7TMRIの導入と運用

archive 2015-2018

 

7TMRIの技術開発

7TMRI 画像の歪み補正手順の確立

機能的MRI において,7-T MRI は3-T MRI よりもS/N 比が良く,空間分解能が高いという利点があるが,画像の歪みが大きい。より良い機能局在化のためには、解剖学的情報に基づいた解析において、画像の前処理がより重要である。7-T fMRI データの幾何学的歪みが表面ベースの解析に与える影響を定量的に評価し、 HCP パイプラインにより実用的な歪み補正を実現した (Yamamoto et al. 2021)。

 

7TMRI とMRS を用いた運動学習における一次運動野の統合的役割の解明

7TMRI を用いて、一次運動野(M1)が運動の記憶痕跡(engram)を符号化していることを、学習に関連したM1 の運動準備活動の増加として可視化した(Hamano et al. 2021)。この結果を受けて、運動学習時の他の脳領域との相互作用を、7TMRS と課題および安静時の機能的磁気共鳴画像を組み合わせて評価した。認知的制御に基づく運動学習は、前頭-頭頂実行ネットワーク(FPN)との遠隔結合を反映したM1 のGABA/グルタミン酸比の局所的な変化と関連しており、ネットワークレベルの運動学習記憶形成を表していることが判明した (Maruyama et al. 2021) 。
 

7TMRI を用いたリズム予測の神経基盤解明

時間予測能力は、外部リズム刺激による運動同期(感覚運動同期)に不可欠であるが、時間予測能力の個人差やその神経相関についてはほとんど分かっていない。我々は、聴覚-運動同期における時間予測能力の神経相関と個人差を明らかにした。運動前野や補足運動野などの非一次運動野が、予測能力の個人差に相関する重要な脳領域であると仮定した。健常者18 名を対象に、等時性、テンポ変化、ランダムという3 種類の聴覚的メトロノーム拍動をタップさせる機能的磁気共鳴画像(7T)を実施した。予測能力は、タップタイミングとペーシングイベントの相互相関に基づいて計算される予測/追跡比を用いて評価された。予測・追跡比が高い被験者(すなわち、予測傾向が強い被験者)ほど、メトロノームの拍子に合わせて正確にタップしていた。予測・追跡比は、両側背側運動前野(PMD)の活動と正の相関があり、両側PMD が予測能力の個人差を説明することが示唆された。これらの結果は、PMD が聴覚リズムパターンの時間予測モデルの生成に関与しており、その活動は、正確で精密な感覚運動同期のために重要な、モデルの精度を反映することを示唆するものである(Miyata et al. 2021)。

 

7TMRI を用いた皮質層別イメージング(福永)

人間の脳は、感覚入力に対する予測との誤差を評価し、絶えず内部予測のモデルを更新している。一方、ヒトの一次体性感覚皮質 (3b 野) では、異なる皮質層が感覚入力とエラー信号生成に関与している。しかし、時間予測誤差処理において、一次体性感覚皮質の各層がどのように寄与するか不明である。本研究では、7テスラ皮質層別fMRI を用いて、人差し指のタッピング課題時の3b 野における予測誤差の脳内表現について層横断的に調査した。ランダムシーケンスに比較し、順序の決まった刺激では、3b野の表層と深層の両方で活動が増加した。また、タッピングの遅延により、3b 野の深層のみに変調が見られ、遅延のない刺激と比較し、短遅延の刺激では活動が大きく、長遅延では活動が小さかった。これらは、触覚の時間予測誤差処理における3b 野の層特異的反応性を示唆している。これらの層間の反応特性は、皮質層間あるいは皮質領域間の柔軟なコミュニケーションに寄与する可能性があると考えられた (Yu et al. 2021) 。