生理研究系技術係員は同技術主任へ,齊藤久美子発達生理学研究系技術係員は同技術主任へ,吉村伸明脳機能計測技術係員は情報処理・発信技術主任へ,廣江猛動物実験技術係員は同技術主任へ昇任した。山口登脳機能計測技術係長は細胞器官研究系技術係長へ,前橋寛電子顕微鏡技術係長は脳機能計測・支援技術係長へ,永田治発達生理学研究系技術係長は情報処理・発信技術係長へ,加藤勝己工作技術係長は行動・代謝分子解析技術係長へ,福田直美生体情報研究系技術係員は細胞器官研究系技術係員へ,森将浩発達生理学研究系技術係員は生体情報研究系係員へ,三寳誠生体情報研究系技術係員は行動・代謝分子解析技術係員へ,佐藤茂基脳機能計測技術係員は統合生理研究系技術係員へ,佐治俊幸工作技術主任は脳機能計測・支援技術主任へ,山田元電子顕微鏡技術係員は脳機能計測・支援技術係員へ,村田安永脳機能計測技術係員は情報処理・発信技術係員へ異動した。また,加藤勝己行動・代謝分子解析技術係長は多次元共同脳科学推進技術係長併任となった。小原正裕技術課長補佐はナノ形態研究部門担当,永田治情報処理・発信技術係長は機能協関研究部門担当も命ぜられた。山口登細胞器官研究系技術係長は大脳神経回路論研究部門,加藤勝己行動・代謝分子解析技術係長は形態情報解析室,佐藤茂基統合生理研究系技術係員は生体システム研究部門担当を命ぜられた。なお,今年度,技術課業務分掌規則が一部改定された。

 課の研究活動への寄与と貢献を一層進めるため下記の事業を実施した。

①生理科学実験技術トレーニングコースでの技術指導

 生理学研究所が毎年主催し,実施している生理科学実験技術トレーニングコースで,『生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング』をテーマに,『生体アンプとバスチェンバーの作製』と『C言語によるPICプログラミング』の2コースを企画した。

②生理学技術研究会の開催

 全国の大学等技術職員の技術連携と交流を目的に第32回を,基礎生物学研究所・技術課と合同で平成22年2月18日−19日の2日間にわたり開催した。会では,口演発表が27題,ポスター発表が44題あり,研修講演として『進化学における技術革新と今後の展望』(長谷部光泰,基礎生物学研究所生物進化研究部門教授)を行った。これらの報告は『生理学技術研究会報告(第32号)』にまとめた。

③奨励研究採択課題技術シンポジウムの開催

 時代要請に対応した技術認識と向上に立った技術職員の業務の社会的開示を推進するために奨励研究採択者による第5回の報告会(平成22年2月19日)を14演題で行った。この報告は『生理学技術研究会報告(第32号)』にまとめた。

④自然科学研究機構技術研究会の参加

 自然科学研究機構技術職員の業務の紹介と技術連携を目的に,第4回を基礎生物学研究所で開催した(平成21年6月25−26日)。会では21演題の発表があり,詳細は『第4回自然科学研究機構技術研究会集録』としてまとめた。

⑤東海北陸地区技術職員研修等の受講と参加

 東海北陸地区の大学等の技術職員の技術交流と向上を目的に毎年当番校により行われている技術研修で,電気・電子コース(福井大学)を1名が受講した。

 また,高エネルギー加速器研究機構技術職員シンポジウム(高エネルギー加速器研究機構,1名),電子顕微鏡使用法に関する講習会(東京,2名,浜松,3名),MRIに関する講演会(東京,2名),日本実験動物環境研究会(東京,1名),日本神経科学大会(名古屋,2名),天文学に関する技術シンポジウム(国立天文台水沢,1名),日本肥満学会(浜松,1名),日本分光学会(東北大学,1名),糖鎖に関する研究会(大阪,1名),著作権に関する講習会(東京,1名),産学官人材育成セミナー(東京,1名),情報セキュリティーに関する説明会(東京,1名),アプリケーション利用者セミナー(名古屋,2名)などに参加し,業務の研究支援力の強化を図った。

⑥放送大学利用による専門技術研修の受講

 研究の高度化と多様化に対応するため技術職員の研修を推進している。今回放送大学研修科目としてバイオサイエンスで豊かな暮らし(4名),神経心理学(2名),情報科学の基礎(1名),科学的な見方考え方(1名),疾病の成立と回復促進'05(1名),都市と防災(1名)の6科目を選び10名が受講した。

