Noiseをどのようにして取り除くか?
電気生理学的実験にノイズは大敵です。ノイズを取り除くのに苦戦することは、少なくありませんが、ノイズには必ず原因があるはずです。その原因をつかめれば、何らかの対策が立てられるはずです。原因を突き止めるには、系統的にセットアップをチェックしていくことが不可欠です。
ノイズの原因は、いくつかのグループに分けられます。
A.ピックアップノイズ。周囲の電気機器のノイズをひろう場合。
B.電源がノイズ源となっている場合。
C.アンプなど計測機器自体の故障。
用意するもの:
- パッチクランプアンプ
- ファラデー ケイジ
- オシロスコープ
- テスター
パッチクランプアンプの場合を例に、ノイズ取りの方法を紹介します。
- ファラデーケージの作成。われわれはアングル鋼に打ち抜きアルミ板を貼り付けたものを使用しています。一般的には銅の金網が良いと言われていますが、アルミ板で十分です。この方が取り外しが容易で便利です。(研究環境のページ参照)
whole-cell電流の測定の場合は、ケージの前が開いていてもほとんど差し支えないはずです。single-channel recording等のように低ノイズ記録を行う必要があるときは、チェンバーの前に小さな遮蔽板(アースをして)を置くとよい。
- ファラデー ケージの中に、パッチクランプアンプをセットします。出来るだけ他の電気機器はない状態にします。プローブの先をアルミホイルなどで覆った状態で、アンプの出力をオシロスコープで観察します。この状態では周りのノイズをピックアップすることはほとんどない筈なので、ノイズレベルがかなり低いはずです。
- もし<2>の状態でノイズが高ければ、アンプ自体の問題、あるいは電源の問題が考えられます。アンプ自体の問題は、メーカーに修理を依頼する以外にほとんど手はありません。電源が問題かどうかは見極めるのが容易ではありませんが、別のコンセントから電源を取る、もし手元にあるなら電源フィルターを試してみるのが良いでしょう。
<2>の状態でのノイズレベルは、アンプの調子を記録する上で大切な情報です。測定条件を定めて、ノイズレベルを記録しておくことを勧めます。
- プローブに電極ホルダーを付けます。これでノイズが一度に増えたはずです。周りの電気器具からノイズを拾っているわけです。
- 顕微鏡まわり、ファラデーケージなどにアース線を付けます。アース線は一点に集中させ、そこからパッチクランプアンプのグラウンド端子に落とします。グラウンド線はループにならないように注意します。
ファラデーケージの中の電気を通す物は、基本的にすべて電気的につながっているはず。テスターを用いてチェックすること。
こんなに簡単でよいのかと疑う方もおられるかもしれませんが、ノイズが取れる場合はこれで取れるのです。
- これでノイズが残っている場合、それが交流に関係したものかどうかを調べます。オシロスコープのトリガーをlineにします。
オシロの画面でノイズの波が動かない場合、それは交流に関係したノイズであることを示しています。この種のノイズは、プローブまわりで何かがアンテナの役目を果たしている、言い換えればアースの取り方が不十分である場合が多いようです。
交流とは無関係にノイズが出る場合、他の電気機器あるいは水まわりが原因となっている可能性があります。
- その他、注意すべきこと
- 周りの電気器具を含め、すべての電気器具は、3本ピンの電源コードを用いること。
- チェンバー内のGNDからプローブへの電線が切れかかり、ノイズを出す場合がある。
- BNCケーブルが切れかかって、ノイズをひろう場合がある。
- 壁のコンセントのグラウンド線が信頼できない場合がある。
- 顕微鏡の電源は、出来るだけ外付けの直流電源とする。
- 電極ホルダーの中に塩類が付着するとそれもノイズの原因となります。日頃、電極に内液を入れすぎないことが大切です。
- チェンバーから吸引で液を出す場合、ファラデーケージ内にトラップを置き、排液チューブがアンテナにならないようにする。
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