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ご挨拶

2019年度

 当部門は発足から4年目を迎えました。今年度も社会的認知機能のシステム的理解をメインテーマとして、自己および他者の行動情報処理の神経メカニズムを単一神経細胞レベルから大域的神経ネットワークレベルまでの異なる粒度で明らかにすべく、多様なアプローチを駆使して研究を進めてまいります。
   研究面での進捗ですが、2016年11月から開始されたAMED脳科学研究戦略推進プログラム「意思決定」の「社会的な意思決定と行動制御のシステム的理解に向けた研究手法の開発(代表:磯田昌岐)」では、二宮さんと則武さんが中心となって研究を展開しています。大脳皮質領域間や大脳皮質・皮質下領域間の機能連関に関してこれまで知られていなかった興味深い知見が得られています。その一部はNature NeuroscienceのArticleに発表することができました。また、昨年6月からは、AMED戦略的国際脳科学研究推進プログラムに採択された「高磁場MRIを用いたマーモセット・マカク・ヒトの種間比較に関する研究開発(代表:定藤規弘)」に磯田が研究開発分担者として参画しており、7テスラMRIを用いて社会的認知機能の神経基盤を種間比較する研究プロジェクトに取り組んでいます。吉田さんは、AMED「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」のキーパーソンとして、マーモセットをモデル動物とした新たな心理物理実験や電気生理実験をおこなっており、着実に成果をあげています。植松さんと新居君はさらに一回り大きくなって、それぞれの研究テーマに粘り強く取り組んでいます。これらの順調な研究活動の裏には、戸川さん、柴田さん、山西さんによる献身的なサポートがあることは言うまでもありません。
  人事面では、2018年5月から城地さん(技術支援員)、同年9月から戸松さん(特任准教授)、そして同年10月から高田さん(技術支援員)が加入しました。それぞれエネルギッシュに活動しています。当部門の特任准教授を併任している郷さんは、昨年度から本務先が新分野創成センターから生命創成探究センターに変わりました。また、生理研の組織改編に伴い、旧感覚認知情報研究部門の横井さん(助教)が今年度から当部門の一員となることになりました。
   共同利用研究では、3件の一般共同研究、1件の生体機能イメージング共同利用実験、2件の研究会を予定しています。これらをとおして当該コミュニティの連携強化に尽力したいと思います。
  2019年度も実り多い一年となるようスタッフ全員で精進してまいりますので、ご指導・ご鞭撻のほど、どうかよろしくお願い申し上げます。         
                       2019年4月 磯田 昌岐

2018年度

 岡崎公園の桜が満開を迎え、それとともに当部門は発足から3年目に入りました。今年度も、メインテーマである社会的認知機能のシステム的理解を中心とした研究活動を進めてまいります。  
 研究面での最近の展開ですが、まず2016年11月より開始した脳科学研究戦略推進プログラム「柔軟な環境適応を可能とする意思決定・行動選択の神経システムの研究」では、二宮さん(助教)と則武さん(助教)が中心となって順調に成果をあげています。行動解析、単一神経細胞活動計測、LFP多点同時計測などを組み合わせて、社会脳ネットワークの統合的理解を目指していきます。昨年8月に着任した植松さん(NIPSリサーチフェロー)は、眼球運動系をモデルとして、行動制御の新たな側面に関する研究に取り組んでいます。総研大2年生となって基礎体力をつけた新居さんは、他者情報の処理に関する難しい問題に挑戦しています。吉田さん(助教)は、いわゆる革新脳の重要な一翼を担い、マーモセット研究で順調な成果をあげています。戸川さん、柴田さん、山西さん、鈴木さんは、研究者が研究に専念できるようにと、いつも献身的に技術支援や事務支援をしてくださっています。今年度も部門メンバー全員の健康、協調、活躍を祈りたいと思います。  
 ドイツ・マグデブルグ大学のMarkus Ullsperger博士をパートナーとして2014年度からおこなってきたAMEDの国際共同研究プロジェクトは、昨年度末をもって無事に終了しました。Markusとは今後も別の枠組みで共同研究を継続していきます。  
さて、旧伊佐研時代から長きにわたり当部門に貢献された高田さんが、3月末をもって退職されました。高田さんには心から感謝いたします。また、今後のご健勝をお祈りいたします。  
 今年度は具体的な成果が期待される1年になります。スタッフ一同努力して参りたいと思いますので、引き続きご指導・ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。         
                     2018年4月 磯田 昌岐

