若手研究者によるポスター発表の中から特に優れた発表に対して、若手優秀発表賞を表彰いたしました。
2019年度は74名ものご応募をいただきました。
4つの研究領域ごとに厳正なる審査を行い、以下の18名が若手優秀発表賞に選ばれました。
若手優秀発表賞という栄えある賞を頂きましたこと、誠に光栄に存じます。現在私は脳梗塞の病態を中心とした脳内炎症のメカニズムを研究しております。今回の発表では、脳梗塞後の脳内で虚血壊死に陥った脳細胞から放出され、脳内に浸潤してきた免疫細胞を活性化して無菌的な炎症を引き起こし、脳梗塞後の病態を悪化させる自己組織由来の炎症惹起因子(DAMPs: damage-associated molecular patterns)としてDJ-1というタンパク質を新たに報告いたしました。
冬のシンポジウムは今回が初の参加でしたが、分子レベルから回路、構造レベルまで脳神経科学の幅広い分野の研究者が集まっており大変良い刺激をもらいました。今後は、神経化学と免疫学を融合させた神経免疫学を「炎症」という観点から新しく切り拓くべく研究に邁進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
最後になりますが、本研究をご指導頂きました東京都医学総合研究所の正井 久雄プロジェクトリーダーならびに共同研究先であります脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田 崇リーダー、酒井 誠一郎先生、津山 淳先生ならびに、発表の機会を与えてくださった次世代脳プロジェクト関係者の先生方に厚く御礼申し上げます。
この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウムの若手優秀発表賞に選んでいただき、大変光栄に思います。今回発表した研究は、小脳のプルキンエ細胞でおこる登上線維のシナプス刈り込みは小脳全体で均一に進むのだろうか、そうでないならなぜなのか、という問いに答えようというモチベーションで進めてきました。長い時間をかけてようやく少しずつ分かってきたところですが、某先生から「もうちょっと!」と言われるほど未完成で、まだ調べたいことが山ほどある状況です。それでもこのような賞をいただけたことは大変励みになり、少しばかりの自信になります。できるだけ早く論文にまとめて発表できるように、これからもより一層精進していく所存です。
この研究は多くの方の協力のおかげでここまで進められました。特に、狩野方伸教授のご指導と、一緒に実験していただいている技術専門職員の松山恭子さんをはじめとする研究員と大学院生、スタッフの皆様に心から感謝を申し上げます。
この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウム2019において若手優秀発表賞を頂き、大変光栄に感じています。本研究は睡眠と記憶の関係をテーマに、視床下部のメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中の記憶忘却に働くことを明らかにしました。MCH神経の一部は記憶の中枢である海馬に密に投射し、レム睡眠中に活発な活動をしています。この際、海馬錐体細胞の活動を抑制し記憶の忘却をもたらしていることがマウスを用いた神経活動操作や行動実験から分かりました。シンポジウムのポスターセッションでは多くの先生と密な議論をさせて頂きました。領域研究の中心を担われている先生とポスターという近い距離でお話できたことは、他ではあまり経験できない貴重な機会だと感じます。このような機会を作ってくださった次世代脳に関係する先生方、事務局の皆様、そして本研究を指導下さった山中章弘教授に深くお礼申し上げます。今回の受賞を励みに、より一層研究に勤しむ所存です。
この度は若手優秀発表賞に私の研究を選出していただき、大変有り難うございます。本研究は、所属研究室で開発された仮想空間システムを用いて、意思決定中のゼブラフィッシュの大脳基底核出力を大規模イメージングすることを試みたものです。この実験系では、ゼブラフィッシュのコンパクトな脳の利点を生かして、大脳基底核から大脳皮質への出力を担う軸索末端の活動を、終脳の片半球全域に渡ってカルシウムイメージングすることが可能です。これにより仮想空間においてGo/No-go課題を学習させたところ、ゼブラフィッシュの大脳皮質全域から、そのときの周囲の状況に対する正・負の価値情報をコードする軸索活動が見出されました。発表当日は、これまで哺乳類の大脳基底核分野で活躍されてこられた先生方とも有意義な議論をさせていただき、今後の研究方針を検討する上で非常に勉強になりました。今回の受賞を励みに、これからも今まで以上に研究活動に勤しむ所存です。最後になりましたが、本研究について日頃よりご指導頂いている岡本仁チームリーダーをはじめ、お世話になっている方々にこの場を借りて感謝申し上げます。
この度は「次世代脳冬のシンポジウム2019」にて若手優秀発表賞に選出いただき、大変光栄に存じます。本研究では、脳の免疫細胞ミクログリアが恒常状態の脳で絶えず繰り返している突起伸展・退縮運動の生理的意義を検討しました。今回は運動学習の実験系を用い、一見ランダムな突起の動きが、実は状況に応じて目指すシナプスを変えていること、そしてその接触がスパインの形成や除去を引き起こすことを明らかにしました。
