研究内容

マウス個体を操作する技術開発・・・光操作技術と多機能遺伝子改変技術

<オプトジェネティクス>

 チャネルロドプシンなどの光感受性電位変換色素をねらった細胞へ発現させ、そこへ光を導き、細胞の活動を操作する技術があります。オプトジェネティクスと呼ばれる技術ですが、これをマウス個体に応用するのは容易ではありません。難しい理由はいくつかありますが、多くの要因はチャネルロドプシンの発現誘導量が足りないことと言えます。実際に、最近コロンビア大学の中馬奈保先生と発表したチャネルロドプシン発現マウス(http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2011/01/post-147.html)は、予想の5%程度にしか発現を誘導できませんでした。発現が粗であったために、シナプス研究には利用できましたが、行動を変化させることは出来ません。

生理学研究所 山中章弘先生と共同で、発現量を確保する技術開発を行いました。遺伝子発現には改良型テトラサイクリン遺伝子誘導システムを用います。このシステムと既存のtTAマウスを交配させることによって、期待通りの遺伝子発現が得ることが出来ます(図はalphaCamKII-tTAマウスを用いたChR2-YFPの発現。無染色の直接蛍光)。

Fig.1

 チャネルロドプシンをグリア細胞で動かすと何が起こるのでしょうか。生理学研究の松井広、佐々木拓也先生と共同で非興奮性の細胞に電流を流したときになにが起こるのか、詳細に解析を行っています。 現在は、強迫性障害の強迫行為と線条体機能に注目して、神経回路光操作、遺伝子操作を駆使して研究を進めています。

<多機能遺伝子改変技術>

モデル動物作成には遺伝子操作が有利です。場合によっては遺伝子ノックアウトマウスが疾患の症状を呈することもありますし、遺伝子過剰発現マウスが症状を呈することもあります。それが予想できる場合もありますし、全く予想できない場合もあります。全く予想できない場合、どちらのマウスを作るべきでしょうか。

一度に両方作れたら、悩む必要はありません。また、様々な条件的遺伝子操作ができたら、モデルマウス作成にとどまらず、研究を発展できます。私は多機能遺伝子改変技術を独自に作り出し、FASTシステムを名付けました。詳細は http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2010/03/fast.html をご覧下さい。