心循環シグナル研究部門では、心臓に隠された謎(情報)を読み解くための基礎研究を、ラットやマウスなどの動物や動物細胞を用いて行っています。
心臓の頑健性(心筋細胞が生まれてから死ぬまで増殖することなく動き続けるという特徴的な性質)を制御するメカニズムを、分子・細胞レベルから細胞・個体レベルまで幅広い階層で研究することで、健康寿命の延伸に貢献しうる革新的な医療基盤技術の開発も目指します。
具体的には、以下の2つに興味を持って研究を進めています。
1.心臓の収縮力(Contractility)を制御する膜タンパク質:心臓の大きさや硬さ、あるいは心筋の交感神経活動応答(陽性変力作用)は心臓の運動機能を規定する因子です。私たちは、細胞膜上に存在する脂質作動性カチオンチャネル「transient receptor potential canonical (TRPC) 3 」が心筋のContractilityを制御する標的分子であることを特定し、そのメカニズムにTRPC3と活性酸素生成酵素(NADPH oxidase)タンパク質との相互作用(Protein-Protein Interaction: PPI)が在ることを見出しています。
2.心筋の頑健性を高めるレドックス制御機構:細胞の膜電位形成や化学反応はすべて電子の授受(酸化還元:レドックス)によって行われている。我々はシステインパースルフィド(Cys-SSH)をはじめとするレドックス活性の高い過イオウ化分子(活性イオウ分子)がミトコンドリアの品質管理やエネルギー代謝を制御することを明らかにしてきました。最近、特定の活性イオウ分子を制御することで心筋細胞のストレス抵抗性や拍動能を増強できることを見出し、その機構解析に取り組んでいます。
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