⑦科学研究費補助金(奨励研究)の採択

 業務を展開,推進していくための問題意識の養成,その解決のための計画および方法の企画能力の養成,さらにはその表現力と説明力の養成を通じて,業務上の技術力の総合的な向上を図ることを目的に標記の申請を行い,下記の2課題の採択を得た。

 (1) 齊藤久美子:HPLCによる視床下部のアシルCoAの個別定量
 (2) 石原博美:痛覚伝達を担うラット脊髄ニューロンの形態学的特徴の解析

⑧業務報告会とデータベース化事業の促進,および表彰制度の整備

 課員の出向先研究部門での業務成果は技術課業務報告会で報告され,情報の共有化が図られている。また,その成果は技術課主催の生理学技術研究会,出向先部門での学会発表により所外に発信されているが,より広く活用され,即時的に発信するために,優れた成果をデータベース化する事業を技術課が研究部門と進め,その一部を技術課ホームページで公開している。今年度も,その編集を技術班長による専任とし,その更新を進めた。こうした事業の推進のなかで,優れたデータベースにはデータベース賞として表彰授与を所長より行った。こうした事業の推進により,研究者との連携を深め,業務の活性化を進めた。

⑨安全衛生技能講習等の受講と参加

 研究所の安全衛生を課業務として充実するために,第1衛生管理者講習(岡崎,2名),第5回安全衛生情報交換会(土岐,2名),第25回大学等環境安全衛生協議会(長崎,1名),化学物質管理セミナー(岡崎,2名),自衛消防業務講習会(名古屋,1名)を受講した。

⑩岡崎3機関技術課長会と機構技術代表者会議の開催

 岡崎3研究所の動向の意見交換を,事務センターの総務課長,施設課長を交え毎月1回開催した。また核融合科学研究所,国立天文台も交え毎月1回,相互訪問またはテレビ会議による情報交換も行った。

⑪他機関技術職員の研修受入れ

 大学共同利用機関として他機関技術職員(1高専,1名)の研修を受入れ,電子顕微鏡室の技術職員が指導した。

⑫職場体験の受入れ等

 広報展開推進室の活動支援として,岡崎中学校生徒(6中学校,17名)の職場体験を受入れ,電子顕微鏡室,ネットワーク管理室,機器研究試作室,動物実験センター等の技術職員が指導した。

 

施設の運営状況

 〈1〉統合生理研究系

  (1) 生体磁気計測装置室

竹島康行

【概要】
 2009年度における生体磁気計測装置の稼動率を下表に示す。本装置における研究成果については,統合生理研究系感覚運動調節研究部門の研究活動報告に記載されている。

 装置全般の保守については,二ヶ月毎の定期点検の他に,計測システムのソフトウエアとOSの更新をおこない計測手順の改善をおこなった。解析システムについてもOSの更新を順次おこなう予定である。計測および解析のワークステイションで発生した経年劣化によるビデオボードとハードディスの障害部品の交換をおこなった。

 解析環境の整備については,ファイルサーバーのRAIDシステムの容量増加をおこない,従来の約1.5倍のファイルを扱えるようになった。新たに,PCで動作する解析システムを導入した。これはMEGのメーカーが開発したもので,現在使用しているワークステイションのソフトウエアと同等の機能を有しておりオフラインでの解析も可能である。

2009年度 生体磁気計測装置稼働率

年 月 日数 休日数 点検日数 利用
日数
稼働率
(%)
延べ利用者数 共同利用日数 備考(保守点検の作業内容)
(所内対応数)
2009年 04月 30 9 1 9 45 10 7(6) 定期点検
05月 31 13 1 9 53 12 2(1) 計測WS修理(ビデオボード)
06月 30 8 2 18 90 20 5(4) 定期点検
07月 31 9 1 21 100 24 0(0) SSPデータ調査
08月 31 10 1 14 70 15 8(8) NISサーバ障害対応
09月 30 11 2 15 88 15 5(5) 定期点検,計測システム更新
10月 31 10 1 17 85 18 11(10) RAIDシステム容量増加
11月 30 11 1 9 50 10 6(3) 定期点検
12月 31 12 1 15 83 17 15(9)  
2010年 01月 31 12 1 19 106 21 12(3) 定期点検,解析WS修理
02月 28 9 0 18 95 21 8(4)  
03月 31 9 1 9 43 11 0(0) 定期点検,解析システム導入

