公開日 2008.06.25

【第5回所長記者会見】
社会のニーズに答える未来の脳研究を! せいりけん教授が研究拠点の一つに

カテゴリ:プレスリリース
 生理学研究所 広報展開推進室
 

6月11日、文部科学省は、少子高齢化をむかえた社会のニーズに応じ、脳科学研究を戦略的に推進する「脳科学研究戦略推進プログラム」の拠点機関等を発表しました。

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今回発表された脳科学研究テーマは、「BMI(ブレイン・マシーン・インターフェース)の開発」と「独創性の高いモデル動物の開発」の2つ。それぞれの拠 点の代表機関として、株式会社国際電気通信基盤技術研究所(ATR)(代表研究者:川人光男・脳情報研究所所長、生理学研究所・客員教授)と自然科学研究 機構(代表研究者:伊佐正・生理学研究所・教授)が選ばれました。

 

 

BMI(ブレイン・マシーン・インターフェース)とは、脳の電気信号をよみとってコンピューターやロボットを動かす技術であり、目がみえなくなったり足がうごかなくなったりした重度な障害を負った障害者のリハビリや、身体機能の補完に役立つものと期待されています。

また、独創性の高いモデル動物の開発では、「心」や脳の働き、うつ病などの心の病いやその他の精神神経疾患の病態を解明するため、高次脳機能の分子基盤を解明する研究などに有用なモデル動物の開発を行います。

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また、自然科学研究機構・生理学研究所では、川人・伊佐両教授を中心的なメンバーに据えた「多次元共同脳科学推進センター」(池中一裕センター長)を4月に設立(参照⇒) しました。このセンターは、生命科学系だけでなく、心理学や倫理学など社会人文学系の教授など15名を客員教授にむかえ、さまざまな視点から多角的に脳科 学を推進するための研究拠点です。またこのセンターを中心として、若手研究者の育成や、将来の脳科学分野横断的な大学院教育も視野にいれています。

 

社会への還元を目指したこうした脳科学の未来と、生理学研究所の取り組みに、ぜひ、ご期待ください!

参照:文部科学省ページ
平成20年度「脳科学研究戦略推進プログラム」の実施機関等の決定について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/06/08060617.htm

脳と心の科学の推進に力を

無差別殺傷、児童虐待・・・・信じがたい事件に、日本の社会を蝕むヒトの心の病や歪みの深刻さを思わせる毎日です。心は脳の働きにありますので、脳科学にもその解決への期待が高まっています。心の動きによって胸がキュンとすることから、心が胸にあると考える人が今も少なくないかもしれません。しかし、それは脳が体と相互関係を結んでおり、心の動きが心臓の働きの変化として表れたことによるのです。脳の働きをヒトの体の中で捉えて研究する必要性を示しています。ヒトはまた、社会的動物ですので、対人関係を結びながら生きています。ですから、イジメや差別がどれほど人を苦しめるかを知らなければなりません。脳の働きを対人関係・社会の中で捉えて研究する必要性も理解頂けると思います。脳の働きは、その中にある1000億もの神経細胞と、それらが作る1000 兆個にもおよぶシナプスと呼ばれる繋がりと、それらの刻々とした変化によって担われています。従って、脳の構造と機能の解明には、全国の多数の研究者による1つ1つの地味で地道で辛抱強い研究の積み重ねこそが必要なのです。脳科学が近い将来において、ヒトがヒトとして伸びやかに自由意志と創造性を持って健やかな対人関係を結びながら生きていくための指針を与えるものとなるよう、その推進に力をと念じている昨今です。

生 理 学 研 究 所 長

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