16 生理科学実験技術トレーニングコース

16.1 概要

第21回生理科学実験技術トレーニングコースは、8月2日(月)より8月6日(金)まで生理学研究所の明大寺、山手の両キャンパスで行われた(担当:定藤規弘教授)。例年通り下記のようなコースを設定し、受講者を公募したところ256名の応募があった。本来であれば全員の方に受講していただきたいところであるが、受け入れキャパシティの問題があり、この中から146名の方々が採択され実際に受講された。

プログラム
第21回生理科学実験技術トレーニングコース
“生体機能の解明に向けて”
—分子・細胞レベルからシステムまで—
日時 2010年8月2日(月)~2010年8月6日(金)

講演:8月2日(月) 13:05~
「研究テーマをどのように選んだか?グリア細胞をなぜ研究しているのか?」
池中一裕(生理学研究所・分子神経生理研究部門 教授)

講義:8月2日(月) 18:00~
「動物実験教育訓練:—生理科学研究と動物実験—」
佐藤 浩(生理学研究所・動物実験コーディネーター室 特任教授)

交流会:8月4日(水) 18:00~

トレーニングコース:8月2日(月)~6日(金)

  1. in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析
  2. 海馬神経初代培養とその解析法
  3. 免疫電子顕微鏡法
  4. ジーンターゲティングマウス作製の基礎から応用へ
  5. パッチクランプ法
  6. -1. スライスパッチクランプ法
    -2. In vivoパッチクランプ法
  7. ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析
  8. 摂食・飲水行動発現機構入門
  9. 麻酔動物での電気生理実験
  10. 慢性動物実験法入門
  11. 視知覚の脳内メカニズムの実験的解析
  12. 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎
  13. ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門
  14. -1. 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1) (生体アンプとバスチェンバーの作製)
    -2. 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2) (C言語によるPICプログラミング)
  15. はじめての電子線トモグラフィー

16.2 アンケート結果

トレーニングコース終了時には、例年参加者からアンケートをいただいている。最近7年間のアンケートの主な質問項目に対する回答結果の集計ならびに具体的なコメントを資料に掲載した(第VI部 アンケート)。ほとんどの項目について、毎年似かよった結果が出ており非常に安定した高評価を得ていることが分かる。トレーニングコース全体への感想としては好意的なものがほとんどであるが、各参加者のバックグラウンドや研究レベルによって、一層多様な対応が必要な点も見受けられる。またアンケートではコース中の食事のサポートが乏しいことが問題点として多くの方々から指摘されている。特に山手地区における福利厚生施設の充実が今後の課題であると考えられる。水曜日に行われた交流会においては、ジャズ演奏を加えるなどの工夫が好評であった。交流会の時間を長めにとることが望ましいようである。

16.3 今後の課題

開始から21年目となり、生理科学実験技術トレーニングコースは若手研究者や学生の間によく知れ渡っており、完全に定着しているということが言える。本コースをきっかけとして生理研との共同研究が始まったり、総研大に入学したりすることも少なくない。2008年度より、多次元共同脳科学推進センターが発足し、生理学研究所は神経科学の若手研究者を育成する拠点としての使命を一層はっきりと帯びるようになっている。生理科学実験技術トレーニングコースは、このよう生理研の使命を果たしていく上でも中心的な行事として一層発展していくものと考えられる。今後は、より多くの多様な若い研究者や学生の方々にどのように対応していくのか、一週間という限られた時間では習得しきれない研究方法や技術についてどのような継続的なサポートを提供していけるか、といったことが課題であると考えられる。受講者の背景は様々でそのニーズも多様であり、実験技術の初級編を中心にしたコースでは、中級、応用編の希望も出ていた。さらには、国内のみならず海外の学生・若手研究者も対象にすることの是非など、今後の検討課題は多い。


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