「次世代脳」プロジェクト 冬のシンポジウム 2021 開催レポート

2021年12月15日(水)-18日(土)に開催いたしました「次世代脳」第5回冬のシンポジウムでは、多大なるご協力を賜り誠にありがとうございました。650名の研究関係者の方に事前参加登録いただき、オンラインでの開催を実現することができました。

各イベントの主催者の方に執筆いただいたレポートをご紹介いたします。
ご感想および「次世代脳」についてのご提案ご提言などがございましたらContactよりどしどしお寄せください。
よろしくお願いいたします。

 

2021年度 開催レポート



学術変革領域研究(A)
[グリアデコード][臨界期生物学] 
グリアとニューロン:機能調節とその可塑性


本イベントでは、令和2年度に新たに発足した「グリアデコード」と「臨界期生物学」の2つの学術変革領域から8名の若手研究者を集め、脳機能調節と可塑性機構の理解、その過程における神経・グリア相互作用の意義に関する発表と議論が行われた。ウェビナーには240名の参加があり、質の高い発表とともに活発な議論が展開された。今後の2領域間の連携の強化と分野横断的な脳研究の一層の推進が期待できるイベントとなった。



新学術領域研究
[脳情報動態][時間生成学][超適応]
脳情報動態・時間生成学・超適応 ― 若手研究者合同シンポジウム ー


本シンポジウムは新学術領域「脳情報動態」「時間生成学」「超適応」の3領域が合同で開催し、各領域より2名ずつの新進気鋭の若手研究者研が究成果発表を行った。口頭発表では記憶や意思決定、運動や身体意識に関する講演があり、またパネルディスカッションでは、今後の脳神経科学の研究の方向性や共同研究の方向性に関する討論がなされた。常時100名以上の聴衆が参加し、活発な質疑応答と議論が行われた。



「次世代脳」実行委員会企画プログラム
─ 日本の神経科学~温故知新~
(特集:島津 浩先生、伊藤 正男先生、佐々木 和夫先生) ─


本企画は、我が国の脳神経科学の礎を築かれた先生方の研究や想い出とともに、関連分野の最新の知見を紹介するシリーズ企画である。第五回は「次世代脳」の集大成として、故・島津浩先生、故・伊藤正男先生、故・佐々木和夫先生を特集した。各巨匠について、それぞれ伊佐正先生、永雄総一先生、南部篤先生がご講演くださり、様々な資料や写真を通じ、時代を先駆けた独創的なご研究や研究にまつわるエピソードの数々、数多くの研究者を育て輩出されてきた人間性や哲学をご紹介くださった。巨匠らが兼ね備える研究への情熱、徹底的な探究心、弟子たちへの温かさを学び、学問を生み、人を束ねる指導者が備える資質を垣間見ることができた。また、我々の営む現在の神経科学研究が、いかに先人の築き上げた偉業に支えられているかを改めて知る機会となった。講演の後は演者の先生方や多数の実行委員によるパネルディスカッションも行った。三巨匠に関連づけたシステム神経科学の展望についての議論を皮切りに、我が国における今後の神経科学の在り方、国際的発信力強化のための方策、学術研究推進や次世代の研究者育成のための問題点などについて活発な議論が幅広く行われた。



新学術領域研究
[マルチスケール脳]
基礎神経科学と臨床精神が融合したブレークスルー研究の育て方


本領域では精神疾患の病態解明を目的として、第一級の基礎研究者を精神医学のフィールドへいざない、基礎神経科学と臨床精神医学が一つの場に集積、精神疾患解明のためのブレークスルー研究を目指している。そこで基礎と臨床精神の融合により生まれたブレークスルー研究を実行している高橋琢哉先生、橋本謙二先生によるセミナーを企画した。両セミナーはまさに圧巻であり、確固とした基礎研究から応用研究へと、芋虫の幼虫が見事な蝶へと飛び立つかのようなストーリーに魅せられた。その後は、基礎と臨床の共同研究の具体例に基づいた4グループにおいてディスカッションを行い、その後全体でのディスカッションを行うことで自ら考えて定着を 目指した。その活発な議論は3時間にわたり、さらにその後、深夜までオンライン懇親会が盛り上がったことは言うまでもない。


 

「次世代脳」プロジェクト 冬のシンポジウム2021

開催概要

日 時 2021年12月15日(水)- 12月18日(土)  
会 場 オンライン開催(Zoom)
参加費 無 料 (事前申込が必須です)

学術集会代表

尾藤 晴彦(東京大学)
脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 代表
主 催 次世代脳プロジェクト (project supported by 新学術領域研究 & 学術変革領域)
新学術領域研究
  脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理 [脳情報動態] 2017-2021 (領域代表 尾藤 晴彦)
  マルチスケール精神病態の構成的理解 [マルチスケール脳] 2018-2022 (領域代表 林(高木) 朗子)
  時間生成学―時を生み出すこころの仕組み [時間生成学] 2018-2022 (領域代表 北澤 茂)
  身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 [超適応] 2019-2023 (領域代表 太田 順)
学術変革領域研究(A)
  グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 [グリアデコード] 2020-2024 (領域代表 岡部 繁男)
  脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 [臨界期生物学] 2020-2024 (領域代表 狩野 方伸)
  「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 [当事者化行動科学] 2021-2025 (領域代表 笠井 清登)
  神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム [適応回路センサス] 2021-2025 (領域代表 礒村 宜和)
共 催

