ご挨拶

2007年3月     伊佐 正

3月になりました。なんだかいつ桜が咲いてもおかしくないような日が続いています。
2月の上旬はHFSPの共同研究でカナダからDouglas Munozさんがラボに1週間弱滞在しました。サルの上丘で彼らが記録した応答のどの部分が上丘にintrinsicなメカニズムで起きるボトムアップ的な現象で、どの部分が皮質などの上位中枢を介するトップダウン的なメカニズムで起きるのかを検討しようというアイデアでの共同研究で、スライスでの実験を何度か行いました。彼自身もパッチクランプをやってみて、いくつかpromisingなデータが取れたこともあって、大変興奮していました。何でも彼の最初の仕事は学部学生の時の無脊椎動物での細胞内記録実験だったそうで、細胞内電位を見るのはそれ以来だと言っていました(勿論上丘ニューロンは初めて)。我々のスライスグループのメンバーも、これまで自分達がスライスで観察している現象が本当にvivoで起きているのかと内心どこかで不安に思っていたようですが、彼の話を聞きながら一緒に仕事することで随分刺激になったようでとても良かったです。特に彼のoutgoingな性格は短い滞在でしたが、ラボのメンバー皆にとってとても印象に残ったと思います。
2月に中旬にはドイツのチュービンゲン大学からPeter Theirさんが訪問され、2日間ラボに滞在されました。彼は臨床の医師でもありますがCognitive Neurology Unitを主宰し、human でのfMRIやclinical study、サルのfMRI、電気生理実験からスライスまで様々な研究を手がけています。このような“優れた個人”を中心において統括させようとするのはドイツなどでは時折見られることのようです。訪問されたときは少し体調不良なようでしたが、我々の研究ひとつひとつについて思慮深い質問を多くしていかれ、洞察力の深さがとても印象的でした。またサルを用いた実験に関するお互いの国の現状について意見交換をできたのも有意義でした。
先週から長年の共同研究者であるスウェーデンのAlstermarkさんとPetterssonさんが来ており、週末は徹夜の急性電気生理実験を行いました。さすがに翌日の午後までやるとあと2-3日尾を引くようになったのはお互い年のせいでしょうか?我々には火曜日に大阪でCRESTの研究成果報告会があり、徹夜明けにゆっくり寝ていられなかったのも一因だと思います。
報告会にむけてラボ内のCRESTでのプロジェクト関係者はポスター発表の準備に追われましたが、このような折々の会議はデータをまとめて研究の進捗を確認する上で有意義だったと思います。
9日には東大精密工学の横井先生をご招待し、セミナーをお願いしています。横井先生とは最近色々な会でご一緒したりしているのですが、義手の開発から、義手を使用している際の脳の変化をfMRIで解析されたりと優れた研究をおられます。セミナーも面白く、またその後すしをつまみながらの会食も盛り上がりました。今後の共同研究の可能性も議論でき、楽しみにしています。
3月11-15日に沖縄大学院大学(OIST)で開催された“OIST Workshop on Cognitive Neurobiology”に参加してきました。これは世界のトップクラスのラボからの発表が勢ぞろいでした。今後OISTで計画されている霊長類脳研究センターのグランドデザインを検討するという意味もあり、大変有意義な議論が交わされました。
今後大阪での日本生理学会、3月末にセビリアでのNeural Control of Movement Societyのmeeting、5月にはフロリダでのVisual Science Societyのmeetingとしばらくいろいろな学会発表が続きます。また7月にGordon Conference、その後統合脳の中間評価、8月にはCRESTの中間評価と息が抜けない日々が続きそうです。今春は過去数年間の成果を学会発表するとともに、一気に論文までつなげていかなくてはいけないと思っています。

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 伊佐 正 教授 
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