15 トレーニングコース
15.1 概要
第20回生理科学実験技術トレーニングコースは、8月24日(月)より8月28日(金)まで生理学研究所の明大寺、山手の両キャンパスで行われた(担当:重本隆一教授)。例年通り下記のようなコースを設定し、受講者を公募したところ234名の応募があった。本来であれば全員の方に受講していただきたいところであるが、受け入れキャパシティの問題があり、この中から152名の方々が採択され実際に受講された。
プログラム
第20回生理科学実験技術トレーニングコース
“生体機能の解明に向けて”
―分子・細胞レベルからシステムまで―
8月24日(月)
13:00 | 挨拶 岡田 泰伸 生理学研究所 所長 |
13:05 | 講演 吉村由美子 生理学研究所・神経分化研究部門・教授 「大脳皮質における特異的神経結合とその経験依存的発達」 |
15:00 | 研究紹介:各部門・研究室から関連領域で注目されている実験技術を中心に話題を提供した。 |
8月25日(火)~ 8月28日(金)
下記の各コースに分かれて実習を行った。
8月26日(水)18:00より交流会を実施した。
実習コース
- 生物試料の位相差低温電子トモグラフィー
- 免疫電子顕微鏡法
- 海馬神経初代培養と生細胞イメージング
- ジーンターゲティングマウス作製の基礎から応用へ
- in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析
- 2光子顕微鏡による神経・分泌細胞の形態と生理機能の可視化解析法
- パッチクランプ法
- スライスパッチクランプ法
- ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析
- 摂食・飲水行動発現機構入門
- 麻酔下動物での感覚応答の多チャンネル記録
- 慢性動物実験法入門
- 視知覚の脳内メカニズムの実験的解析
- 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
- ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門
- 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング
各コースのさらに具体的な内容に関しては、ウェブサイトwww.nips.ac.jp/training/2009/courses.htmlを参照されたい。
15.2 アンケート結果
トレーニングコース終了時には、例年参加者からアンケートをいただいている。最近5年間のアンケートの主な質問項目に対する回答結果の集計を資料に掲載した。ほとんどの項目について、毎年似かよった結果が出ており非常に安定した高評価を得ていることが分かる。具体的なコメントについてもウェブサイト 上に公開されている。
トレーニングコース全体への感想としては好意的なものがほとんどであるが、各参加者のバックグラウンドや研究レベルによって、一層多様な対応が必要な点も見受けられる。また、今年度は新たに交流会の2次会を実施した。2次会では午前2時ごろまで活発な論議と交流が行われた。交流会にはもっと多くの講師の参加を求める声があった。またアンケートではコース中の食事のサポートが乏しいことが問題点として多くの方々から指摘されている。特に山手地区における福利厚生施設の充実が今後の課題であると考えられる。
15.3 今後の課題
開始から20年目となり、生理科学実験技術トレーニングコースは若手研究者や学生の間によく知れ渡っており、完全に定着しているということが言える。本コースをきっかけとして生理研との共同研究が始まったり、総研大に入学したりすることも少なくない。昨年度より、多次元共同脳科学推進センターが発足し、生理学研究所は神経科学の若手研究者を育成する拠点としての使命を一層はっきりと帯びるようになっている。生理科学実験技術トレーニングコースは、このよう生理研の使命を果たしていく上でも中心的な行事として一層発展していくものと考えられる。今後は、より多くの多様な若い研究者や学生の方々にどのように対応していくのか、一週間という限られた時間では習得しきれない研究方法や技術についてどのような継続的なサポートを提供していけるか、といったことが課題であると考えられる。
このトレーニングコースは、国内の大学院生、若手研究者を対象として開催されており、使用言語としては日本語が用いられる。海外の学生・若手研究者もトレーニングコースに含めてはどうか、という意見が以前から寄せられている。しかし短期間で効率的な技術習得を図るためにはトレーニングコースでは日本語を使わざるを得ないので、海外の学生・若手研究者にトレーニングコースを開催するのであれば、別に小規模なコースを実施する必要があるであろう。今年度はIBRO APRC Advanced Schoolを生理研で開催したので、その成果を今後の計画に活用していきたい(IBRO_APRC_School参照)。