研究内容


1)タイトジャンクションによる上皮の透過性制御が恒常性維持に果たす役割の研究 ▷詳細
2)多角形の上皮細胞の角:トリセルラージャンクションの分子構築と機能の研究 ▷詳細

3)無脊椎動物の上皮バリア機能を担うセプテートジャンクションの研究 ▷詳細

4)細胞外環境変化に対する上皮バリア機能の応答機構の研究 ▷詳細

5)細胞間接着装置の再編成の研究 ▷詳細

タイトジャンクションについての総説はこちらから


研究の背景

上皮の細胞間接着

 私たちの器官の多くは、細胞が敷石状に整列した上皮という細胞のシート構造からできています。体の外と中を隔てる皮膚と消化管はもちろん、肺、肝臓、腎臓など、外から見ればかたまりに見える器官も実は大小の上皮の袋、管が集まってできたものですし、血管、リンパ管を作る内皮、体腔を覆う中皮も上皮の仲間です。すなわち、「多細胞体制とは上皮の活用である」、と言ってよいかもしれません。

 もともと単細胞だった生命が、遺伝子を交換する接合のために特別に作った構造が細胞間接着の起源ではないかという説があります。さらに進化の過程で単細胞は様々な方法で集合を試みたのでしょう。その中でも比較的単純な様式として、もともと非対称性をもつ単細胞が同じ向きに一層で横並びになって、ボルボックスのように袋を作ったのが上皮の始まりであったと想像されます。この単純なシート構造が実は多細胞体制発展のための応用性を秘めた大発明だったのです。

 動物の上皮は、極性の発達した上皮細胞が、自らが作った基底膜という絨毯を足場としながら、お互い強く接着してシート状に並んだもので、袋や管を作る性質があります。上皮の最も基本的な性質として、1)上皮をはさむ両側の空間を仕切るバリアを形成すること、2)その両側の間で選択的かつ方向性をもった物質輸送を行うこと、があげられます。これらの上皮のはたらきによって体の中にいくつもの異なる溶液環境が存在することが多細胞動物の高度な生理機能を可能にしていると言えます。さらに、袋や管を作る機能を局面に応じて自ら巧妙に調節しながら、上皮は器官や個体の形態形成に直接関わっています。上皮は、一見単純でありながら、よくできた奥が深い構造なのです。上皮のこのような性質を細胞生物学の視点から理解するうえで、上皮細胞の「極性」と「接着」は根源的なキーワードであり、その分子メカニズムの解明は重要な研究テーマとなっています。

 私たちの研究室では、上皮細胞がお互いの接着のために備える「細胞間接着装置」の分子構築と機能の解明を通じて、上皮の重要なはたらきの背後にある分子機構を理解したいと考えています。現在、細胞間接着装置タイトジャンクションによる上皮透過性の制御に関する研究に力を注いでいます。さらに、上皮細胞の形作り、上皮の形態形成における細胞間結合の役割にもチャレンジしてゆきたいと思います。得られた研究成果は、上皮輸送やバリア機能の破綻、さらにガンといった、上皮が関与する様々な病態の理解にもつながることが期待できます。

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