16 広報活動・社会との連携

16.1 概要

かつては大学や研究所、特に自然科学系の施設は「象牙の塔」と称され、世間とは隔絶された存在であった。しかし、研究に対する倫理観が厳しく問われるようになり、また血税をもって行われている研究は、当然ながら国民に対する説明責任を有している。それはいわゆる「評価」とは別の次元における国立研究施設の責務である。この点に関しては「広報活動」と「社会との連携(アウトリーチ)」が2つの大きな柱となる。

昨年度、生理学研究所では、広報活動を行う広報展開推進室や医学生理学教育開発室とHP管理などをおこなってきたネットワーク管理室、また点検連携資料室を一元化し「情報処理発信センター」をスタートした。 この組織改編により広報展開推進室を中心として、広報活動・社会との連携は目覚ましく発展した。以下活動の概要を数字として示す。

岡崎地区における地域広報として、岡崎げんき館(岡崎市保健所)との提携にもとづき「せいりけん市民講座“からだの科学”」を5回開催、毎回200名程度が参加した(資料参照)。また、2008年1月より創刊した科学絵本「せいりけんニュース」は、隔月で8,000部配布し、市民からの問い合わせが増えるなど、市民に愛される冊子となった。また、2008年12月10日に開設した生理学研究所広報展示室は30グループを超える見学があった。他の2研究所と共に発行している市民向けの広報誌「OKAZAKI」は近隣高校とのアウトリーチ活動をアピールする冊子に改編され、岡崎高校や岡崎北高校と岡崎3研究所の取り組みを紹介した。

機構との広報・アウトリーチ活動の連携についても、広報展開推進室の室長および専任准教授をコーディネータとして、精力的に行われてきた。機構に設置された「広報に関するタスクフォース」を中心として、自然科学研究機構の存在と、そこで行われている研究内容を、どのように世間にアピールしていくか、について引き続き討議している。春と夏に行われる自然科学研究機構シンポジウムは、一定の成果をあげている。また2008年度設置された岡崎3研究所「アウトリーチ活動連絡委員会」は3回会合を開き日本科学未来館との連携協力につき話し合い、岡崎と未来館でそれぞれイベントを開催した。

16.2 個別活動報告

広報展開推進室の具体的な業務内容は以下のように、極めて多岐にわたる。アスタリスク(*)は本年度主として活発な活動がみられたもの。シャープ(#)は今年度あらたに加わった事業である。

1* ホームページのシステム改訂、管理・維持
各研究室の紹介、最新の研究内容の紹介、総合研究大学院大学の紹介と大学院生の入学手続きに関する情報、人材応募、各種行事の案内などを行っている。2009年にはホームページ・システムの全面的な改訂を行い、バックアップ体制・サポート体制を充実させた。またMovable Typeを導入し、イベント情報・研究紹介等に迅速に対応できるシステムを整えた。最近は研究者のみならず一般の方からのホームページを利用しての生理学研究所へのアクセスが増加しており、2004年度に年間1,000万件を超え、2008年度には年間2,000万件を超えた。さらに2009年のシステム変更後のアクセス数増加は顕著で、2009年度のアクセス数は前年比30%増の見込みである(図1参照)。


図1.5 過去10年間に生理研ウェブサイトへのアクセス数は急激な増加を示している。ここではSuccessful requestsの数を示した。単位はrequests。2009年度の数値は、4月から12月までの数値からの予測値。

2* 施設見学会 
30回以上行われた

3 研究成果のWEBによる発信 

4 年報・要覧・パンフレット作成

5* 外部向け「せいりけんニュース」発行
隔月で8,000部を発行。小中学校や高校、一般市民に対して、無料で配布している。医師会や歯科医師会との提携に伴い、岡崎市内のクリニック等にも置かせてもらっている。

6 内部向け「せいりけんニュースオンライン版」とメーリングリストによる研究所内情報共有
研究所の所内むけの情報共有を目的としたメール配信を行った。当初、自動配信機能を付加する予定であったが、これまでのところ達成されていない。

7 機構関係者への定期的情報提供

8 機構シンポジウム対応 
2009年度は、9月(および3月の)機構シンポジウムにおいてブース展示を行った。

9* 「心と体の科学」教育プラットフォーム
2007年度に医学生理学教育開発室を中心として提案した「医学教育人体生理学教育パートナーシップ共同利用プラットフォーム」を改め「心と体の科学」理解増進事業を、岡崎市教育委員会理科部と提携して開始した。中学生の見学体験授業を通じた連載記事を、せいりけんニュースに掲載している。

10 3機関広報誌OKAZAKI編集
2008年より、岡崎高校・岡崎北高校を中心とした近隣の高校への教育アウトリーチを全面に押し出した編集方針に変更。

11* 岡崎医師会等地域との連携
医師会や保健所、歯科医師会との提携に基づき、講演会等の各種事業を行った。

12* メディア対応(新聞・TVなどの取材、記者会見など)
実績については図1.6及び資料(新聞報道)参照。所長会見を隔月で行い、また月1-2回の研究成果プレスリリースを行ってきた。

13 自然科学研究機構「広報に関するタスクフォース」への参加

14 機構内他研究所一般公開への協力
分子科学研究所一般公開とあわせ、岡崎市理科作品展の優秀な小中学生の自由研究発表の場「せいりけん未来の科学者賞」を授与した。

15 岡崎3機関アウトリーチ活動連絡委員会への参加

16* 広報展示室の整備と見学受け入れ
昨年度来、引き続き広報展示室の整備を行った。主として団体見学時に生理学研究所を紹介するために用いている。また、一般からの見学受け入れを、ホームページ上から行っている。

17 日米科学技術協力事業「脳研究」分野の広報への協力
神経科学学会大会において、アカデミアブース展示とプレゼンテーションを行い、生理学研究所が主体となっている日米脳事業の宣伝活動を行った。

18 文部科学省への情報資料提供
新聞記事等はじめ、せいりけんニュース等、生理学研究所の情報資料提供を行った。

19* 日本科学未来館とのMOU締結とキックオフイベントの開催
岡崎3機関が協力して日本科学未来館とのMOU(Memorandum of Understanding、了解覚書)締結をし、キックオフイベントを岡崎と未来館で開催した。

20. 出前授業
県内外の高校への出前授業は6回、岡崎市近郊の中学校への出前授業は18回行われた資料参照

21. 教育機材 マッスルセンサーの開発
小中学生向け教材である簡易筋電位検知装置「マッスルセンサー」を開発した。特許申請中である。


図1.6 2008年度以降の新聞報道件数。2008年度には月平均13件。2009年度には月平均14件。2007年度の月平均6件に比べて件数が大きくのびている。