2017年度

 新年度を迎え、当部門は発足から1年が経ちました。  
 昨年度は新部門の体制づくりや実験室のセットアップに力を注ぎました。部門内外の多くの方々からご協力をいただいて、順調なスタートをきることができたと思っています。そのおかげで、今年度からは4ブース体制で実験を展開することができます。研究ができる喜びを噛みしめながら、どんどん実験し、成果を学会や論文で発表していきたいと思います。また、今後も実験室をさらに大きくすべく、あらゆる努力をしてまいります。  
 研究面では、昨年11月に脳科学研究戦略推進プログラム「柔軟な環境適応を可能とする意思決定・行動選択の神経システムの研究」に採択されました。この新規脳プロ課題は、社会環境(外部環境)の変化に柔軟に対応するための意思決定と行動選択を支える神経システムの機能解明を目指すものです。このような適応能力は、ヒトを含む霊長類において特に発達していると考えられます。当部門は、マカクザルをモデル動物として「社会的な意思決定と行動制御のシステム的理解に向けた研究手法の開発」を担当します。  
 さて、春は出会いと別れの季節です。研究室のメンバー構成にも変化がありました。まず、総研大の博士後期課程に3年間在籍した辻本憲吾さんが無事に学位を取得し、3月に総研大を卒業されました。辻本さんは、半側空間無視のマカクザルモデルを確立し、詳細な行動解析と脳機能イメージング解析を行ったことが高く評価されました。新メンバーとしては、4月から助教として則武厚さんが加わりました。則武さんは、関西医科大学時代から一緒に社会的認知機能に関する研究を行ってきた同志です。また大学院生として新居桂陽さんが加わりました。新居さんのベースはシステム理工学です。辻本さん、則武さん、新居さんの益々のご発展を期待したいと思います。  
 7月には数年来国際共同研究を行っているドイツ・マグデブルグ大学のMarkus Ullspergerが来日し、日本神経科学大会で私とともに国際共同シンポジウムを開催します。このシンポジウムでは、Markusに加え、スイス・チューリッヒ大学のPhilippe Tobler、米国・スタンフォード大学のKeren Haroush、そして則武さんがトークを行います。活発な議論が予想されます。今から開催が楽しみです。  
 新しい部門の立ち上げにはエネルギーを要しますが、それを多くのスタッフとともに進めていけることは、とても大きな喜びです。研究室が大きくなっていくことを日々実感しています。これまでにも増して相互のコミュニケーションを図りながら、全ての研究員とスタッフがのびのびと持ち味を発揮できる研究室にしていきたいと思います。  
 今年度もどうぞよろしくお願いいたします。         
                      2017年4月 磯田 昌岐

2016年度

 平成2841日より、認知行動発達機構研究部門を担当させていただいております。伊佐 正先生が築かれました伝統ある部門をさらに発展させるべく努力してまいりたいと思います。
 当部門では高次脳機能のシステム的理解をめざし、霊長類動物を対象とする実験研究を広く展開しています。特に社会的認知機能の神経機構や、視覚的注意・意識の神経機構を解明するための研究に重点をおいています。多様な研究手法(行動学的手法、電気生理学的手法、神経薬理学的手法、ウイルスベクターを用いた神経活動操作法、認知ゲノミクス的手法、脳機能イメージング法)を組み合わせ、霊長類がもつ高度な認知・行動制御機能の神経機構を明らかにしたいと考えています。
 研究とは本来、自らの興味に導かれるままに行われるものであろうと思います。それを実施すること自体が自らにとっての報酬となるものが、研究活動の理想的な姿であると言えましょう。逆に、研究者本人にとって魅力的で感動的な研究テーマでなければ、一流の成果をあげることは難しくなります。脳科学における未解明の問題に対して強い興味を抱き、それを解明したいという主体的な動機があれば、研究の遂行過程で直面する困難を必ずや乗りこえることができると信じます。このような理念を共有し、システム神経科学の研究を大きく発展させていくことに共感していただける新進気鋭の諸君の参加を待っています。
 生理学研究所では、所内の研究者との連携や、共同利用研究制度をいかした所外研究者との交流が盛んに行われています。そのような活動を基軸として、わが国のみならず世界の脳科学研究者コミュニティの発展に貢献するとともに、次世代を担う若手研究者の育成と次世代の新しい脳科学研究の創成に取り組んでまいります。
             認知行動発達機構研究部門教授 磯田 昌岐