* 利用日数は,計測装置を使用した日数であり,解析装置の使用日数は含んでいない。
 また,保守作業などの計測外使用も含まない。
* 稼働率 = 利用日数/(日数−(休日数+点検日数))×100

 

 〈2〉脳機能計測センター

  (1) 形態情報解析室

加藤勝己

【超高圧電子顕微鏡利用状況】

 今年度における超高圧電子顕微鏡共同利用実験は,合計14課題が採択され,全ての課題が実施された。これらの共同実験の成果は,超高圧電子顕微鏡共同利用実験報告の章に記述されている。超高圧電子顕微鏡の年間の利用状況を表にまとめたので下記に示す。稼働率は,利用日数と使用可能日数より求めている。今年度は,故障が多発し,休日利用があったため稼働率が100%を超える場合があった。なお,調整日は,定期調整(含清掃)日と修理・改良等に要した日数を合わせた数である。本年度の主な超高圧電子顕微鏡の改良・修理としては,フィルムナンバーカウンタの交換,サイドエントリーホルダーの点検,分解,洗浄,調整作業,500lおよび1000lイオンポンプおよび電源の交換,蛍光板,ピントスクリーンの交換,レンズ電源部冷却用ファンおよび,ヒートセンサーの交換,修理作業能率化のための電源室内配置換え,高圧タンク内フィラメント位置,角度調整用駆動部の分解,調整,修理,およびフィラメント交換,可動対物絞り及びコンデンサ絞り交換,高圧タンク内高圧用コンデンサの容量低下,絶縁不良に伴うコンデンサ交換及びバランス組み換え調整,高圧タンク内ダイオード不良に伴うダイオード交換,写真撮影用マイクロスイッチの交換などが行われた。

2009年度 超高圧電顕月別稼働率

年 月 総日数 休日 調整日 使用可能
日数
所内利用 所外利用 稼働率 備 考
2009年 04月 30 9 10 11 4 2 6 55%  
05月 31 13 9 9 7 0 7 78%  
06月 30 8 19 3 3 0 3 100% 修理10日
07月 31 9 21 1 0 0 0 0% 修理1日
08月 31 10 20 1 1 0 1 100% 修理20日
09月 30 11 5 14 6 2 8 57%  
10月 31 10 6 15 4 5 9 60%  
11月 30 11 10 9 4 3 7 78% 修理1日
12月 31 12 14 5 2 5 7 140% 修理14日
2010年 01月 31 12 0 19 1 19 20 105%  
02月 28 9 4 15 1 12 13 87%  
03月 31 9 4 18 0 18 18 100% 修理2日
365 123 122 120 33 66 99 83%  

フィラメント点灯時間  452時間
使用フィルム枚数    6,118枚

 

  (2) 生体機能情報解析室

佐治俊幸,竹内佐織,佐藤茂基

【概要】
 平成21年度の主な装置利用および整備状況は次の通りである。

 リアルタイム装置は,電源のユニットの装置本体用ブレーカーが故障し,交換部品の入手が困難で長期間にわたり装置が使用できない状況があった。9月にシム装置の電源部分が故障し,一部部品を交換して対応したが10月に再度故障した為,シム装置ユニットを代替品と交換して対応した。

 リアルタイム装置の所外利用者は3グループあり,装置利用の有効性から日程を重ねて使用している。

 平成21年度のリアルタイム装置利用実績を別表に記す。

【機器利用率】

平成21年度リアルタイム装置月別稼働率

年 月 総平日数 保守 使用可能日数 所内利用日数 所外利用日数 利用率 備考
2009年 04月 21 0 21 0 0 0 0%  
05月 18 0 18 0 0 0 0%  
06月 22 13 9 0 0 0 0% 装置ブレーカー故障 (6/16~8/10)
07月 22 22 0 0 0 0 -
08月 21 6 15 0 0 0 0%
09月 19 1 18 0 3 3 17% シム電源交換
10月 21 1 20 0 0 0 0% シム電源交換
11月 19 0 19 0 2 2 11%  
12月 19 0 19 0 2 2 11%  
2009年 01月 19 2 17 0 0 0 0%  
02月 20 0 20 0 2 2 10%  
03月 22 0 22 0 3.5 3.5 16%  
年間 243 45 198 0 12.5 12.5 6%  

