生理学研究所 Takemura Lab Sensory & Cognitive Brain Mapping
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所

お知らせ

生理学研究所への着任について

皆様、

令和3年9月1日付で自然科学研究機構 生理学研究所 システム脳科学研究領域 感覚認知情報研究部門 教授を拝命致しました竹村浩昌と申します。新たに部門を立ち上げるにあたり、研究室ホームページを開設させていただきました。どうぞよろしくお願い致します。

博士号取得後9年半という時間が過ぎていたものの、今回生理学研究所に教授として採用して頂いたのは全くの抜擢人事と言うほかなく、異動に際して「本当に実績も経験も無い自分で良いのだろうか」と言う不安があったことは否めません。しかしそれと同時に、過去にも30代の研究者を積極的に教授として採用し、コミュニティを先導する研究者として輩出してきた歴史と伝統を持つ生理学研究所で、新たな思いでチャレンジができることに大きな希望を感じています。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、当研究室の部門名「感覚認知情報研究部門」は小松英彦先生が生理学研究所に在籍されていた時代の部門名になります。研究室の開設にあたり色々な思いがよぎりましたが、これまでの私の研究は視覚系を主な対象にしており、そして何より私自身が小松先生の孫弟子にもあたりますので、この部門名を基に研究室を立ち上げさせていただくのが最良の選択肢ではないかと考えました。この名に恥じぬよう立派な研究部門に成長させたいと考えています。

これから部門を主催するにあたり、大まかに4つの目標を持っています。第一の目標は、脳研究における種・計測モダリティ・空間スケールのギャップを埋めるような研究に取り組み、新たな知見を得ることです。生理学としての脳研究の最終的なゴールはヒトの脳を理解することだと思いますので、ヒトを対象としたMRI研究を主軸としつつ、こうしたギャップを埋めるような研究に取り組むことで研究を広く展開させていきたいと考えています。

第二の目標は、脳における構造と機能の連関を解明することです。別の言い方をすれば、「ソフトウェア」としての脳の側面(機能)が、どのような「ハードウェア」(構造)によって生じているのかを理解したいということになります。この本質的な問題に取り組むため、脳の構造的な側面と機能的な側面の両面からアプローチする研究を推進していきます。

第三の目標は、ヒトの脳を非侵襲的に計測できるMRI研究の利点を生かして、日本社会で生活されている皆様にとって有益な成果を社会に還元していくことです。これまで、眼科疾患を対象とした東京慈恵会医科大学の先生方との共同研究で既に成果が得られています。共同利用機関という生理研の特徴や役割を最大限生かしつつ、部門での研究成果を共同研究を通じて社会に還元していきたいと考えています。

第四の目標は、ヒト脳イメージング分野における人材の育成に寄与することです。ヒトを対象とした非侵襲脳イメージング分野においては、近年OHBMなどの国際会議における日本の研究者のプレゼンスの低下が顕著になっています。総合研究大学院大学の教員としての大学院生の育成や、生理学研究所トレーニングコースなどを通じて、今後は岡崎から世界で活躍する研究者を輩出することに貢献していきたいと思いを新たにしています。

今回教授職を拝命することになりましたが、研究室主催者としては私はまだ未熟な研究者に過ぎないのが現状だと思います。別の言い方をすれば、新たなことを多く吸収し大きく成長するチャンスをいただけたと感じています。新たなスタートを切る感覚認知情報研究部門が実りある成果を出し社会に貢献していくためには、コミュニティの皆様からのご支援やご助言が不可欠になると考えています。常に学ぶ姿勢を忘れずこれからも邁進していく所存ですので、何卒どうぞよろしくお願い申し上げます。

令和3年9月1日
自然科学研究機構 生理学研究所
システム脳科学研究領域 感覚認知情報研究部門
教授 竹村 浩昌