メルマガハッシン!<オシロロジー Mail Magazine Vol.8>を発行しました。

「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解(オシロロジー)」  関連の皆様

大変お世話になっております。 オシロロジー広報・アウトリーチ委員会です。 霜秋の候、皆様におかれましては変わらずご壮健のことと存じます。

メルマガVol.8です。 さっそくですが、今号の目次です。

==◆オシロロジー Mail Magazine Vol.8目次◆==

【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★) 各班間のさらなる連携を目指して。

【2】2016年度事業実施報告 2016年度に実施された事業について。

【3】第3回領域会議(2017年1月6日(金)-7日(土)、(大阪・茨木)) 参加申し込みを開始しました。

【4】その他の行事予定 2016年度に予定されている行事について。

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【1】計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介(★注目★)

各班間のさらなる交流・連携を目指して、連載中です。 引き続き毎号、計画班研究代表の先生1名と公募班の先生方2名の 紹介を予定しております。

今回は、

1. 虫明 元 先生(東北大学医学系研究科、C01班代表)

2. 本田 学 先生(国立精神・神経医療研究センター、A05班)

3. 笹岡俊邦 先生(新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター、C04班)

の3名の先生方をご紹介させて頂きます(原文通り)。

<< 1. 虫明 元 先生(東北大学医学系研究科、C01班代表)>> これまで行動するサルの脳より細胞活動を記録して、前頭葉特に一次運動野、高次運動野、 さらに前頭前野などの随意行動に関わる複数の領域間のネットワークとしての神経機構を 明らかにしてきました。

一方最近は局所回路の興奮性細胞、抑制細胞、特に抑制細胞のサブタイプに着目して、 興奮・抑制細胞の神経細胞間のネットワークすなわちセル・アセンブリーの集団としての 複雑な振動状態を理解し、機能的意義を解明しようとして新たな研究を行っております。

さらにマクロな脳全体としてのネットワークから創発される意識の現象、そして個体の示す 性格の多様性と脳のネットワーク理解を結びつける可能性を検討しております。 脳を理解する大きな前提として、脳は身体を介して環境世界内の中で存在しており、 内的な側面と外的な側面を結びつける中で、現象的な心的世界を創り上げると漠然と考えております。

また最近の展開としては神経ネットワークの情報系とグリア血管ネットワークの 代謝エネルギー系は互いに相補的であり、其の相互作用は振動を生み出し、 両者の関係性が心のあり方にも大きく影響を与えているのでは考えて研究をすすめています。

オシロロジーではC01班として動物モデルを対象として双方向性の計測・操作技術を駆使する ことにより、発振現象の神経メカニズムとその機能的意義を理解することを目指しています。 具体的には、振動の生理学的研究のための実験系として、光操作技術、遺伝子組み換え技術、 イメージング、電気生理を組み合わせた操作と計測を行う双方向性の計測操作技術を構築しつつあります。 特に脳の内因性振動現象と感覚・行動による外因性振動現象、および神経活動の関連性には 低周波から高周波までの階層的な振動が含まれているので新しいアプローチを駆使して 振動の機能的意義を探っております。

振動現象の理解には非線形に変化する高次元振動信号の解析技術及び、 現象の背景にある数理モデルなどを理論班と協力して理解することも同時に目指しています。

<< 2. 本田 学 先生(国立精神・神経医療研究センター、A05班)>> 私は、昭和57年の大学入学と同時に、芸能山城組というアーティスト・グループに入門し、 現在もその中核メンバーの一人として活動を続けています。 芸能山城組は、世界80系統以上のエスニック・ミュージックやパフォーマンスを レパートリーとして持ち、私がこの領域での研究対象としているインドネシア・バリ島の 祝祭芸能「ケチャ」を、バリ島人以外で世界ではじめて再現することに成功しました。 また、エスニックな表現要素を現代音楽と融合させたオリジナル作品の創作にも取り組んでおり、 代表作であるアニメ映画AKIRAの音楽は、映画公開後30年近くを経た現在も、 ハイレゾ作品として配信ヒットチャートの1位を飾るなどの人気を誇っています。 また芸能山城組は、内部に文明科学研究所という研究組織を持っており、 そこでの研究テーマの多くを、私自身の研究テーマにしています。

