「次世代脳」プロジェクトについて

平成28年度より、がん、ゲノム、脳であった支援制度を、広く生命科学分野に広げ、新学術領域「学術研究支援基盤形成」として、実施することになりました。旧制度からの発展強化により、4つのプラットフォームがたちあがり活動を開始しています。脳に特化したプロジェクトを包括脳から引き継ぐべく、脳科学関連の新学術領域より協力を得、次世代脳プロジェクトが発足しました。

 

脳科学全体集会を開催します

脳科学研究の中・長期的な展望に関して皆さん方との間で情報共有と意見交換を行う機会を持つとともに、特に若手研究者向けの学術講演会や基盤技術開発に関する情報交換会・討論会など、魅力的なプログラムを企画したいと考えています。統合脳、そして包括脳と引き継がれてきた、通常の学会とは異なる、コミュニティによるコミュニティのための全体集会を開催します。

 包括脳ネットワークで毎年開催してきた「脳科学全体集会(夏のワークショップもしくは冬のシンポジウ ム)」を、今後も脳科学研究者コミュニティの恒例行事として継続していく旨を皆さん方にお伝えしたいと思います。昨今の光遺伝学・化学遺伝学を利用した神 経活動の操作技術や可視化技術をはじめとする、さまざまな最先端技術の開発は、多種多様の高次機能を司る神経ネットワークメカニズムの解明に向けた研究に 飛躍的な進展をもたらしています。そこで、我が国の脳科学研究の更なる発展と次世代を担う中堅・若手研究者の育成を目指し、「次世代脳」と名付けた新たな 学術集会を開催すべく、実行委員会を立ち上げて検討してきました。その結果、脳科学に関連した新学術領域に経済的支援を得て、生理学研究所学術研究支援室に事務局を担当いただき、2016年より毎年12月にシンポジウムを開催することにいたしました。学術集会代表は、開催ごとに領域代表の先生に順番にご担当いただく予定です。

プログラムの詳細については年度毎のウェブページに掲載しています。新学術領域ならびに学術変革領域(A)をコアにしたさまざまなシンポジウムや実行委員会企画シンポジウムを予定しています。
統合脳、そして包括脳と引き継がれてきた、通常の学会とは異なる、コミュニティによるコミュニティのための全体集会である「次世代脳」を、我が国の脳科学 研究を支える皆さん方の手で是非とも成功に導いていただきたいと強く要請する次第です。2020年度のシンポジウムは残念ながらCOVID-19の影響を受け開催を断念いたしましたが、2021年度は12月15日~18日にオンラインで開催することとなりました。どうか万障繰り合わせ、多数の皆さん方の「次世代脳」へのご参加と熱いご議論を宜しくお願いします。

「次世代脳」実行委員会(五十音順)
礒村宜和(東京医科歯科大学)・大塚稔久(山梨大学)
狩野方伸(東京大学)・小林和人(福島県立医科大学)
高田昌彦(京都大学)・橋本浩一(広島大学)
尾藤晴彦(東京大学)・藤山文乃(北海道大学)
古屋敷智之(神戸大学)・松本正幸(筑波大学)
渡辺雅彦(北海道大学)・渡部文子(東京慈恵会医科大学)
学術研究支援基盤形成
 ─生命科学分野に広がる新たな支援体制─のご紹介

 

 平成22年度にスタートした「包括型脳科学研究推進支援ネットワーク(包括脳ネットワーク)」の研究支援活動は、一年間の延長期間を経て平成27年度で終了しました。これまでにネットワークに登録された脳科学研究者の数が2,000名を超えるとともに、13の拠点による精力的なリソース・技術開発支援活動、各種委員会による研究集会、若手育成、データベース、アウトリーチなどの総括支援活動、さらに、脳科学に関連した多数の新学術領域研究主催の合同シンポジウムによる異分野研究交流など、6年間の支援活動をとおして培われてきたボトムアップの研究支援によって、多数の優れた研究成果が生み出されました。

今年度からは、従来の生命科学系3分野(がん・ゲノム・脳)による「包括支援プログラム」を広く生命科学系分野全体に波及できるよう発展強化させ、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点を中核機関として、「学術研究支援基盤形成」(先端技術基盤支援プログラムと研究基盤リソース支援プログラムからなる)が、6年間の予定で実施されることになりました。具体的には、「先端技術基盤支援プログラム」として「先端モデル動物支援プラットフォーム」、「先端バイオイメージング支援プラットフォーム」、「先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム」が、「研究基盤リソース支援プログラム」として「コホート・生体試料支援プラットフォーム」が設置され、これらのプラットフォームによる新たな支援事業がスタートし、支援課題の公募がおこなわれています。

また、プラットフォーム全体を統轄する組織として「生命科学連携推進協議会」を設置し、生命科学系研究者に対する効果的な支援事業の推進を目指しています。

 「先端技術基盤支援プログラム」や「研究基盤リソース支援プログラム」における脳科学に関連した支援活動について、もう少し詳細をご紹介します。「先端モデル動物支援プラットフォーム」のうち「モデル動物作製支援」では、これまでと同様、最先端技術による遺伝子改変モデルマウスやモデルラットの作製支援を、「モデル動物解析支援」ではモデル動物の行動学的解析支援や薬理学的解析支援、光技術による操作解析支援や多機能電極・計測データ解析支援をおこないます。また、「先端バイオイメージング支援プラットフォーム」では、包括脳ネットワークでも進めてきた高品質抗体作製・機能分子局在解析支援やヒトイメージング支援を発展的に継承するとともに、最先端の光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いたさまざまなイメージング技術や画像解析技術の提供支援をおこないます。

さらに、「コホート・生体試料支援プラットフォーム」では、これまでもニーズが極めて高かったブレインバンクを扱います。このような研究支援プログラムを脳科学研究者コミュニティの皆さん方が最大限に活用し、ご自身の学術研究を発展させ、優れた研究成果を発信していただくことを切望します。