2 中期計画・年度計画・評価

2.1 はじめに

生理学研究所では、下記の点検評価作業が行われている。

  1. 文部科学省国立大学法人評価委員会による評価
    1. 事業年度の業務実績に関する評価
    2. 中期目標・中期計画期間の評価
  2. 外部評価を含めた自己点検評価
  3. 研究教育職員の 業績調査および任期更新審査

2.2 文部科学省国立大学法人評価委員会による評価

前年度にあたる2009(平成21)年度の業務実績に関する評価は、ほぼ例年通りに行われた。この評価は主に研究以外の業務の評価を行う。業務実績報告書とその付属資料は、自然科学研究機構の評価に関するタスクフォース(担当理事 観山正見国立天文台台長、座長 櫻井隆国立天文台副台長、生理研委員は井本教授、南部教授)が中心となって作成され、機構の諸会議で審議・改訂された後、6月末に文部科学省に提出された。8月に文部科学省評価委員会のヒアリングが行われた。11月5日付けで評価結果が公表されている(評価結果の全文を第Ⅶ部に掲載)。

自然科学研究機構の評価は、業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善、自己点検・評価及び情報提供、その他業務運営に関する重要目標の4項目で、いずれも「中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる」(5段階評価の上から2番目)という評価であった。

内容的には、機構全体の取り組みとして、新分野創成センターが取り上げられ、「5機関の分野間連携による自然現象の研究データを用いた時間的空間的階層連結の手法の開発などの成果を上げていることは評価できる。今後は、新分野創成センターにおける研究活動を一層推進し、さらなる研究成果を創出することが期待される。」と評価されている。また国際連携や情報提供に関しても触れられている。また、生理学研究所に関しては、サバティカル制度等を利用した長期滞在型共同利用・共同研究と、多次元共同脳科学推進センターのブレインストーミング「多次元トレーニング&レクチャー」が特記事項として評価されている。

また2010年度は、第1期中期目標・中期計画期間(2004~2009年度)の評価の確定作業が行われた。第1期の最初の4年間の評価は2008年度に大規模に行われ、暫定評価として公表されているが、6年間全体の評価とするために、2008~2009年度の実績評価が行われた。評価の方法は、2008年に行われた評価の方法に準じて行われ、研究業績に関しては、文部科学省国立大学法人評価委員会からの要請に基づき大学評価・学位授与機構が評価を行った。しかし実際に実施された評価は大幅に簡素化され、大学評価・学位授与機構の評価委員会による現地調査も行われなかった。評価資料は2010年6月に提出された。評価結果は、2010年度中に公表される予定である。暫定評価の結果を変更するような様な大きな出来事がなかったため、暫定評価とほぼ同じ内容で評価が確定される見通しである。

2010(平成22)年度は第2期中期目標・中期計画期間の初年度であるが、年度計画は第1期と比較して簡素化されている。生理学研究所関係部分を抜粋した平成22年度年度計画を第Ⅶ部に掲載した。

文部科学省国立大学法人評価委員会が今後行う評価については、概要が次第に明らかになってきている。第2期中期目標・中期計画期間の評価は、法律の改正がない限り今までの枠組みで行われるが、実際の事務作業はかなり軽減される予定である。毎年の年度評価は、報告書の記載事項が簡素化され、3年目および終了時にのみこれまでと同じ程度の記載が必要となる。研究業績に関しては、第1期と同様に大学評価・学位授与機構が評価を行うことになる予定である。詳細はまだ明らかになっていないが、前回の方法を踏襲する可能性が高い。評価の制度が簡素化されることは研究者の負担を軽減するという観点からは好ましいことであるが、研究に関しては6年間という長い期間の評価を一度に行うこととなり、必要なデータを着実に整理・蓄積して行く必要がある。

2.3 生理学研究所の点検評価

本点検評価書がこれに当たる。この点検評価作業は1993年より毎年行われているが、評価内容の詳細は毎年変化している。基本的には2つの内容から構成され、その一つは、研究所全体の活動を総括し、問題点の抽出と解決策の模索を行うことである。所内の研究教育職員等が課題を分担して報告書案を作成し、点検評価委員会ならびに運営会議にて審議していただく。もう一つは、外部有識者による研究部門の業績評価である。毎年、3研究部門の外部評価を行うので、それぞれの研究部門は4~5年毎に外部評価を受けることになる。外部評価者は、1研究部門あたり国内有識者2名、国外有識者1名を基本としている。国内の外部評価者の選択においては、日本生理学会、日本神経科学学会に推薦を依頼している。海外の外部評価者に関しては、招聘費用の問題のため、学会等で来日する有識者に依頼していることが多い。また生理学研究所で行われている研究の概要および方向性が把握しやすいように、研究総括および研究紹介の章を設けている。

2.4 研究教育職員の任期更新審査

生理学研究所では、2002年より任期制をとっているが、2004年4月の法人化の際に任期制の制度が変ったため、2004年から現行の任期制が行われている。生理研の任期制は、採用される教授、准教授、助教に適用され、任期は5年とする。任期が更新された場合は、任期を定めない採用とする。任期更新の審査は、生理研運営会議の委員6名(所外3名、所内3名)より構成される任期更新審査委員会で審議される。今年度は審査対象者が3名であり、審査対象者の研究発表を含めた委員会を開催し、審査結果を所長に報告した。

任期更新の判断基準は、明文化してウェブサイトにも掲載しているが、実際の審査では判断が難しいことがある。これまでの審査の積み重ねを活かして、今後必要に応じて、現行制度の見直しを検討して行くことが望まれる。

一方、長期間にわたって研究業績が芳しくない任期制でない研究教育職員に対する対策は、これまでにもいろいろな案が検討されてきたが、今年も可能な妙案は得られなかった。

2.5 効果的な評価制度を目指して

今年度は、昨年度に終了した第1期中期目標・中期計画期間の結果を踏まえ、国立大学・大学共同利用機関の評価の在り方や実施方法等について本格的に議論されるべき年であった。しかし政権交代や財政状況の悪化という社会的背景のために、一部で意見が述べられている以外に、大学評価は大きな議論との対象となっていない。

第1期の中期目標・中期計画期間を振り返って、評価制度によるメリットとしては以下のような事項があげられる。

一方デメリットとしては、次の様な事項があげられる。

制度上定められた毎年の評価および中期計画期間の評価は、粛々と行われなくてはならない。しかしこれらの制度的評価は、後ろ向きの評価であり研究所の将来構想を形成するための資料としてはあまり役立つことはない。将来の発展に向けての評価システムには、研究所独自の情報収集と分析が必要となってくるであろう。


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