あらゆる細胞の働きざまを生きた脳の中で覗くことのできる2光子イメージングが大好きです。わたしたちの人生の大半を占める恒常状態でこそ細胞は忙しく働いていて、注意深く眺めるとそのとてもよくできた仕組みが浮かび上がってきます。緊張しながら臨んだ今回の発表では様々な分野の先生方にご意見をいただき、思いがけない質問も頂戴して、またさらに疑問点や検証してみたいことが次々と出てきた貴重な一日となりました。この経験と受賞の嬉しさを糧に、今後も精進して参ります。最後になりましたが指導教官の和氣教授、そして様々な形でお支えくださっている先生方やみなさまに、この場をお借りし心より感謝申し上げます。
この度は若手優秀発表賞に選出して頂きまして、大変光栄に存じます。また、本研究を遂行する上にあたりご指導頂きました東京大学の松崎政紀教授、生理学研究所の鍋倉淳一教授、名古屋大学の和氣弘明教授、そして研究室の皆様方にこの場を借りて深く御礼申し上げます。
近年、学習には関連する脳内の多領域間での効率的な情報処理が必要不可欠とされ、領域間をつなぐ髄鞘化された軸索である白質の機能が注目されています。しかしながらこれまで、髄鞘の機能障害が神経回路活動にどのような変化をもたらすのかは不明でした。本研究では、髄鞘の機能障害で運動学習が障害される時の神経回路活動基盤およびその発生メカニズムを同定し、さらに異常な神経活動を神経回路において補正することが、学習障害の改善に有効であることを明らかにしました。アルツハイマー型認知症では病初期から白質機能が障害されるため、今後、髄鞘機能の補正を神経回路レベルで行うことが治療法の一つとなるのではと期待しています。この受賞を励みとし、日々の臨床で実感する病態・治療法に関する疑問点を解決するために、これまで以上に神経変性疾患研究を精力的に進めていきたいと考えております。
この度は、「次世代脳プロジェクト」冬のシンポジウム2019において若手優秀発 表賞に選出して頂きましたこと、大変光栄に存じます。ご指導頂いている林(高 木)朗子先生や、研究室のメンバーを始め、お世話になった多くの方々にこの場 を借りてお礼申し上げます。本研究では、統合失調症モデル動物脳内で発見した 巨大な樹状突起スパインに着目し、スパインの変化が病態において本当に意味が あるのか?行動や発火に関係するのか?という問いをとことん突き詰めようと取 り組んできました。実験系の立ち上げに苦労したり、行動解析でテストした項目 の多くで変化が見られなかったりと、どうなるのか行く末を案じた日々もありま した。それだけに、作業記憶のスコア低下やスパインとの相関を見出した時の興 奮は忘れられません。現在は面白い知見が得られつつあり、精神疾患病態のメカ ニズムに迫るスタートラインにやっと立てたような気がしています。今回の受賞 を励みにして、精神疾患の病態解明という目標に向けて今後も精進いたします。
発表日時・場所
演題の登録について(10月23日午前10時をもって受け付けを締め切りました)
その他
次世代脳プロジェクトでは、若手研究者によるポスター発表の中から特に優れた発表を選考し、若手優秀発表賞を授与します。
応募資格
選考方法について
【採点方法】
以下の3項目について(学生枠は2項目)各々1~4の4段階の評価を各審査員が行います。
researchmapを参考にする場合があります。researchmapのアカウントをお持ちの方は11月末までに、最新のデータに更新しておいてください。
【採点法】
一般枠=(1)+(2)+(3) (12点満点)、学生枠=(1)+(2)(8点満点)で計算し、各領域の全審査員の平均を総合評価とする。
選考結果について
授与式
征矢 晋吾(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)
Deciphering a novel neural circuit in the central amygdala implicated in regulation of social behavior
この度、「次世代脳プロジェクト〜冬のシンポジウム」にて表記の演題で優秀発表賞を頂きまして大変光栄に思っております。博士課程からご指導いただいている櫻井先生を始め、共同研究者の方々にこの場を借りて深く感謝申し上げます。
本研究は、ニューロペプチドB/Wの受容体であるNPBWR1の生理的役割を解明するため、NPBWR1が強く発現する扁桃体のニューロン群の入出力系を描出し、特に脳幹に投射するNPBWR1発現ニューロンが社会行動および情動応答の制御に関わることを報告させていただきました。今後は、NPBWR1が制御する神経基盤が社会的接触前後における個体間距離の調節に果たす役割を解明すべく、実験動物だけでなくヒトの研究も視野に入れた方向性を模索していきたいと思っております。まだ形にこそなってはいないものの、このような賞をいただき、これまでの知見から導いた仮説が一定の評価を得られたことはとても嬉しく、今後論文として投稿する上での自信となりました。
最後になりましたが、このような素晴らしい発表の機会をご用意して下さった大隅先生、選考して下さった先生方に厚く御礼申し上げます。