メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.7>を発行しました。

[非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」  関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。 紅葉の候、皆様におかれましては変わらずご壮健のことと存じます。

メルマガVol.7です。 さっそくですが、今号の目次です。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.7目次◆==

【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★) 各班間のさらなる連携を目指して。

【2】今後の行事予定 2016年度に予定されている行事について。

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【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★) 各班間のさらなる交流・連携を目指して、連載中です。

引き続き毎号、計画班研究代表の先生と公募班の先生方の 紹介を予定しております。

今回は、

1. 上田肇一先生(富山大学大学院理工学研究部、B04班)

2. 田中謙二先生(慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室、C04班)

3. 高田昌彦先生(京都大学霊長類研究所統合脳システム分野、C04班)

の3名の先生方をご紹介させて頂きます(原文通り)。

<< 1. 上田肇一先生(富山大学大学院理工学研究部、B04班)>> 公募班 上田 肇一(富山大学・准教授・専門は応用数学)です。 オシロロジーに貢献できる研究内容とともに自己紹介します。

(1)微分方程式の分岐解析 学生時代からポスドクまでは主に偏微分方程式にみられる 空間パターン(縞模様や斑点模様)に関する分岐解析を行い, 模様が現れる条件を明らかにしてきました。

分岐解析は,例えば,振動現象を発生(消滅)させるには モデル方程式のどのパラメータを変化させればよいか?といった 神経ダイナミクスに関連する問いに対しても有効な手法です。 分岐解析に関する経験を活かし,共同研究などを通して オシロロジー領域に貢献したいと思っております。

(2)生命現象の数理モデルの作成とその数理解析 最近は,生命現象に関連する研究,具体的には,真正粘菌,ヒトの2足歩行, 脳波などの数理モデルの作成とその数理解析を行っています。 現象は様々ですが,共通するテーマとして,環境変化に対する 柔軟な状態遷移の仕組みの解明を目指しています。 数理的には柔軟なアトラクタ遷移の仕組みを解明することに対応します。 公募研究では,脳神経ダイナミクスでみられるアトラクタ遷移の仕組みを 解明することを目指しています。

<< 2. 田中謙二先生(慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室、C04班)>> 自己紹介 慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 田中謙二 オシロロジーの皆様、平素よりお世話になっております。 私は1997年に慶應義塾大学医学部を卒業し、2年間の精神科研修を終え、 卒後3年目より大学院博士課程に進みました。

グリア細胞や神経幹細胞の分離培養を中心としたin vitro研究だけを 行っていましたので、電気活動とは無縁の人生でした。 In vitroでは精神を理解出来ないと考え、in vivo実験をやらせてもらえるラボとして 生理学研究所の池中一裕先生にポスドクとして拾ってもらいました。 ここでは遺伝子改変の技術を学び、グリア病とよぶべきモデル動物の樹立に励みました。 まだ電気活動とは遠いです。

2006年から2年間、コロンビア大学のRene Henラボに留学するチャンスを得ました。 セロトニン受容体のgenetics、および線条体神経回路(線条体には セロトニン1B受容体が多く発現するのです)との出会いはここから始まりました。 留学中は、チャネルロドプシンというキーワードがポスドクの間でささやかれ、 Karl DeisserothがChR2の宣伝にHen labに営業に来るという時代でした。 遺伝子改変マウス作りが得意だったので、 ChR2を発現するマウスを作ってみるかというなんとなくの動機で始めました。 ChR2発現マウスを作ったら、電気生理学でシステムが動くかどうか 検証するということは全く頭にありませんでした。 アホです。

留学中は、京大医生理学出身の、中馬奈保先生に電気生理を担当してもらい、 帰国後は生理研のメンバーに担当してもらいました。 山中章弘先生(現 名古屋大学)や松井広先生(現 東北大学)との共同研究は 帰国後から始まり、と同時に電気活動の理解を少しずつ深めていきました。