* 土・日に実施された実験は0.5日分を平日に振り替えて計算。
*同一日に利用者が複数あった場合でも,利用日数は1日とした。

 

  (3) 多光子顕微鏡室

前橋 寛

【概要】
 平成21年度は共同研究(表1参照)および特定領域研究(生体膜トランスポートソームの分子構築と生理機能),CREST研究(研究課題:ベクトルビームの光科学とナノイメージング)が行われた。

 多光子顕微鏡の光源は近赤外 (720nm~910nm) 超短パルスレーザーである。パルス発振(モードロック)させる時や波長を変更する時はレーザー内部のスリット幅やプリズム位置,ネガティブチャープ(パルス幅補正用)内部のプリズム位置を変更する。その為,レーザーの光路調整が必要となり,IRスコープによる導入用鏡の角度および位置の調整が必要となり,レーザー起動毎に調整をおこなった。

 今年度のCREST研究では正立の多光子顕微鏡システムが導入され,既設の近赤外超短パルスレーザー光をハーフミラーにより2つに分けて実験が行われた。そのパルス光およびLDレーザー光(473nm)をベクトルビームに変換して光学顕微鏡への導入実験をサポートした。

 また,蛍光ビーズによる分解能測定をおこなった。

 昨年度に引き続き,光学顕微鏡に関する勉強会(週一回),バイオイメージングの勉強会(月1回程度)参加,分子研ピコ秒レーザーによる色素および蛍光タンパクの2光子励起測光実験の補助等を実施した。

表1 平成21年度多光子顕微鏡室共同研究

所属 研究者名 課題名
ソニー(株) 岸本拓哉 多光子励起過程法を用いたイメージングによる肝臓・代謝機能の研究
関西医大 木梨達雄,片桐晃子,片貝智哉,戎野幸彦 多光子励起過程法を用いたin vivoイメージングによる免疫細胞動態の研究
東京医科歯科大 頼建光,太田英里子 2光子顕微鏡を用いた外分泌腺における開口放出・溶液輸送の分子機構と生理的機能に関する研究
群馬大学 原田彰宏,國井政孝 2光子顕微鏡を用いた外分泌腺における開口放出・溶液輸送の分子機構と生理的機能に関する研究
広島大学 兼松隆 2光子顕微鏡を用いた内分泌腺におけるホルモン分泌の分子機構と生理的機能に関する研究

 

  (4) 電子顕微鏡室(生理研・基生研共通施設)

山田 元

【概要】
 明大寺地区に設置されているJEM-1200EXは保守契約を昨年度で解約し,電子顕微鏡室にて主体的な保守を実施した。しかし,機器の老朽化より,様々な部分に不具合が見られ,大幅な改良が必要となっている。

 山手地区にて電子顕微鏡室が管理していた電子顕微鏡のうちJEM-1200EXは十分な動作が確認できなかったため,本機は他大学への移管を行った。

 もう一台のJEM-1010に関しては2k×2kのCCDカメラを新たに導入し,利用環境の大幅な改善が見られた。

 他の機器に関しては,明大寺地区の走査型電子顕微鏡S-800に関してはオーバーホールを行い,快調に動作している。JEM-1010,S-800並びにその試料作製機器に関しては多くの利用者により利用がなされている。