こうした表現活動と研究活動とを両立して進める中で最も大切にしてきたのが、 「表現芸術はいわば華であり、それは根や茎、すなわちその民族の社会や文化、 価値観に支えられている。華を咲かせるには、根や茎を育てないといけない」 という故小泉文夫先生の教えでした。

そうした目で世界中の音楽をあらためて俯瞰してみると、私たちになじみ深い「指揮者」のいる 音楽というのは、近代以降の西洋音楽という、空間的にも時間的にも極めて限定された 特殊な音楽であることに気付かされます。

人類が演じてきた音楽の圧倒的大多数は、演奏者が自律的に同期することによって、 音楽として成就しており、その同期現象こそが演じることの快感の大きな源になっているともいえます。 そうした人間集団が本来もっている同期能力の凄さに思いを馳せると、音楽に必要な音を 発生するという点では何の貢献もしていないのに、最も目立つ場所に観客に背を向けて立ち、 自分の音楽であることを誇示するように棒を振る指揮者という存在、そしてそれを生み出して きた自己顕示的で中央集権的な社会構造や価値観が、醜悪を通り越して滑稽にさえ見えてきます。

この研究では、30年以上にわたって自らケチャを演奏してきた私の一人称体験に、 先端的な三人称科学で迫ることで、人間集団の同期能力の可能性と、それを活かし支える 社会や価値観にスポットを当てたいと考えています。

そのためには私が持っていない知識や技術がどうしても必要です。 ぜひともご指導をよろしくお願いします。

<<3. 笹岡俊邦 先生(新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター、C04班)>> 私は、ドーパミンがヒトの行動や神経疾患・精神疾患に深く関わることに関心を持ち、 永津俊治教授(名古屋大、当時)のもとで、ドーパミン生合成酵素の生化学・分子生物学の研究、 パーキンソン病(PD)の基礎研究を行ないました。 そして、勝木元也教授(東海大、九州大、当時)の指導を受けて、 遺伝子操作マウスの作製と解析研究を行ってきました。

米国のDona M. Chikaraishi博士(タフツ大、当時)のもとに留学し、 さらに利根川進教授(マサチューセッツ工科大学)のもとで、遺伝子操作マウスによる 精神疾患・神経疾患のモデル動物作成という課題に取り組みました。

帰国後、国立精神・神経センター神経研究所に着任し、筋ジストロフィーの 起こる仕組みについて、筋線維膜タンパクの遺伝子操作マウスを用いた研究を行いました。

その後、基礎生物学研究所、北里大学、新潟大学脳研究所と異動してまいりましたが、 PDにおけるドーパミン情報伝達異常による運動症状を、ドーパミン受容体に着目して 理解するため、D1ドーパミン受容体の発現を薬物投与により制御できるマウスを作製しました。 そして生理研の南部篤先生、知見聡美先生に電気生理学的解析で共同研究していただき、 大脳基底核の直接路のドーパミンの情報伝達による運動調節の仕組みの理解に取り組んできました。 私は、マウスの作製までに注力しがちでしたが、本研究により遺伝子操作マウスの in vivoにおける神経活動を観察できることに、改めて感銘を受けました。

これからは、D2ドーパミン受容体を同様に制御できるマウスを作製し、 間接路による運動調節の仕組みの理解に取り組みたいと思います。 また、 鍋島陽一教授(京都大、当時)と共同して開発した、NMDA受容体に活性化しやすい アミノ酸置換を導入したマウスを用いて、PD様の運動症状と異常発振の出現を 検討したいと思います。

オシロロジー領域には神経科学のみならず、 数理科学、臨床医学の先生方も多く参加されていらっしゃいます。 研究交流させていただくとともに、私がこれまで開発してきた遺伝子操作マウスも ご活用いただければ幸いと思います。

また、ご承知のように、各研究分野で、遺伝子操作マウスの有用性は益々大きくなっており、 国内外で大規模なマウス開発プロジェクトが行われており、我が国では、 理化学研究所バイオリソースセンターが中心となって各研究分野で必要な遺伝子操作マウスを 整備・提供するナショナルバイオリソース事業が進んでいます。 私もこれまで本事業に貢献してきましたが、今後も有用なマウスの開発と提供に つとめたいと思います。