2012年から慶應大学でラボを持ちました。 この時から始めた線条体投射神経と意欲行動の関係を明らかにする研究で オシロロジーに採択してもらっています。 この研究は、マウスgenetics、optogenetics、gene encoded Ca indicatorを用いた fiberphotometryなど英語満載の技術に支えられた研究です。 Fiberphotometryで線条体投射細胞の活動を見たときに、 まず不思議に思ったのが、「揺らぐ」ということです。 そしてその揺らぎが非常にゆっくりしていることです。 自由行動下のゆらぎの意味について今は取り組んでいませんが、 resting state MRIと組み合わせたら何か分かるのではないかと夢想しています。

現在は、木村生さんという優秀な学振PDと共にオペラント行動下で観察される カルシウム振動ユニットについて取り組んでいます。 予想通りの結果が出ることも面白いですが、 予想と全く異なる結果が出ることもまた面白いです。

本領域では、私の苦手な分野を一生懸命吸収しつつ、 神経活動の振動現象についての理解を広げていきたいと思います。

<< 3. 高田昌彦先生(京都大学霊長類研究所統合脳システム分野、C04班)>> ここでは、私がこれまで従事してきたシステム神経科学、 特に神経回路の構築を研究する神経解剖学のヒストリーを紹介しつつ、 自己紹介とさせていただきます。

私が神経解剖学の大学院に入学し、神経回路研究をスタートした1982年当時は、 1960年代からおこなわれてきた鍍銀変性法やオートラジオグラフィー法から、 より感度が高く解析が容易であるHRP(horseradish peroxidase)法が登場、 普及し始めた頃でした。 もちろん、免疫組織化学やハイブリダイゼーションなど、伝達物質や機能分子を 同定する研究手法が我が国ではまだほとんど導入されていませんでした。

私たちの研究室、京都大学医学部解剖学教室第一講座(現、京都大学大学院医学研究科 高次脳形態学講座)では、HRPに小麦胚芽凝集素であるWGA(wheat-germ agglutinin)を conjugateしたWGA-HRPを独自に作製し、強力な順行性トレーサーとして使用していました。

1984年末にカナダ・トロント大学に留学しましたが、 留学先の研究室は蛍光色素のメッカでした。 蛍光色素といっても現在のように「多重蛍光染色のためのtool」として 利用していたわけではなく、蛍光色素そのものを逆行性トレーサーして、 特に軸索側枝を介して複数の脳領域に投射する単一ニューロンの同定に重宝していました。 True Blue、Fast Blue、Diamidino Yellow、Rhodamineなど 標識部位や励起波長の異なるさまざまな色素が用いられていました。 さらに、PhA-L、BDA、choleratoxinなどの順行性・逆行性トレーサーが登場し、 私自身も用途に応じて使い分けていました。

また、実験動物については、大学院時代はネコを、海外(カナダ、アメリカ)では ラットやマウスを、そして日本に帰国後、生理学研究所での南部 篤先生(本領域代表!)ら との共同研究以降は主にサルを使用してきました。 特にサルを用いた初期の研究では、電気生理学的に同定した複数の大脳皮質運動関連領野に WGA-HRPとBDAを注入し、大脳基底核(線条体や視床下核)における 順行性ラベルの分布様式を詳細に解析することにより、 大脳基底核における運動情報処理の基本的枠組みを明らかにしました。

その後、東京都神経科学総合研究所(現、東京都医学総合研究所)に異動し、 霊長類専用の感染実験施設を立ち上げました。 それには2つの理由があります。

ひとつは、従来の単シナプス性トレーサーではなくシナプスを超えて 多シナプス性の神経回路をラベルできる狂犬病ウイルスを使用するためです。 狂犬病ウイルスを用いて大脳皮質-大脳基底核・小脳ループをはじめ、 大脳皮質を巡るさまざまな神経回路の構築を解析し、最近は異なる蛍光色素を発現する 狂犬病ウイルスベクターの開発にも成功しました。