 共焦点顕微鏡LSM-510,並びに蛍光顕微鏡に関しての利用は例年通りである。

【研究内容一覧表】

 本年度,電子顕微鏡室を利用した研究者は生理学研究所37人,基礎生物学研究所12人,機構外は3人の計52人であった。

 下記に利用者の所属研究所,研究部門,研究内容の一覧を示す。

研究所,大学 研究部門 研究内容
生理学研究所 脳形態解析 神経伝達物質受容体の脳局在解析
Left-light asymmetry in hippocampus
Determining the morphological feature governing physiological aspects of synaptic transmission
Immunohistochemical localization of low threshold channels
Long term memory formation in motor learning
To observe the synapses in the lateral capsular part of central nucleus of amygdala
脳が左右非対称であることの生物学的基盤の確立
シナプスの形態学的解析
神経伝達物質受容体やイオンチャンネルの局剤と機能
凍結割断レプリカ標識法を用いた共同研究
脳の左右差が形成される仕組みを解明する目的としてb2mKOマウス及びTARP1KOマウスの微細構造を解析する
Septin分子の脳内局在を免疫電子顕微鏡法を用いて明らかにする
To investigate the mechanisms underlying short-and log-term motor learning and memory
ナノ形態生理 位相差電子顕微鏡観察のための試料調整・予備観察
血管還流唾液腺の細胞結合の形態観察
タンパク質などのネガティブ染色像の取得
位相差電顕用位相番のカーボン膜の厚さ測定のため
生体膜 てんかん関連分子の局在解析
形体情報解析室 小腸上皮下線繊維細胞の形態学的研究
多光子顕微鏡室 ベクトルビームの評価
神経機能素子 膜機能蛋白質の細胞内局在の解析
大脳神経回路論 大脳皮質の神経回路の解析
細胞生理 オキシレンによるオキシレン神経細胞活動調整
機能協関 網膜におけるバイオ分子センサーの発現を免疫染色法によって確認する
メラノプシン遺伝子の遺伝子銃によるラット網膜組織培養への導入
基礎生物学研究所 共生システム マメ科植物都草の茎頂の形態解析
植物発生遺伝学 葉の発生進化に関する研究
形態形成 アフリカツメガエル初期胚発生における神経管閉鎖過程の分子機構の解析
植物器官形成学 植物のメリステム付近の観察を行う
高次細胞機構 高等植物におけるタンパク質の細胞内局在の解析
生殖生物学 性的可塑性の分子メカニズムに関する研究
Molecule sex-differentiation of the gonads in medaka
琉球大学   魚類の生殖腺の性的可塑性の形態学的研究

 

  (5) 機器研究試作室(生理研・基生研共通施設)

佐治俊幸

【概要】
 機器研究試作室は多種多様な医学・生物学用実験機器の開発と改良,それに関わる技術指導,技術相談を室の役割とし,生理研・基生研の共通施設として運営されている。

 新しい研究には新しい研究機器を作るという『ものづくり』が希薄になっている状況下,一方では,研究の多様化は室に新たな役割の模索が迫られている。そうした認識のもと,『ものづくり』能力の重要性の理解と機械工作ニーズの新たな発掘と展開を目指すために,2000年度から,医学・生物学の実験研究に使用される実験装置や器具を題材にして,機械工作の基礎的知識を実習主体で行う機械工作基礎講座を開講してきた。本年も汎用工作機械の使用方法を主体に実習する初級コース(リキャップ台)と応用コース(パッチクランプ用チェンバー)の2コースを開講した。参加希望者は,2コース合わせ生理研13名,基生研14名で,初級コースは半日を1回,応用コースはガイダンスの後,マンツーマンで3回の講習を行った。

 本年度の委員会では,従来より不明確であった委員会規定を明文化し,機器研究試作室委員会の立場と存在を明確な物とした。

 また,生理学研究所では,山手地区に移転した研究室のために,2005年4月に工作室を開設し,利用者のための安全及び利用講習会を,毎年機器研究試作室が依頼を受けて実施している。

 なお,機器研究試作室の平成21年度の利用状況は,以下の通りである。

平成21年度 機器研究試作室 利用報告

機器研究試作室 部門別のべ利用状況

認知行動発達機構 128名   電子顕微鏡室 9名   多光子顕微鏡 3名
感覚認知情報 112名   機能協関 9名   動物実験センター 2名
ナノ形態生理 39名   神経分化 8名   生体恒常機能発達機構 2名
形態情報解析室 18名   行動様式解析室 7名   NBR事業推進室 1名
心理生理学 18名   神経シグナル 7名   神経機能素子 1名
生体システム 17名   多次元共同脳科学推進センター 7名   生殖内分泌系発達機構 1名
大脳神経回路論 10名   脳形態解析 4名   分子神経生理 1名
広報展開推進室 13名   生体膜 3名      

時空間制御 35名   所長室付 2名   植物器官形成 1名
脳生物学 35名   個別研究(星野) 2名   分析室 1名
形態形成 24名   統合神経生物学 2名   植物発生遺伝学 1名
ERATO分化全能性進化 8名   共生システム 2名      
生物進化 5名   大型スペクトル 1名      

 

機器研究試作室利用人数表

生理研基生研合計延べ時間
44034376
54244684
6431053100
7441357122
828245276
932164864
102793658
1128103877
122673345
12743151
22483243
32823066
合計389110499862

 

機器研究試作室 利用機器表(件数)