虫明元先生、本田学先生、笹岡俊邦先生、誠にありがとうございました。

自己紹介は原稿を頂いた順番に、紹介させて頂いております。 既に原稿をお送り頂いておりますが、今回ご紹介させて頂けなかった先生方、 ご理解賜れましたら幸いです。

まだ原稿をお送り頂いていない計画班研究代表・公募班の先生方、 お待ちしておりますのでどうかよろしくお願いします。 (小林勝哉 31258a[at]kuhp.kyoto-u.ac.jp まで、お送り下さい。)

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【2】2016年度事業実施報告 2016年度に新たに実施された事業です。

□ A04-B03班共同研究打ち合わせ (2016年4月14日、九州大学(福岡)) A04班(飛松先生・竹田先生・中園先生・松原先生・他2名)、B03班(山口(裕)先生, 山口(明)先生)が 九州大学病院のMEG計測施設を見学の後、錯視時のMEGの解析に関する実験および 解析方法の解説を行いました。 (2016年6月27日、札幌ガトーキングダム(札幌)) MEGデータ解析結果の検討が行われました。 (2016年7月28日、九州大学(福岡)) B03班(山口(裕)先生)より提案のあった新しい手法による MEGデータ解析結果の検討が行われました。

今後も引き続き、錯視(rotating snakes)の主観的な知覚がどのように生じるのかを 明らかにするべく、脳磁図による研究を進めて行きます。

□ A05-C04班共同研究打ち合わせ (2016年10月12-13日、新潟大学脳研究所(新潟)) A05班(木津川先生・他1名)、C04班(笹岡先生・他10名)の両班は大脳基底核回路の 主要分子ドーパミン受容体の遺伝子改変マウスの遺伝子発現様式の解析、 および運動機能と報酬忌避学習のwheel running試験等による行動解析の共同研究を 進めており、実験結果についての討論と今後の進め方について打ち合わせが行われました。

□ Mini-symposium of HFO and oscillology (2016年11月9日(水)16-18時予定、京都大学芝蘭会館別館(京都)) http://www.shirankai.or.jp/facilities/access/

フランスでてんかんの電気生理・数理学的解析をされている、 Michel Le Van Quyen 先生を囲んで、 オシロロジー共催のてんかんと脳律動のシンポジウムが開催されました。

PROGRAM 1) 16:00-16:10 introduction of mini-symposium Akio IKEDA, M.D., Ph.D. Department of Epilepsy, Movement Disorders and Physiology Kyoto University Graduate School of Medicine

2) 16:10-16:30 Masako Daifu, M.D. How to delineate and analyze epileptic slow activity in human epilepsy Department of Neurology, Kyoto University Graduate School of Medicine

3) 16:30-17:00 Non-stationary and endogenous dynamics of synchronous oscillatory spike activities in the Cat lateral geniculate nucleus Hiroyuki Ito, Ph.D. Department of Computer Science and Engineering, Kyoto Sangyo University

17:00-17:10 break

4) 17:10-18:00 High-Frequency Oscillations as a New Biomarker in Epilepsy (abstract on the next page) M. Le Van Quyen, Ph.D. Institut du Cerveau et de la Moelle epiniere (ICM) , INSERM UMRS 975 - CNRS UMR 7225- UPMC , Hopital de la Pitie-Salpetriere, Paris, FRANCE

皆様、新たに関連事業がございましたら、 事務局までご連絡頂けますようよろしくお願いします。

また、共同研究のための打ち合わせ、セミナー、会議等開催に際しては、 オシロロジーHP内会員ページの「書類(申請・報告)」 にある書類をご提出下さい。

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【3】第3回領域会議(2017年1月6日(金)-7日(土)、(大阪・茨木)) 第3回領域会議の開催が近づいて参りました! 参加申し込みを開始しました(締切は12月9日(金))。

新学術領域「オシロロジー」第3回領域会議 日程:2017年1月6日(金)~7日(土) 場所:立命館大学茨木キャンパスB棟フューチャープラザ 〒567-8570大阪府茨木市岩倉町2-150 TEL:072-665-2500 http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/oic/

参加申し込みのフォームは、 http://oscillology.umin.ne.jp/apply/view/index.php?id=4 で、締切は12月9日(金)です。