もうひとつは、げっ歯類と同様に、霊長類、特に大型のマカクザルで遺伝子改変モデルを 作出するためで、時間がかかりましたが、福島県立医科大学の小林和人先生との 共同研究が核となって、ウイルスベクターの脳内注入による外来遺伝子の導入技術を 首尾よく確立することができました。

現在、特定の神経路に選択的に遺伝子操作をおこなう技術を駆使して、 高次脳機能の解明や精神・神経疾患モデルの開発を目指した研究を日々進めています。

本領域では、 「パーキンソン病サルモデルの多領域多点同時記録による集団発振現象および同期化の探索」 という電気生理学の先端技術を利用した研究課題で参加させていただいています。

どうか宜しくお願いします。

上田肇一先生、田中謙二先生、高田昌彦先生、誠にありがとうございました。

自己紹介は原稿を頂いた順番に、紹介させて頂いております。 既に原稿をお送り頂いておりますが、今回ご紹介させて頂けなかった先生方、 ご理解賜れましたら幸いです。

まだ原稿をお送り頂いていない計画班研究代表・公募班の先生方、 お待ちしておりますのでどうかよろしくお願いします。 (小林勝哉 31258a[at]kuhp.kyoto-u.ac.jp まで、お送り下さい。)

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【2】今後の行事予定 今年度(2016年度)に予定されている行事です。

□ てんかんと脳律動のミニシンポジウム(仮称) (2016年11月9日(水)16-18時予定、京都大学芝蘭会館別館(京都)) http://www.shirankai.or.jp/facilities/access/

フランスでてんかんの電気生理・数理学的解析をされている、 Michel Le Van Quyen 先生を囲んで、 オシロロジー共催のてんかんと脳律動のシンポジウムを予定しております。

詳細は追ってアナウンスがございます。 奮ってご参加下さい。

□ 包括脳全体集会:次世代脳プロジェクト2016年度冬のシンポジウム (2016年12月19日(月)-21日(水)、学術情報センター(一橋講堂、東京)) http://www.nips.ac.jp/brain-commu/2016/outline.html

12/21(水)AMに、「オシロロジー」「こころの時間学」公開シンポジウムがあります!

□ 第3回領域会議(前回から追加情報あります!) (2017年1月6日(金)-7日(土)、(京都)) 新学術領域「オシロロジー」第3回領域会議 日程:2017年1月6日(金)~7日(土) 場所:立命館大学茨木キャンパス http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/oic/

今回の会議では、 1日目に総括班会議と計画班(+希望者)のポスター発表、 そしてまだ自分の研究を紹介していない公募班員の方々による口演を予定しています。 2日目には、30名程度を対象とした技術ワークショップを 2件開催することを予定しています。 会議スケジュールの詳細についてはまた後日お知らせ致します。

茨木キャンパスは新大阪からJRで約10分、 伊丹空港からもモノレールで20分程度の距離です。 周辺にホテルはそれほど多くないですが、 JRと阪急が通っており京都や大阪から通う事も可能です。

ただ、外国人観光客の激増により京都・大阪市内は ホテルが取りにくい状況が続いています。 今回は事務局の方で宿泊の手配を行いませんので、 各自できるだけ早くホテルを確保していただくようお願い致します。 また詳細が決まり次第ご連絡をお送りします。

□ 第17回「脳と心のメカニズム」冬のワークショップ (2017年1月11日(水)-13日(金)、ルスツリゾート(北海道))

皆様奮ってご参加の程、よろしくお願い致します。

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最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。 今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。 次号は2016/11/25 発行予定です。

次号も、計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介を 連載させて頂きたいと考えております。

その他、飛び込みでの企画持ち込みなど、本メルマガでは随時募集しております。 皆様引き続きよろしくお願い致します。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31) 「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」 Mail Magazine Vol.7 2016/10/25 発行(毎月25日発行) 発行・編集人:小林勝哉(広報・アウトリーチ委員会)・小野健太郎(総括班事務局) 京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 *本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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