公開日 2011.09.14

最先端の電子顕微鏡技術で神経細胞の微細な突起構造の3D立体画像構築に成功(研究報告)

カテゴリ:研究報告
 生理学研究所・大脳神経回路論研究部門
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概要

1.光学顕微鏡を使った樹状突起の走行を3次元的に解析する方法と、連続超薄切片からの3次元再構築法を駆使して、4種類の神経細胞(大脳皮質の非錐体細胞)の樹状突起の太さを決める法則を見いだした。
(a) 樹状突起の太さは、先端方向にある全ての樹状突起の長さの総和に比例する。
(b) 樹状突起の分岐部で、親樹状突起の断面積は2つの娘樹状突起の断面積の和になる。
(c) 樹状突起の断面は正円ではなくていびつな楕円形である。
2.樹状突起の分岐部で提唱されているRallの3/2乗則は、今回解析した4つの非錐体細胞の樹状突起分岐部で、あてはまった。
3.上記の解析結果を使い、シミュレーション解析用のモデル細胞を作り、樹状突起分岐部でRallの3/2乗則が、樹状突起の信号伝導特性に果たす機能的役割を解析した。シミュレーション解析の結果、Rallの3/2乗則をあてはめたモデル細胞では樹状突起上に分布する無数のシナプスの信号が細胞体に伝導した際、epspが均一化する事がわかった。その一方で、樹状突起分岐部がRallの3/2乗則にあてはまらないモデル細胞では、細胞体に伝導したepspが不均一になる事がわかった。
 神経細胞のシグナルの統合(樹状突起の計算処理)は、樹状突起の形態の特性が大きく関与している。今回、その形態が正確に把握でき再現する事ができた事から、より自然に近いモデル神経細胞を構築する事ができた。信号伝導処理のメカニズムを解析する事をよりナチュラルに可能にするなど、このモデル細胞を使うメリットは多い。そのような点で、神経理論科学の分野にも大きく寄与すると考える。また、将来的な課題として、統合失調症、自閉症、うつ病、老年性痴呆症等をはじめとする各種の脳変性疾患の大脳皮質の神経細胞の樹状突起にどのような形態変化が起きているのかを本測定法を応用して計測し、樹状突起で統合される信号処理にどのような支障を来しているのかを解析する事が望まれる。

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論文情報

Kubota Y, Karube F, Nomura M, Gulledge AT, Mochizuki A, Schertel A and Kawaguchi Y  (2011)  Conserved properties of dendritic trees in four cortical interneuron subtypes. Scientific Reports, vol1, 89

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