パスワードは別途メールで配信されたものをお使いください。 メールが届かなかった領域メンバーの方は、 お手数ですがどなたか周囲の方にお尋ね下さい。 そして、メーリングリストに掲載されるようメンバーリストの更新の連絡を 計画班の代表の方にお願い致します。

今回の会議では、 1日目には、 総括班会議(10:00-12:00)、 計画班(+希望者)のポスター発表、 そしてまだ自分の研究を紹介していない公募班員の方々による口演、 情報交換会(18:00-) を予定しています。

計画班の方々には、2016年度の研究の進捗状況を中心とした ポスター発表を行っていただきます(ポスターパネルのサイズは幅90cm×高さ210cm)。 そして、その内容を1人1分のショートプレゼンテーションで紹介していただきますので、 A4ヨコで2枚に収まるように発表用スライドを作成したものを PDFで事務局までお送りいただきます。 こちらの発表につきましては、後日またご連絡をお送りします。

2日目には、今回新たな試みとして、 30名程度を対象とした技術ワークショップ2件と、 計画班と公募班の共同研究を後押しするためのマッチングセッション を開催することを予定しています。

会議スケジュールの詳細については別途メールをご参照下さい。

参加費用 領域会議:無料(宿泊費は各自負担) 情報交換会:有職者5000円、学生2000円

茨木キャンパスは新大阪からJRで約10分、 伊丹空港からもモノレールで20分程度の距離です。 フューチャープラザはB棟にあります。 JR茨木駅から来られる場合は、「東口」を出て線路を右手に見ながら 線路沿いの道を南へ7-8分ほど歩けば到着です。 西口から出ますと、イオンモールを過ぎて高速道路に着くまで キャンパス側には渡れないので気を付けてください。

周辺にホテルはそれほど多くないですが、 JRと阪急が通っており京都や大阪から通う事も可能です。

ただ、外国人観光客の激増により京都・大阪市内は ホテルが取りにくい状況が続いています。 今回は事務局の方で宿泊の手配を行いませんので、 各自できるだけ早くホテルを確保していただくようお願い致します。

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【4】その他の行事予定 今年度(2016年度)に予定されている行事です。

□ 包括脳全体集会:次世代脳プロジェクト2016年度冬のシンポジウム (2016年12月19日(月)-21日(水)、学術情報センター(一橋講堂、東京)) http://www.nips.ac.jp/brain-commu/2016/outline.html

12/21(水)AMに、「オシロロジー」「こころの時間学」公開シンポジウムがあります! 是非ご参加をよろしくお願いします!

タイムテーブル12/21(水)抜粋 9:10 ~ 9:20 領域概要の紹介  北澤茂(大阪大学)、南部篤(生理学研究所) 9:20 ~ 9:45 ネットワーク自己再組織化による機能分化の数理モデル  津田一郎 (北海道大学) 9:45 ~ 10:10刺激の時間変調による周波数引き込みを利用した、時間知覚の脳内機 序の検証  四本裕子(東京大学) 10:10 ~ 10:35機能的MRI信号に含まれる種々の振動現象  麻生俊彦(京都大学) 10:35 ~ 10:45休憩 10:45 ~ 11:10海馬シータ波位相前進による時間順序の表現  藤澤茂義(理化学研究所) 11:10 ~ 11:35グリア細胞による神経系発振ステート制御機構の解明  松井 広(東北大学) 11:35 ~ 12:00過去と未来をブリッジする海馬鋭波  池谷裕二(東京大学)

□ 第17回「脳と心のメカニズム」冬のワークショップ (2017年1月11日(水)-13日(金)、ルスツリゾート(北海道))

皆様奮ってご参加の程、よろしくお願い致します。

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最後まで読んで頂いた皆様、誠にありがとうございました。 今後も月1回のメルマガで情報を発信させて頂ければと思います。 次号は2016/12/25 発行予定です。

次号も、計画班研究代表・公募班の先生方の自己紹介を 連載させて頂きたいと考えております。

皆様引き続きよろしくお願い致します。

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文部科学省新学術領域研究(H27-31) 「非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解」 Mail Magazine Vol.8 2016/11/25 発行(毎月25日発行) 発行・編集人:小林勝哉(広報・アウトリーチ委員会)・小野健太郎(総括班事務局) 京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センター内 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54 *本誌に関するご意見・お問い合わせは oscillology[at]nips.ac.jp までお寄せ下さい。

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