フライス盤ボール盤横切盤コンタ-マシンNCフライス旋盤ベルトグラインダー切断機その他
4211061421131573
519117200834476
626161113214498103
736211118210446112
8291913221441497
9251071304121173
10269570512661
111513370611551
121776110602958
1198780500956
219510150504664
31787110213554
合計269137931597406223378878

 

機器研究試作室 依頼製作品

スライスパッチチェンバー凍結割断装置改造部品DSLMチェンバー
ウオータージャケットミクロトームカバー移動式2連顕微鏡ステージ
マウス頭部固定器具唾液腺用チェンバー高架式十字迷路
行動解析ケージ電気泳動用コームマーモセット解剖台
ヘッドアンプ固定具メダカ卵用アガロース型 
トリミング 補助具ヒドラ卵用アガロース型 

 

 〈3〉情報処理・発信センター

  (1) ネットワーク管理室

吉村伸明,村田安永

【概要】
 生理学研究所における当施設の利用形態は,生体情報解析システム(後述),情報サービス(e-mail,WWW等),プログラム開発及びメディア変換などに分類することができる。また,これらを円滑に運用していくためには,所内LANの管理,整備や情報セキュリティの維持も重要である。このような現状をふまえたうえで,岡崎情報ネットワーク管理室とも連携しながら,施設整備を進めている。岡崎情報ネットワークは,今年度新たにMACアドレスベース,もしくはWeb認証ベースの動的VLAN機能を有する1000BASE-Tネットワークを構築し,運用を開始した。

 生体情報解析システムは,データ解析・可視化,信号処理,画像処理,数式演算,統計処理,電子回路設計などの多くのネットワークライセンス用アプリケーションを備えている。ネットワーク認証により各部門施設のPC上でこれらアプリケーションが供用できる。登録者は115名で,研究推進のための積極的な利用がある。

 生理学研究所のネットワーク利用状況は,メール登録者が501名。WWW登録者が80名。LANの端末数が2,026台。VPNサービスは49回/週,82時間/週の利用があった。

 所外からのメール受信数と,所外へのメール発信数は共に14,000通/週であった。WWWは4,600台/週の端末から69,000ページ/週の閲覧があった。

 

 〈4〉岡崎共通研究施設

  (1) 動物実験センター

伊藤昭光,廣江 猛,窪田美津子

【概要】
 本年度は,明大寺地区陸生動物室の地下SPF飼育室の本格的な運用に向け,利用者による実際の飼育作業を行っていくとともに,SPF飼育の担当者を含めた作業及び環境等の見直しも進めた。また,霊長類遺伝子導入実験施設の改修工事が終了し,施設の利用が開始されたが,施設の特異性や利用形態が研究室主体のため,センターによる把握が困難である。したがって,運用面や管理等の課題が残っている。なお,懸案であった小動物用の受理室は設置できたが,緊急時用一時飼育室の設置は次年度へ繰り越しとなっている。

 明大寺の施設は,建設されてから30年あまりを経過しており,空調設備を始めとする設備の老朽化が著しく,また,研究内容の変遷とともに利用形態も大きく様変わりしているため,様々な設備の更新を必要としている。今年度は,幸にして動物棟Iのエレベーター関連の更新が通り,これにより飼育作業環境が改善されただけでなく,飼育作業者や利用者の安全確保もされたと考えている。

 実験動物の授受に関し,年間でのべ109件の導入と90件の供与があった。平均すると毎週4件の授受が行われており,それに伴う条件や書類の確認,ユーザーへのアドバイスに費やされる時間が増大している。

【受精卵凍結・クリーンアップ事業】

 実施件数としては,明大寺および山手とも合わせて受精卵凍結保存がのべ29件,クリーンアップ兼受精卵凍結保存24件,過去に当センターで受精卵凍結した系統の融解・移植の依頼4件を行った。また外部で凍結された系統の融解・移植の依頼が2件あり,当センターとは異なる凍結方法であったが,融解・移植し,無事産仔を得ることが出来た。

 また,山手の大型液体窒素タンクのリミットスイッチが故障し,液体窒素の供給がストップした。今回大事には至らなかったが,稼働後初めて,大形液体窒素タンクのオーバーホールを行った。