自然科学研究機構 生理学研究所

プログラム

12月15日(水)    program
13:00-17:35

■ グリアとニューロン:機能調節とその可塑性
[グリアデコード][臨界期生物学]

講演者
はじめに 岡部 繁男 (東京大学/グリアデコード)
「海馬新生ニューロン貪食におけるミクログリア突起のユニークな役割」 亀井 亮佑 (東京大学/グリアデコード)
「ミクログリアによるシナプス貪食機構の解明」 安藤 めぐみ (東京大学/グリアデコード)
「グリア細胞のシグナル伝達分子活性の可視化」 幸長 弘子 (京都大学/グリアデコード)
「局所脳血流の光操作技術の開発」 阿部 欣史 (慶應義塾大学/グリアデコード)
「視床体性感覚野におけるシナプス前機構の発達過程」 緑川 光春 (東京女子医科大学/臨界期生物学)
「The role of interpersonal synchrony in a dyadic interaction」 Jessica Tan (東京大学/臨界期生物学)
「中枢神経障害後のAMPA受容体発現変化と機能代償」 阿部 弘基 (横浜市立大学/臨界期生物学)
「臨界期のE-I balance下ネットワークにおける情報処理」 金丸 隆志 (工学院大学/臨界期生物学)
総合討論
12月16日(木)    program
9:00-12:35

■ 脳情報動態・時間生成学・超適応 ― 若手研究者合同シンポジウム ー
[脳情報動態][時間生成学][超適応]

講演者
はじめに 尾藤 晴彦 (東京大学/脳情報動態)
「不安と葛藤を制御する霊長類辺縁皮質-ストリオソーム回路」 雨森 賢一 (京都大学/脳情報動態)
「記憶・学習を調節する脳情報動態の解明」 野村 洋 (名古屋市立大学/脳情報動態)
「霊長類の運動を制御する脳領域間ネットワークの光計測と制御」 蝦名 鉄平 (東京大学/時間生成学)
「身体運動の時間遅れを克服する中枢神経メカニズム」 武井 智彦 (玉川大学/時間生成学)
「発達初期の自発運動から生じる感覚運動情報構造」 金沢 星慶 (東京大学/超適応)
「身体意識が運動制御に与える影響」 温 文 (東京大学/超適応)
パネルディスカッション
おわりに 北澤 茂 (大阪大学/時間生成学)
12月17日(金)   program
「次世代脳」実行委員会企画プログラム

12:30-13:15 

■学術集会代表挨拶
  尾藤 晴彦(東京大学/脳情報動態 代表)

■学術変革領域研究(A)の紹介

グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 [グリアデコード] 領域代表 岡部 繁男(東京大学)
脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 [臨界期生物学] 領域代表 狩野 方伸(東京大学)
「当事者化」人間行動科学:相互作用する個体脳と世界の法則性と物語性の理解 [当事者化行動科学] 領域代表 笠井 清登(東京大学)
神経回路センサスに基づく適応機能の構築と遷移バイオメカニズム [適応回路センサス] 領域代表 礒村 宜和(東京医科歯科大学)

13:30-17:30

■日本の神経科学~温故知新~
特集:島津 浩先生、伊藤 正男先生、佐々木 和夫先生

講演者
企画プログラム「日本の神経科学~温故知新~」について 高田 昌彦 (京都大学)
    古屋敷 智之 (神戸大学)
「流行は自分で創りなさい:島津浩先生の想い出」 伊佐 正 (京都大学)
「伊藤正男先生と小脳の脳科学」 永雄 総一 (のぞみ病院・高次脳機能研究所)
「独創的であるとは? 佐々木和夫先生から学んだこと」 南部 篤 (生理学研究所)
パネルディスカッション 進行:高田 昌彦・古屋敷 智之
 
12月18日(土)    program  ※11/9 更新
15:00-18:30

■基礎神経科学と臨床精神が融合したブレークスルー研究の育て方
[マルチスケール脳]

共催:
日本生物学的精神医学会
日本神経化学会
EGUIDEプロジェクト(精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動)

 

プログラム
本セミナーの意義 林(高木) 朗子 (理化学研究所/マルチスケール脳)
「基礎神経科学と臨床精神が融合したブレークスルー研究の理念と戦略」
  ①「AMPA受容体のtranslational medicine」 高橋 琢哉 (横浜市立大)
  ②「臨床エビデンスに基づく新規抗うつ薬の開発」 橋本 謙二 (千葉大学)
グループディスカッション
ファシリテーター
今井 猛 (九州大学)、内田 周作(京都大学)、加藤 隆弘(九州大学)、國井 泰人 (東北大学)、久島 周(名古屋大学)、高橋 阿貴(筑波大学)、中澤 敬信(東京農業大学)、疋田 貴俊(大阪大学)
全体ディスカッション
総合討論
本セミナー参加者オンライン懇親会 (19:00~ )