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2011年1月 伊佐 正 |
ご挨拶 暮れの12月に大学の同期会がありました。卒後初めてだった3年前の同期会はちょうど外国出張中で出席できなかったので、私にとっては今回が初めてでした。同級生の多くは臨床に進んでおり、臨床の現場から遠くにいる私にとっては、卒業以来初めて会うという人も少なくありませんでした。改めて4半世紀を超える時間が経ったことを実感しました。 この年齢になって、研究者になってまあ良かったのかな、と思うのは曲がりなりにも自分のキャンパスに自分の好きな絵を描き続けて来れたことです。実際、世間では多くの人は色々な事に縛られて自分の絵を描くことを許されなかったり、他人のキャンパスに絵を描くことを手伝わされるだけだったり、歳をとるにつれて自分の絵を描き続けることをやめてしまったりします。今でも自分の好きな絵を描くことに対して研究費という形でサポートがもらえることの幸運に感謝すべきでしょう。「自分の絵を描く自由な気持ち」を仕事の中に持ち続けられる事が研究者としての人生の核心的な部分で、これがなかったらやっていられないでしょうね。 勿論これまでの人生で自分一人で描いていた時間はとても短く、ほとんどが他の人と一緒に描いていた時間です。一緒に描いてくれる人にとってもその人が描いている絵の部分が私のキャンパスと空間的に少し角度を変えて交差するその人自身のキャンパスの一部でもあることを願いつつ。 ただ、わからないのは神様が私に与えた真っ白なキャンパスのうち、これまで自分が描けたのはどれくらいの部分なのだろうか、ということです。自分はまだ描きたかった絵のほんの一部しか描けていないと思っています。正直、焦っています。実はどれくらいの広さのキャンパスが与えられていて、自分はこれからどれくらい描き続けられるのかもわからない。自分が歳をとって筆を取ることができなくなっても自分の気持ちを継いでくれる人が描き続けてくれるような広いキャンバスが残されているのでしょうか?それとも沢山残されていると思っているのは実は思い過ごしで、もう殆ど白地の部分は残されていないのでしょうか?不安な気持ちが湧いてこないわけでもありません。 いずれにしても大事なことは毎日休まずに少しずつでも描き続けることなのでしょう。今年の年始にあたっては、何故かこんなことを思いました。
「ご挨拶2010年12月U」 「ご挨拶2010年12月T」 |
伊佐 正 教授 ![]() |
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