【明大寺地区 陸生動物室】

 平成21年度の飼育室利用部門数は,21部門(生理研12部門,基生研4部門,統合バイオサイエンスセンター4部門,共通研究施設1部門)であった。動物のべ飼育数は,昨年度と比べ,ラット飼育数は減少し,ウサギおよびネコは減少し,飼育頭数も0匹となった。一方,マウスおよびサルの飼育数は増加している。

 一般飼育室にカテゴリーA,Bの病原微生物がいない飼育環境を目指しており,昨年度までに,マウスに関しては入室方法の変更,着衣の徹底,動線の明確化を行ったが,ラットでも本年度行い完了した。また,平成20年7月以降,3ヶ月に1度の微生物モニタリングを各飼育室で行っているが,カテゴリーA,Bに該当する病原微生物は検出されなかった。

 地下SPF室を構築し,平成21年6月より運用を開始した。平成22年1月からダムウェーターおよびエレベーターの改修工事があり,一時SPF室の運用を中断したが,微生物学的にも問題なく運用している。

 動物棟Iのダムウェーター及びエレベーターの老朽化に伴い,改修工事を行った。ダムウェーターは,人も乗降できるエレベーターに変更され,使用制限はあるものの,作業面で効率が向上した。

 動物棟Ⅱで,建物の老朽化に伴い,北壁面に吹き付ける風雨の時には,壁面亀裂より雨水が飼育室へ侵入する事例が発生した。早急な補修工事の対応が望まれる。

【山手地区 動物実験センター分室】

 平成21年度の飼育室利用部門数は,13部門(生理研5部門,基生研2部門,統合バイオサイエンスセンター6部門,共通研究施設1部門)であった。

 利用者講習会を毎月開催するとともに,陸生動物利用者には実務講習会を実施している。各受講者はそれぞれ44名,37名であった。

 統合バイオサイエンスセンターに新たに教授が着任したため,SPF飼育室1室の使用を開始した。また,同1部門がマウス実験を終了したため,SPF飼育室1部屋のクリーニングを行った。

 全SPF飼育室およびマウス一時保管室1,マウス・ラット一時保管室2の病原微生物モニタリングが,3ヶ月に1回のペースで実施され,異常は検出されなかった。

 山手地区の稼働後初めて,業者による一時保管室全部屋のクリーンアップを行った。利用者の利便性を考え,2回に作業を分けて,動物の飼育が続けられるよう配慮した。

 SPFの室圧をコントロールしているISS定風量装置に不具合があったため,全機器の点検および故障箇所の交換・修理を行った。

 稼働から7年を過ぎ,オートクレーブ,ケージウォッシャーなどの大型機器類の修理が多くなっており,修理費,部品代が年々増加し,運営費を圧迫している。

【明大寺及び山手地区 水生動物室】

 平成21年度の明大寺地区は,基礎生物学研究所の耐震補強工事に伴う水生動物室の改修工事及び飼育水槽等の設置が完了したため,6月よりP1Aの施設として運用を開始した。利用状況は,生理研2部門,基生研3部門となっている。

 平成21年度の山手地区の利用状況は,統合バイオサイエンスセンター4部門と基生研の1部門が水槽を利用している。

 淡水の水質悪化が時々おこっており,高置水槽内部の汚れが懸念されるため,予算の確保ができ次第,業者による洗浄を行う予定である。

 なお,水生動物の搬入数については,耐震補強工事後の復旧期間のこともあり,正確な集計が取れていないため,集計表は割愛する。

陸生動物 部門別・動物種別搬入数(平成21年度)

           明大寺地区 山手地区
マウスラットモルモットサルマウスラット
神経機能素子 49     
生体膜     759 214
機能協関 43 55    
分子神経生理 42    777 1
神経シグナル     1,966 550
感覚認知情報    4  
生体システム 136 1  3  
認知行動発達 156 83  23  
脳形態解析 140    1,728 362
大脳神経回路論     4 240
形態情報解析室 1 24 1   
多光子顕微鏡室 64 1    
広報展開推進室  34    
生殖内分泌系 948 38    
生体恒常機能 569 139    
行動様式解析室 80     
動物実験センター 100    340 2
形態形成 10     
統合神経生物学13   272 
脳生物学 380 11  2  
細胞社会学 90     
分子発生     543 
神経分化 41    155 61
ナノ形態生理  27    109
分子環境生物学 21    31 
細胞生理 81    2,455 19
遺伝子改変動物作製室     1,513 463
合計2,964 4131 32 10,543 2,021

 



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